技能実習生とは?制度利用前に確認しておきたい問題や受け入れ方法
日本ではたくさんの外国人が働いており、その中には技能実習生も多く含まれています。
外国人を雇用したいと考えている企業の担当者さまの中には、技能実習制度が気になっている方もいるのではないでしょうか。
そこで、本記事では技能実習生を招きたいと考えている方のため、制度の概要や問題点、就労できる業種などを解説します。
この記事を読むことによって技能実習に関する理解が深まり、確認しておかなければならないポイントが分かるようになるのでぜひご覧ください。
目次[非表示]
- 1.技能実習生について
- 1.1.特定技能と技能実習の違い
- 2.技能実習制度について
- 2.1.主な目的
- 3.技能実習生を取り巻く問題
- 4.技能実習生の種類
- 5.技能実習生が就労できる業種・仕事
- 6.技能実習の実施機関に求められる禁止事項
- 7.技能実習生を受け入れる企業の指導員の要件
- 8.技能実習生の受け入れ人数と期間の制限
- 9.技能実習生の受け入れ方法
- 10.技能実習生の受け入れの流れ
- 11.技能実習生を受け入れる企業の体制づくり
- 12.今後の技能実習制度について
- 13.新制度もよく確認が必要
技能実習生について
技能実習生とは、日本で技能実習を受ける者のことをいいます。
在留資格「技能実習」に該当し、日本の企業と雇用契約を結んだ上で来日するのが特徴です。
日本政府が定めた外国人技能実習制度に応募し、採用された外国人が日本に招かれる形となります。
この制度を利用する外国人と受け入れ先となる企業は、国が定めた厳格なルールを守らなければなりません。
特定技能と技能実習の違い
外国人を雇用しようと考えた際、技能実習のほかに、在留資格「特定技能」が気になっている方もいるでしょう。
どちらも在留資格ではありますが、異なる制度です。
以下のような違いがあります。
特定技能 |
技能実習 |
|
制度の目的 |
人手不足が続く産業における労働力の確保 |
技能移転による開発途上国への国際協力 |
職種 |
1号:12分野、2号:11分野 |
90職種 |
単純労働 |
付随的になら認められる |
不可 |
転職 |
可能 |
不可 |
受入れ方法 |
制限なし |
海外の送り出し機関と提携している監理団体からの紹介 |
受入れ人数枠 |
なし(介護、建設分野を除く以外) |
あり |
在留期間 |
1号:通算5年まで、2号:上限なし |
1号:1年以内、2号:3年以内、3号:2年以内(合計で最長5年) |
家族帯同 |
1号:不可、2号:要件を満たせば可 |
不可 |
このやり、さまざまな部分で異なるので、どちらで雇用するかよく検討が必要です。
関連記事:特定技能と技能実習の違いとおさえておくべきメリット・デメリット
技能実習制度について
技能実習制度は、1993年に創設されました。
1号~3号まであります。
あらかじめ、実習の実施者は技能実習計画を作成し、それに沿った形で実習を行って行かなければなりません。
技能実習生は、日本で働きながらさまざまな技術や知識を身につけていくことになります。
日本とは労働者としての雇用契約を結び、講習や実習に参加する形です。
労働基準法や最低賃金法といった法律も日本人と同様に適用されます。
主な目的
技能実習の主な目的は、日本の技術や知識といったものを開発発展途上国などへ移転し、経済発展を図るためです。
つまり、日本で学びたい外国人を招き、そこで得た技術や知識を国に持ち帰ってもらうための制度となっています。
これにより、その国を発展させる国際貢献が目的です。
そのため、技能実習制度の対象となるのは、発展途上国となっています。
例えば、アメリカのような先進国からは技能実習生の受け入れができません。
また、日本で得た技術や知識を国に持ち帰ることを前提とした在留資格であるため、在留期間は5年が限度であり、これ以上延長はできません。
帰国を前提としていることから、家族帯同は不可です。
ただし、技能実習から特定技能に切り替える場合は5年を超える滞在も認められます。
技能実習生を取り巻く問題
技能実習制度は、何かと問題の多い制度と言われることがあります。
問題の一つが、外国人技能実習生の失踪問題です。
