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特定技能「農業」とは?概要や採用の流れについて解説

国内の農業に対する人手不足は年々深刻化しているため、高齢化や後継者問題にお悩みの農業従事者の方は多いでしょう。
政府は解決策として、特定技能制度をスタートさせましたが、具体的な概要まではご存じない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 
本記事では、農業における特定技能外国人の概要から採用の流れまで、詳しく解説します。
特定技能外国人を農業分野で採用したいとお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。

特定技能・外国人採用に関するお役立ち資料はこちら

目次[非表示]

  1. 1.特定技能「農業」が創設された背景
  2. 2.特定技能「農業」の概要
  3. 3.特定技能「農業」において任せられる業種・業務
  4. 4.受け入れ企業の要件
    1. 4.1.要件① 農業特定技能協議会への加入
    2. 4.2.要件② 外国人労働者の労務管理・支援
  5. 5.特定技能1号「農業」の取得に必要な条件
    1. 5.1.条件① 特定技能評価試験と日本語試験に合格する
    2. 5.2.条件② 農業分野の「技能実習2号」を修了する
  6. 6.特定技能「農業」の試験の概要
  7. 7.特定技能「農業」を採用する流れ
  8. 8.特定技能「農業」の採用にあたっての諸費用
    1. 8.1.費用① 紹介手数料と送出費
    2. 8.2.費用② 賃金
    3. 8.3.費用③ ビザ申請費や支援費など
  9. 9.特定技能「農業」の外国人を受け入れるためには、さまざまな採用フローや諸費用が必要

特定技能「農業」が創設された背景

特定技能は、日本の産業分野における深刻な人手不足を解決すべく、2019年に新設された外国人の受け入れ制度です。
特定技能には、国内の人材確保に課題を抱える12分野の産業が含まれており、農業もそのうちの一つです。
 
農林水産省によると、国内の農業従事者の数は減少の一途をたどっており、後継者不足による高齢化も進んでいることがわかっています。
現に、2015年に175万7千人いた農業従事者は、5年後の2020年には136万3千人と、22%も減少しました。
さらに、2015年に67.1歳だった平均年齢は、2020年には67.9歳に上昇していることから、農業分野における高齢化が進んでいることは明らかです。
 
これらの問題を、知識と技術を持った外国人の労働力で解決するために、最長5年間受け入れ可能な特定技能「農業」という在留資格が新設されました。

参照元:農林水産省「(1)基幹的農業従事者」

特定技能「農業」の概要

日本の深刻な問題である農業従事者の減少を補うために導入された、特定技能「農業」とは、具体的にどのような在留資格なのでしょうか。

以下の表で、特定技能「農業」の概要をわかりやすく解説します。
 
【特定技能「農業」の概要】

雇用形態

正社員(フルタイム)の直接雇用 
農業分野では、派遣雇用も可

報酬

平均206,096円(日本人正社員と同等)

受け入れ人数

1社あたりの受け入れ人数の制限なし(農業分野の場合)

在留期間

通算5年(在留期間中の帰国可)、入国後10年目まで

 
特定技能「農業」は、季節や地域によって期間や仕事内容が異なるため、直接雇用だけでなく、派遣雇用も可能です。
たとえば、農業分野は閑散期と繁忙期がはっきりしていることが多く、繁忙期に派遣雇用で特定技能外国人を雇用するといった柔軟性があります。

また、特定技能「農業」では繁忙期の半年間は働き、閑散期の半年間は一時帰国が可能なため、通算10年まで日本に滞在できるのも特徴です。
 
参照元:出入国在留管理庁「特定技能外国人に対する賃金の支払い状況」
参照元:農林水産省「特定技能外国人の受け入れが始まりました」

特定技能「農業」において任せられる業種・業務


特定技能「農業」では、「耕種農業全般」「畜産農業全般」および、これら2つに関連する業務に就くことができます。
 
具体的に、耕種農業全般は、農産物の集出荷・選別等や栽培管理、畜産農業全般は、畜産物の集出荷・選別等や飼養管理がメインの業務です。
関連業務には、農畜産物の製造や加工、運搬や販売、さらには冬場の除雪作業も含まれます。
似たような制度に「技能実習制度」がありますが、こちらは、開発途上国への技術の移転と国際貢献が目的のため、スキルを問わず、単純作業しか従事できません。
特定技能「農業」であれば、技能実習では不可能であった稲作や肉牛、ブロイラーなどの業務も可能です。
 
