日本語能力試験(JLPT)とは?N1レベルの難易度と採用時の注意点
外国人の雇用について検討した際、言葉の壁を不安に感じるのではないでしょうか。
外国人の日本語力を判断する方法として、日本語能力試験(JLPT)を参考にする方法があります。
そこで、外国人採用を検討している方のため、日本語能力試験(JLPT)とは何か、どういったレベルがあるのかなどを解説します。
本記事を読むことによって日本語能力試験(JLPT)の難易度や採用のメリット、注意しておきたいポイントなどが理解できるようになるので、ぜひご覧ください。
目次[非表示]
- 1.日本語能力試験(JLPT)とは
- 1.1.受験要件
- 1.2.2024年のスケジュール
- 2.日本語能力試験(JLPT)と日本語検定の違い
- 3.日本語能力試験(JLPT)の難易度
- 4.日本語能力試験(JLPT)のN1レベルの人材を採用するメリット
- 4.1.スムーズにコミュニケーションを図れる
- 4.2.日本の国家試験を受験できる
- 5.日本語能力試験(JLPT)を外国人の採用に活かす際の注意点
- 6.言語だけではない!?外国人スタッフと上手くコミュニケーションを取る方法
- 6.1.ジェスチャーやツールなどを用いる
- 6.2.遠回しな表現を使わない
- 6.3.日本人の価値観を押しつけない
- 7.自社で求めるレベルの人材を採用する必要がある
日本語能力試験(JLPT)とは
日本語能力試験(JLPT)とは、日本語が母語ではない人のための試験であり、日本語の文字や語彙、文法といったものをどれほど理解できているかチェックするための試験です。
国際交流基金と日本国際教育支援協会が共催する形で試験を実施しています。
レベルはN1~N5の5段階です。
受験者は自分の知識量に合ったものを選択する形になります。
受験要件
日本語能力試験(JLPT)の受験要件は特に定められていません。
母語が日本語でない方であれば、だれでも挑戦できます。
年齢制限なども定められていません。
2024年のスケジュール
試験は全国47都道府県で実施されます。
2024年は以下の通りです。
【日本語能力試験の実施日】
|
試験会場が確定するのは試験直前です。
受験票で確認できます。
また、海外では以下の地域で行われます。
東アジア |
韓国、中国、モンゴル、台湾 |
東南アジア |
インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス |
南アジア |
インド、スリランカ、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、ブータン、モルディブ |
大洋州 |
オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィジー |
北米 |
カナダ、アメリカ |
中南米 |
コスタリカ、メキシコ、アルゼンチン、ウルグアイ、エクアドル、エルサルバドル、コロンビア、チリ、ドミニカ共和国、トリニダード・トバゴ、パラグアイ、ブラジル、ベネズエラ、ペルー、ボリビア |
西欧 |
アイルランド、イタリア、イギリス、オーストリア、オランダ、ギリシャ、スイス、スウェーデン、スペイン、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポルトガル |
東欧 |
アゼルバイジャン、アルメニア、ウクライナ、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、ジョージア、スロベニア、セルビア、タジキスタン、チェコ、トルクメニスタン、ハンガリー、ブルガリア、ベラルーシ、ポーランド、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、モルドバ、ルーマニア、ロシア |
中東 |
イスラエル、イラン、カタール、サウジアラビア、トルコ、ヨルダン |
北アフリカ |
アルジェリア、エジプト、スーダン(休止中)、チュニジア、モロッコ |
アフリカ |
ガーナ、ケニア、コートジボワール、コンゴ民主共和国、ベナン、マダガスカル、南アフリカ |
海外試験に関しては、7月のみ、12月のみといった地域もあるため注意が必要です。
日本語能力試験(JLPT)と日本語検定の違い
日本語能力試験(JLPT)のほかに「日本語検定」と呼ばれるものがあります。
それぞれの違いは以下の通りです。
試験・検定 |
日本語能力試験(JLPT) |
日本語検定 |
対象 |
日本語を母語としない人 |
日本語を使うすべての人 |
試験実施地域 |
日本・海外 |
日本国内のみ |
目的 |
日本語を母語としない人が就職や進学で求められる程度の日本語を習得しているかはかる |
日本語がネイティブ程度の人が正しい日本語とより豊かな表現を身につける |
このように全く異なるものです。
混同しないように注意しましょう。
関連記事:外国人労働者に対する日本語教育の重要性と効果的な日本語教育の方法
日本語能力試験(JLPT)の難易度
日本語能力試験(JLPT)では、N1~N5まであり、数字が小さいほど日本語能力が高いことになります。
それぞれの難易度と合格率は以下の通りです。
難易度・求められる日本語力 |
合格率(※) |
|
N1 |
幅広い分野で使われている日本語を理解できる |
34.0% |
N2 |
日常的な場面で使われている日本語が理解できてより幅広い場面で使われる日本語をある程度理解できる |
42.1% |
N3 |