技能実習は受け入れ先となる企業で技術や知識を学び、それを国に持ち帰ることを目的としているため、転職が認められていません。
そのため、受け入れ先企業に問題があっても気軽に職場を変えることはできず、さらに環境の良い職場を求めて失踪してしまうケースがあります。
その背景には、低賃金の問題が大きく関係しているといえるでしょう。
中には、企業の誇大広告を信じて日本にきたものの、聞いていたほどの給料がもらえず、大変な思いをしている方もいます。
国に技術を持ち帰るための支援をするための制度なのですが「低賃金労働者」として採用する企業も少なくありません。
制度の目的と実態が大きくかけ離れているのは大きな問題といえるでしょう。
また、送り出し機関にも問題があります。
送り出し機関とは、外国人を日本に送り出す役割を持っている機関のことです。
外国人が技能実習生として日本に来るためには、送り出し機関に対して高額な手数料を支払わなければなりません。
それから、本来は認められていない保証金を請求するケースもあります。
これにより、日本に来る前の段階で技能実習生の金銭的な負担が大きくなっていることがあるのも問題といえるでしょう。
技能実習生の種類
技能実習生は1号~3号まであり、それぞれ以下のような特徴があります。
1号 |
2号 |
3号 |
|
時期 |
入国1年目 |
入国2~3年目 |
入国4~5年目 |
段階 |
技能等を修得 |
技能等に習熟 |
技能等に熟達 |
在留資格 |
企業単独型:技能実習第1号イ |
企業単独型:技能実習第2号イ |
企業単独型:技能実習第3号イ |
企業単独型、団体監理型について詳しくは後述します。
1号から2号に移行する際には、所定の技能評価試験を受けて合格しなければなりません。
1号の在留期間が1年、2号が2年なので、合算すると3年となります。
また、2号から3号に移行するためには、技能評価試験に合格し、企業も優良な実習実施者であると認定されなければなりません。
3号の在留期間は2年なので、1号~3号まで合計すると最長5年日本に在留可能な制度です。
技能実習生が就労できる業種・仕事
技能実習生が就労できる業種・仕事は法律によって定められています。
以下の仕事・業種が可能です。
【できる仕事・業種】
|
仕事内容が変更されたり、追加されたりすることもあるので、利用しようと考えたタイミングで再度確認すると良いでしょう。
技能実習の実施機関に求められる禁止事項
技能実習生を受け入れる実習の実施機関は、国によって定められたルールを守って実習を行っていかなければなりません。
以下は禁止事項として定められているので、注意が必要です。
【禁止事項】
|
善意で行ったことが禁止事項に触れてしまうこともあるので、注意が必要です。
例えば「渡した給与をすべて使ってしまうかもしれないから、本人のために貯金してあげよう」と考えることもあるでしょう。
ですが、これは強制貯金の扱いとなります。
それから「本人が持っていると、なくしてしまうかもしれない」といった理由で在留カードやパスポートを預からないように注意しましょう。
また、外出を制限するなど、私生活に対して自由を制限してしまうのも禁止されています。
技能実習の実施機関が上記の禁止事項に該当する行為を行った場合、当該外国人は機構に対して報告が可能です。
報告により、実施機関が不正を行っていると認められた場合は6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となります。
また、技能実習生の受け入れに関する不正行為として、以下が定められています。
【不正行為】
|
これらに該当する場合は懲役や罰金のほか、受け入れ停止処分が下されてしまう可能性があります。
十分注意しましょう。
技能実習生を受け入れる企業の指導員の要件
技能実習生を受け入れるためには、いくつか要件が定められています。
そのうちの一つが、指導員の配置です。
技能実習指導員は、実習の指導を行うだけではなく、技能検定に合格できるように寄り添いながらサポートしていく大切な役割を持ちます。
技能実習指導員になる方は、以下の2つの要件を満たしていなければなりません。
【技能実習指導員の要件】
|
これらは最低限満たしていなければならない要件なので、あとは自社の中から適切と思われる人材を選択しましょう。