ただし、関連業務をメインとする雇用ができない点、耕種農業全般と畜産農業全般は合わせて従事できない点には注意しなければなりません。
 
万が一、認められていない業務を行わせていると判明した場合、不法就労となり、外国人労働者だけでなく企業側も罰せられてしまいます。
企業側は、不法就労助長罪として、最大懲役3年、最大300万円の罰金が科される可能性があるため、従事させる業務には気をつけましょう。

受け入れ企業の要件

特定技能「農業」の在留資格を持った外国人の受け入れにあたって、企業側に対する特別な要件は特にありません。
入管法や労働法に違反していないといった要件を満たしていれば、特定技能外国人を受け入れることができます。
 
ただし、受け入れたあとの要件がいくつかあるので、次項で確認していきましょう。

要件① 農業特定技能協議会への加入

企業側は、初めて特定技能外国人を受け入れる場合、受け入れまでに「農業特定技能競技会」へ必ず加入しなければなりません。
 
農業特定技能競技会は、外国人を受け入れるにあたって、制度を適切に運用するために作られたものです。
加入した構成員同士が連携し、特定技能外国人の採用や受け入れに関する有益な情報を共有し、協議します。
具体的な協議内容は、受け入れた外国人の状況や課題、不正行為に対する再発防止策、外国人材に対する適正な受け入れ、または保護についてです。 
協議会に加入したあとは、農林水産省が定期的に行う調査や指導に協力する必要があります。
 
協議会への加入は、農林水産省のWebサイトから手続きすることができますが、個人と法人で申請フォームが異なるため注意が必要です。
一度加入すれば、会社が位置する所在地の地域協議会の構成員として登録されるので、追加の加入手続きは不要です。
なお、加入後にメールで送付される「加入通知書」は、2回目以降の特定技能外国人の受け入れ時に必要になるので大切に保管しておきましょう。

要件② 外国人労働者の労務管理・支援

特定技能外国人を雇用するには、適切に外国人を支援していくことが必要です。
支援は、自社で支援するのか、登録支援機関に委託するのかを選ぶことができます。
しかし、特定技能外国人に対する支援内容は多岐にわたるため、日常業務と並行しながら支援するのは労力がともないます。
 
受け入れ前から登録支援機関などの人材紹介サービスを利用すれば、複雑なビザ申請や手続きをすべて委託でき、安心して外国人を受け入れることができるのでおすすめです。

特定技能1号「農業」の取得に必要な条件

特定技能制度で、日本の農業分野に従事するためには、特定技能1号「農業」という在留資格を取得する必要があります。
在留資格は、「特定技能1号」「特定技能2号」とありますが、農業分野において外国人の受け入れが認められているのは、2024年1月現在、特定技能1号のみです。
 
取得するパターンは2つあり、農業分野の知識や技術を問う試験と日本語に関する試験の両方に合格する方法と、「技能実習2号」を修了後に在留資格を移行する方法です。
特定技能1号「農業」を取得するためには、これら2つのうち、どちらか一方をクリアしなければなりません。
 
ここからは、2つの条件について掘り下げていきます。

条件① 特定技能評価試験と日本語試験に合格する

特定技能外国人として就労するには、農業における特定技能評価試験(技能測定試験)と日本語に関する試験の2つに合格する必要があります。
 
特定技能評価試験には、実技試験と学科試験が含まれています。
詳しい概要は、後述しますのでそちらをご覧ください。
 
日本語試験とは「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験」のことで、特定技能外国人になるにはどちらかに合格することが必須条件です。
 
以下の表に詳しい試験概要をまとめました。
 
【国際交流基金日本語基礎テストと日本語能力試験の概要】


国際交流基金日本語基礎
テスト(JFT-Basic)

日本語能力試験

合格ライン

220点/250点(A2レベル)

90点/180点(N4レベル以上)

試験場所

日本やインド、モンゴル、一部の東南アジア、中国

日本やインド、モンゴル、東南アジア、韓国、中国など

試験日

ほぼ毎日、各地で行われているため、国際交流基金HPをご確認ください。
https://www.jpf.go.jp/jft-basic/

年2回
(7月、12月の第一日曜日)

実施方法

コンピューター・ベースト・テスティング(CBT)方式

マークシート方式

受験可能
言語

英語、中国語、モンゴル語、タイ語、インドネシア語、ベトナム語、ミャンマー語など

日本語のみ

国際交流基金日本語基礎テストとは、就労のために来日する外国人に向けたテストで、日常でコミュニケーションをとるために必要な日本語の能力を測定します。
日本国内では、ほぼ毎日試験が開催されており、海外でも受験することができます。
特に、来日する特定技能外国人が多い、フィリピンやインドでは、1か月に1回のペースで開催されているようです。
 