日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる |
43.7% |
N4 |
基本的な日本語を理解できる |
42.6% |
N5 |
基本的な日本語をある程度理解できる |
50.6% |
参考:日本語能力試験(JLPT):過去の試験のデータ > 2023年 第1回(7月)データ(国内・海外合計)
それぞれについて詳しく解説していきます。
N1レベル
N1は、各レベルの中でも最も難易度が高く、取得できれば高い日本語力を持っていることが証明されるレベルです。
合格率は35%を切っており、試験の実施回によっては30%程度しか合格率がありません。
3人に1人以下程度しか合格できていないことになります。
出題される問題は非常に難しいため、日本人でも満点を取るのは厳しい難易度です。
また、日本で長く暮らしている外国人であったとしても、しっかり勉強して挑まなければN1に合格することは困難といえます。
日本語を読む能力として、幅広い話題について書かれた新聞の論説や評論といった論理的に複雑な文章や抽象度の高い文章でもしっかり理解できる能力を持ちます。
また、さまざまな話題の内容に深みがあるものを読んだとしても、話の流れ、詳細な表現意図を理解できるレベルです。
聞く能力に関しても、幅広い場面における自然な速度、まとまりのある会話・ニュース、講義といったものを聞いた際、話の流れや内容、登場人物の関係、内容の論理構造などを詳細に理解し、把握できるレベルとされています。
【問題サンプル】
|
N1を取得している方であれば、国内で求人されているほぼすべての業種に対応できるといえます。
N2レベル
N2はN1ほどではありませんが、それでも日常で使われる日本語はほぼ理解できるレベルです。
読む力としては、幅広い話題について書かれた新聞や雑誌の記事や解説、平易な評論といったものの論旨が明快な文章を読み、内容が理解できるレベルです。
聞く能力としても、日常的な自然に近い速度のまとまりがある会話やニュースを聞き、話の流れや内容、登場人物の関係を理解したり、把握できたりする力を持ちます。
【問題サンプル】
|
N1と比較すると問題の難易度がぐっと下がった印象があります。
それでもどれも近い意味を持つ単語が並んでいるため、外国人からすれば非常に難易度が高いことがわかるでしょう。
新聞に書かれている内容が理解できるレベルなので、日本語の理解能力は高いと判断できます。
特に、N2とN3では日本語力の差が非常に大きいと言われています。
そのため、大手企業の中にはN2以上を求人要件に定めているところもあるようです。
N3レベル
N3は、難易度でいうと中間に位置するもので、日常的な日本語であればある程度理解可能です。
読む力としては、日常的な話題について書かれた具体的な内容を表す文章でも読めば理解できる、新聞の見出しを見て概要が分かる、難しい文章は言い換え表現により要旨が理解できるといったレベルです。
聞く力としては、日常的な場面でやや自然に近い速度のまとまりのある会話を聞き、話の具体的な内容や登場人物の関係性といったものはほぼ理解できます。
ただ、N3取得者の中には通常の会話速度では理解が追いつかない人も少なくありません。
そのため、会議や商談への参加などは対応できない可能性が高いです。
複雑な日本語の理解を必要とする業務を任せる場合は、N3では不安があります。
どちらかというと、マニュアルが用意されている業務や、工場のライン担当といった単純作業に向いているでしょう。
【問題サンプル】
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N4レベル
N4は、基本的な日本語が理解できる程度のレベルです。
読む力としては、基本的な語彙や漢字といったものを使って書かれた普段の生活の中で身近な話題の文章を読み、理解できます。
聞く力としては、日常的な場面でややゆっくりと話される会話であれば主な内容を理解できるレベルです。
なお、特定技能外国人の在留資格にはN4以上の取得が必要になります。
または代わりに国際交流基金日本語基礎テスト(JFT)A2以上の取得でも認められる形です。
N4以上の外国人を採用しようと考えている方は、どの程度の日本語力があるのか確認しておきましょう。
【問題サンプル】 |
問題の文章にも大きな違いがあります。
すべてひらがなと一部カタカナで書かれていることに加え、文章の区切りにはスペースが入れられているのが特徴です。
ここからもわかるように、漢字の理解度はそれほど高くないといえます。
目安としては、小学校低学年程度です。
そのため、マニュアルなどを作成する際は、できるだけ漢字を使わない、ふりがなをつけるといった工夫が必要になります。
N5レベル
N5は、最も難易度が低いレベルです。
受験者のうち、半数以上が合格していることになります。
基本的な日本語をある程度理解できるレベルで、読む力だとひらがなやカタカナ、日常生活で用いられる基本的な漢字で書かれた典型的な語句、文書といったものが理解できます。
聞く力については、教室や身の回りといった日常生活の中でよく出会う場面でゆっくり話されるような身近な会話から必要な情報を聞き取れる程度です。
【問題サンプル】 |
日本語能力試験(JLPT)のN1レベルの人材を採用するメリット
日本語能力試験(JLPT)は、レベルによって日本語力に大きな理解度の差があることがご理解いただけたかと思います。
「N1人材を採用したい」と感じた方も多いでしょう。