役職者である必要はありません。
技能実習生と同じ現場で働いていて、現場の状況をよくわかっている人を選ぶと良いでしょう。
なお「当該業務で5年以上」とは、その職種での通算の経験であるため、今の会社ではまだ1年しか働いていないけれど前職が同様であり、長年の経験があるような場合は条件を満たしていることになります。
なお、技能実習指導員の他にも、技能実習生と関わる職員の監督、実習の進捗状況の管理などを行う「技能実習責任者」、実習生の日本での生活指導を行う「生活指導員」も必要です。
それぞれ、要件として以下が定められています。
【技能実習責任者の要件】
|
【生活指導員の要件】
|
技能実習指導員は、技能実習責任者・生活指導員としての業務を兼任することも可能です。
ただ、すべて1人が行うとなるとその人の負担が大きくなってしまうため、注意しましょう。
また、1人にすべて任せてしまった場合、その人が何らかの理由で仕事を休んだ時、現場に技能実習指導員がいない状態になってしまいます。
このような状況を防ぐためには、複数の技能実習指導員を選択しておきましょう。
技能実習生の受け入れ人数と期間の制限
技能実習生は受け入れ人数と期間が定められています。
受け入れを検討している場合は、よく確認が必要です。
受け入れ人数
技能実習生の受け入れ可能基本人数枠は、以下の通りとなります。
実習実施者の常勤の職員の総数 |
技能実習生の人数 |
301人以上 |
常勤職員総数の20分の1 |
201人~300人 |
15人 |
101人~200人 |
10人 |
51人~100人 |
6人 |
41人~50人 |
5人 |
31人~40人 |
4人 |
30人以下 |
3人 |
常勤職員数には、技能実習生(1号、2号、3号)は含まれません。
また、団体監理型と企業単独型(詳しくは後述します)のどちらであるかによっても人数枠が異なります。
■団体監理型
通常の者 |
優良基準適合者 |
|||
第1号 |
第2号 |
第1号 |
第2号 |
第3号 |
基本人数枠 |
基本人数枠の2倍 |
基本人数枠の2倍 |
基本人数枠の4倍 |
基本人数枠の6倍 |
■企業単独型
通常の者 |
優良基準適合者
|
||||
第1号 |
第2号 |
第1号 |
第1号 |
第3号 |
|
出入国在留管理庁長官と厚生労働大臣により継続的で安定的な実習を行わせる体制が認められた企業 |
基本人数枠 |
基本人数枠の2倍 |
基本人数枠の2倍 |
基本人数枠の4倍 |
基本人数枠の6倍 |
上記以外の企業 |
常勤職員総数の20分の1 |
常勤職員総数の10分の1 |
常勤職員総数の10分の1 |
常勤職員総数の5分の1 |
常勤職員総数の10分の3 |
いずれの場合も1号技能実習生は常勤職員の総数、2号技能実習生は常勤職員数の総数の2倍、3号技能実習生は常勤職員数の総数の3倍を超えてはいけません。
受け入れ期間
受け入れ期間は1号が1年、2号が2年、3号が2年の合計最長5年です。
つまり、5年の滞在を目指す場合は、技能実習1号から2号、3号と移行していかなければなりません。
そのために当該外国人は試験を受け、受け入れ先となる企業も定められている条件を満たす必要があります。
また、入国1年目の方が該当する技能実習1号で滞在できる期間は1年間なのですが、入国後は1カ月間の入国後講習を受けなければなりません。
そのため、技能実習が受けられるのは残りの約11カ月間となります。
2号に移行した後は、1年ごとの更新を行い、最長で2年間の滞在が可能です。
注意点として、1号は幅広い職種・作業での受け入れが認められていますが、2号と3号の移行対象職種は国が定める職種・作業のみとなっています。
事前に自社の職種が対象となるか確認しておきましょう。
3号についても2号と同様に1年ごとの更新を行うことで最長2年間の滞在が可能です。
2号と比較すると移行できる職種がさらに限られるので、こちらもよく確認しておきましょう。
なお、3号受け入れのためには、受け入れ先となる企業と監理団体の両方が優良認定を受けている必要があります。
技能実習生の受け入れ方法
技能実習生の受け入れ方法は、企業単独型と団体監理型のどちらに該当するのかによって異なります。
それぞれ解説します。