日本語能力試験は、外国人向けの日本語能力そのものを図る試験で、レベルに応じてN1~N5までランクが分けられています。
「ゆっくり話してもらえれば日常会話をほぼ理解できる」レベルのN4以上が合格ラインです。
 
2つの試験を比べると、日本国内だけでなく海外でも受験可能な点は同じですが、開催頻度やテストの実施形式、受験可能な言語には大きな違いがあります。

条件② 農業分野の「技能実習2号」を修了する

特定技能1号「農業」を取得するもう1つの方法は、農業分野の「技能実習2号」を修了し、そこから移行することです。
 
技能実習制度とは、開発途上国出身の外国人が、日本の高い技術を習得し、帰国後に自国の発展に役立ててもらおうと1993年に設立された制度です。
技能実習制度には、1号と2号に分けられます。
1号は、入国後1年目に技能を習得するための活動が主となり、2号はそれをふまえて、2年目以降(最長2年)にさらなる技能の習熟を図る活動をするための在留資格です。
そのため、技能実習2号は、1号から移行の際に職種や作業内容を変更することができませんが、最大で計3年間、日本に滞在することができます。

これにより、3年間の「技能実習2号」をすでに修了している方は、ある程度の知識や技術、日本語能力があるとされ、前項の技能測定試験と日本語能力試験の2つは免除されます。
そのため、受験せずに特定技能1号「農業」に移行することが可能です。

特定技能「農業」の試験の概要

特定技能「農業」を取得するために必要な資格の一つ、農業の「技能測定試験」について以下の表で詳しく説明します。
 
【農業技能測定試験の概要】

受験資格

17歳以上(インドネシアでは18歳以上)

実施方法

コンピューター・ベースト・テスティング(CBT)方式
または、ペーパーテスト

試験言語

日本語または試験実施国の言語

試験時間

60分

試験問題数

70問ほど

試験科目

【耕種農業全般】
 
①学科

  • 耕種農業一般
  • 安全衛生
  • 栽培作物の品種・特徴
  • 栽培環境
  • 栽培方法・管理
  • 病害虫・雑草防除
  • 収穫・調整・貯蔵・出荷など

②実技(写真やイラスト)

  •  土壌の観察
  • 肥料・農薬の取り扱い
  • 種子の取り扱い
  • 環境管理、資材・装置・機械の取り扱い
  • 栽培に関する作業
  • 安全衛生など

③日本語

  • 日本語で指示された農作業の内容の聴き取り

【畜産農業全般】
 
①学科

  • 畜産農業一般
  • 安全衛生
  • 品種
  • 繁殖・生理
  • 飼養管理など


②実技(写真やイラスト)

  • 個体の取り扱い
  • 個体の観察
  • 飼養管理・器具の取り扱い
  • 生産物の取り扱い
  • 安全衛生など

③日本語

  • 日本語で指示された農作業の内容の聴き取り

受験料

日本:8,000円(税込み)
海外:国によって異なるため、一般社団法人全国農業会議所のHPをご確認ください。
https://asat-nca.jp/asat1/exam

試験日程

日本全国各地で毎日行われています。
日本だけでなく海外で受験する場合も、一般社団法人全国農業会議所のHPをご確認ください。
https://www.prometric-jp.com/ssw/schedule/

本人確認書類

パスポートまたは在留カード

このように、試験科目に大きな違いがあります。
海外で受験する場合、受験料や試験日程は国によって異なるため、必ず確認してください。
また、試験当日には、本人確認書類が必要になるので、忘れずに持参しましょう。

特定技能「農業」を採用する流れ

ここからは、特定技能「農業」の外国人を採用する流れを、日本国内在留外国人と海外在住外国人に分けて、表を用いて説明します。
 
【特定技能「農業」の外国人を採用する流れ】


日本国内に在留している外国人

海外から来日する外国人

ステップ①

  • 農業の技能測定試験と日本語能力試験に合格または、「技能実習2号」を修了
  • 農業の技能測定試験と日本語能力試験に合格または、「技能実習2号」を修了

  • 「技能実習2号」を修了後に帰国した場合でも可

ステップ②

特定技能外国人と雇用契約を締結

  • 契約締結後に「受け入れ期間等による事前ガイダンス」「健康診断」を実施

ステップ③

特定技能外国人の支援計画を策定

  1. 事前ガイダンス
  2. 出入国する際の送迎
  3. 住居確保・生活に必要な契約
  4. 生活オリエンテーション
  5. 公的手続き等への同行
  6. 日本語学習機会の提供
  7. 相談や苦情の対応
  8. 日本人との交流支援
  9. 転職支援(雇用する側が人員整理をする場合)
  10. 定期的な面談や行政への通報