企業単独型
企業単独型とは、大企業向けの受け入れ方式です。
海外の現地法人のほか、合弁企業、海外取引先企業などで働く職員を直接研修生として受け入れる方法です。
企業単独型は監理団体を介さないことからコストが削減できますが、各種手続きなどは受け入れ企業で行わなければなりません。
「日本の公私の機関と引き続き1年以上の国際取引の実績または過去1年間に10億円以上の国際取引の実績を有する」など受け入れの条件が厳しく設定されています。
団体監理型
中小企業に向いている受け入れ方式です。
事業協同組合、商工会議所が技能実習生を受け入れそこから傘下の企業に対して派遣する形で、ほとんどの企業はこちらを選択しています。
監理団体に加盟している企業が受け入れ企業となり、監理団体から指導・監督を受けて技能実習生を受け入れる形です。
監理団体とは、技能実習生を受け入れたい企業から依頼を受け、技能実習生の募集や経理に関する調整・手続きなどを行う組織です。
法務大臣、厚生労働大臣によって認められた非営利の団体が該当します。
技能実習生の受け入れの流れ
技能実習生を受け入れる際の流れを確認しておきましょう。
全体の流れは、以下の通りです。
【団体監理型の流れ】
|
技能実習計画は、監理団体の指導を受けながら作成する形となります。
なお、企業単独型を選択する場合は、送出機関と監理団体が行う作業や手続きなども自社で行わなければなりません。
技能実習生を受け入れる企業の体制づくり
技能実習生を受け入れる際には、適切な体制づくりを行わなければなりません。
これは、主に技能実習生に対して技能などを教えるための体制のことです。
技能などを習得するのに必要な生産機械や設備を整えるだけではなく、講習をするための実施場所などもしっかり整えておきましょう。
また、能実習責任者・技能実習指導員・生活指導員を配置することも技能実習のための体制づくりとして要件に含まれています。
今後の技能実習制度について
技能実習制度について紹介していますが、今後は廃止が決定しています。
それに代わる制度として創設される予定なのが「育成就労制度」です。
育成就労制度と技能実習には、以下のような違いがあります。
技能実習 |
育成就労 |
|
目的 |
他国への技術移転による国際貢献 |
人材確保と人材育成 |
職種 |
90職種・165作業 |
特定技能と同じ分野を予定 |
転籍 |
基本的に不可 |
所定の条件を満たす場合は可 |
受入れ人数枠 |
企業の常勤職員により異なる |
分野ごとに上限を決める可能性がある |
支援・保護体 |
外国人技能実習機構による支援と保護 |
新制度で改組される外国人技能実習機構 |
まず、制度の目的からして違います。
現在の技能実習は労働のための資格ではなく、目的はあくまで技術移転による国際貢献です。
ですが、育成就労制度では人材の確保や育成を目的とした制度になっています。
技能実習制度だけではなく特定技能制度に関しても見直しが行われており、新制度である育成就労は3年間で特定技能1号の水準の人材に育成することを目的としているのが特徴です。
そのため、特定技能制度と深く関わりのある制度といえます。
3年間日本で就労しながら技術や知識を学び、一定の条件をクリアすることにより在留資格を特定技能1号に変更し、日本で就労を続けることができます。
特定技能は、労働力が不足している産業分野において、人手を確保するための制度です。
そのため、今後はより多くの外国人労働者を獲得するため、育成就労制度によって特定技能外国人を増やすための取り組みが行われていく形になるでしょう。
制度の開始時期はまだ具体的には決まっていません。
早くとも2025年以降になるのではないかと予測されています。
新制度もよく確認が必要
いかがだったでしょうか。
技能実習生とは何か、どのような制度なのかなどを紹介しました。
現在、日本では多くの外国人が技能実習制度を利用して働いています。
技能移転による開発途上国への国際協力に興味のある企業は利用を検討してみてはいかがでしょうか。
ただ、紹介したように今後は新制度に移行することになっているので、こちらもよく確認が必要です。
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