ステップ④

在留資格変更許可申請を地方出入国在留管理局へ実施


※添付資料

  • 受け入れ機関の概要
  • 特定技能雇用契約書の写し
  • 1号特定技能外国人支援契約
  • 日本語能力に関する資料
  • 技能を証明する資料

在留資格認定証明書交付申請を地方出入国在留管理局へ実施
 
※添付資料

  • 受け入れ機関の概要
  • 特定技能雇用契約書の写し
  • 1号特定技能外国人支援契約
  • 日本語能力に関する資料
  • 技能を証明する資料

ステップ⑤

「特定技能1号」に在留資格を変更

在留資格認定証明書の受領
(受け入れ機関から本人への送付)

ステップ⑥

就労開始

在外公館にビザ申請

ステップ⑦

ビザを受領

ステップ⑧

入国後に就労開始

海外在住の外国人は採用にかかる手順が多いことがわかります。
採用面接から入社までは、少なくとも4~6か月はかかるため早めの準備が大切です。

なお、必要な資格の受験より先に、特定技能雇用契約を結ぶことは可能ですが、試験に合格していない限り、外国人の受け入れは認められないので注意しましょう。
 
登録支援機関などの人材紹介サービスと契約すれば、採用までの多くのステップをすべて委託することができます。

特定技能「農業」の採用にあたっての諸費用

特定技能「農業」の外国人の採用には、大きく分けて下記の3つの費用がかかります。
 
【特定技能外国人採用にあたっての諸費用】

  • 登録指定機関などに委託する場合の人材紹介料、送出機関に支払う費用
  • 特定技能外国人に支払う賃金
  • 特定技能外国人のビザ申請や支援にかかる費用など

これらの費用は、外国人が日本国内、国外のどちらにいるか、受け入れ体制を自社で行うのか、外部に委託するのかの2点でトータルの費用が変わってきます。

費用を抑えられる一番の方法は、「外国人が日本国内に在留+自社で支援」です。
ただし、法令違反のリスクが高まる可能性もあり、自社でノウハウがない場合は外部の登録支援機関に委託したほうがよいでしょう。
 
次項で、項目ごとにどれくらいの費用が何にかかるのか説明していきます。

費用① 紹介手数料と送出費

登録指定期間などの人材紹介サービスから、特定技能外国人の紹介を受けた場合、紹介手数料が必要です。
費用は、一人あたり30万~60万円を見積もっておきましょう。
 
さらに、海外に在住している特定技能外国人を採用する場合、送出費がかかります。
この送出費は、外国人との仲介を担う機関へ支払われます。
技能実習2号を修了していない人材の場合は、試験を受験する費用も企業側が負担しなければなりません。
そのため、こちらの費用は、一人あたり10万~60万円と多めに見積もっておくとよいでしょう。
 
なお、自社で採用した技能実習生が技能実習2号を修了し、特定技能へ移行する場合は、費用はかかりません。

費用② 賃金

受け入れた特定技能外国人には、日本人正社員と同等の賃金を支払う義務があります。
外国人だからという理由で賞与や各種手当も付与しないと、差別的扱いにより特定技能外国人の受け入れ申請が不可になるかもしれません。
 
また、受け入れ先によっては、生活支援の一環として、「家賃補助」を支給しているところもあるようです。

費用③ ビザ申請費や支援費など

ビザ申請や支援を自社で行うと人件費が、外部の登録機関に委託すると委託料がかかります。
 
特定技能の申請を外部の登録支援機関に委託する場合、支援計画の作成から申請取り次ぎまでの費用が、一人あたり15万~25万円程度必要です。
 
ほかにも、就労前の健康診断は受け入れ先が負担しなければなりません。
費用は各自治体によって異なりますが、だいたい1万円を目安に考えておくとよいでしょう。

関連記事:特定技能外国人を採用する際の流れとかかる費用を解説

特定技能「農業」の外国人を受け入れるためには、さまざまな採用フローや諸費用が必要

いかがでしたでしょうか。
 
日本の農業分野における人手不足解消が目的の特定技能「農業」を有する外国人は、耕種農業全般や畜産農業全般に従事することができます。
しかし、受け入れには、さまざまな採用手順を踏んで、それにかかる費用を企業側が支払う必要があることを念頭に置いておきましょう。
 
私たちスタッフ満足は、これまで1,000名以上の採用実績がある、外国人の派遣人材紹介会社です。
特定技能外国人を受け入れる際の費用を徹底的に抑え、採用から定着まで現場目線のきめ細やかな対応をお約束いたします。
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