N1レベルの人材を採用することにより、以下のようなメリットがあります。
スムーズにコミュニケーションを図れる
業務を指示する際などに、言葉を一つひとつゆっくり理解できるように説明するのはなかなか大変な作業です。
ですが、N1取得人材であれば一般的な会話速度でも理解できるケースが多いので、スムーズにコミュニケーションを図れるのが大きなメリットといえます。
日本語はほぼ理解できるレベルなので、会話の途中で一つひとつ意味を確認されるような心配もありません。
こちらが言いたいことを理解できるので、指示を誤って理解してしまうような心配も少なくなるでしょう。
一緒に働く人から見ても接しやすい、言葉が通じないといった心配が少ないのは魅力です。
難しい表現などは理解できないこともありますが、他の表現に言い換えることによって理解可能です。
中には日本人とほぼ変わらないレベルで会話できる方もいます。
日本の国家試験を受験できる
日本語能力試験(JLPT)のN1を取得している人であれば、日本で医師や看護師といった国家資格の受験が可能になります。
そのため、国家資格を必要とする職業で外国人を採用しようとしている企業の担当者さまは、日本語能力試験(JLPT)のN1(またはN2)を所有しているか、日本での国家試験に合格しているかを確認しておきましょう。
日本語能力試験(JLPT)を外国人の採用に活かす際の注意点
外国人を採用する際、どの程度日本語を理解しているのか知るために日本語能力試験(JLPT)のレベル判定が参考になります。
以下のことに注意しましょう。
必ずしもN1レベルが必要なわけではない
すべての職業において必ずしもN1レベルが求められるわけではありません。
複雑な業務や指示を伴わない仕事であれば、N2でも問題ないでしょう。
さらに、単純作業を任せる場合はN3、またはN4でも働けます。
必要なレベルは、在留資格や職種などによっても異なるので、自社の仕事を任せるにはどの程度の日本語力があれば良いのか、どのレベルが必要か検討してみてください。
N1取得人材は数が少ないので、N1に限定して求人を出すと人材探しに苦戦してしまう可能性が高いです。
N1レベルでも流暢な日本語を話せるとは限らない
N1レベルの人材であれば、日本人とほぼ変わらない日本語力を持っているとはいえません。
同じN1の所持者であったとしても日本語が流暢ではなかったり、日本語を書くのが苦手だったりする方もいます。
これは、日本語能力試験(JLPT)がマークシート形式であり、スピーキングや筆記試験で判断されないことが関係しているといえるでしょう。
N1の所持者だからといってはじめから能力を過度に評価して難しい仕事を任せてしまうと、本人にとって大きな負担になってしまう可能性があります。
日本のビジネス知識があるとは限らない
日本語能力試験(JLPT)のレベルは日本語力を評価するためのものであり、ビジネス知識があることを証明するものではありません。
日常会話の理解度をはかる試験なので、必ずしもN1の所持者であればビジネス面でも優れた能力を発揮してくれるとは思わないようにしましょう。
業務の処理能力を表しているわけではない
「N1の取得者=非常に優秀」といったイメージを持ってしまうこともありますが、業務の処理能力を示すものではありません。
あくまで日本語を理解している人材であり、業務の処理能力は個人差が大きいです。
当然ながら入社後はしっかりとした教育を行うことが求められます。
言語だけではない!?外国人スタッフと上手くコミュニケーションを取る方法
日本語力が高いからといって、必ずしもコミュニケーションがうまくいくとは限りません。
外国人スタッフとコミュニケーションを取る際、日本人側も以下のポイントに注目しましょう。
ジェスチャーやツールなどを用いる
ジェスチャーやツールといったものを用いることにより、さらにわかりやすく言葉を伝えられるようになります。
日本語は難しい表現をするものもあるため、日本語について理解している外国人であったとしても、間違えてとらえてしまうことが珍しくありません。
意味を勘違いしそうなものについては英語での表現も添えるなどして伝える工夫をしましょう。
翻訳アプリを用意しておくと役立ちます。
遠回しな表現を使わない
遠回しな表現を使うと意味を読み解くのが難しくなります。
比喩的な言葉は避けましょう。
また、日本では空気を読む文化がありますが、これは日本特有のものであり、外国人には通用しません。
伝えたいこと、理解して欲しいことはわかりやすい言葉を選び、はっきりと直接伝えましょう。
「言わなくても分かるはず」「察してくれるはず」といった考えは捨てた方が良いです。
遠回しな表現で業務指示などを出した場合、それが正しく伝わらず、大きなトラブルにつながってしまう恐れもあります。
日本人の価値観を押しつけない
業務の進め方ひとつみても、日本人とは価値観が異なると感じるポイントが出てくるはずです。
外国人の価値観は日本人とは異なるものなので、こちらの価値観を押し付けないようにしましょう。
外国人を採用する場合は、職場全体で柔軟な対応を心がけることが欠かせません。
日本人の価値観を押しつけると、外国人にとって非常に居心地の悪い職場になってしまいます。
特に初めて外国人を雇用する企業の場合、何をどうすれば外国人にとって働きやすい職場づくりができるのかわからず、戸惑ってしまうこともあるでしょう。
外国人本人ともよく話をしながらお互いにとって気持ちよく働ける職場作りが求められます。
自社で求めるレベルの人材を採用する必要がある
いかがだったでしょうか。
日本語能力試験(JLPT)について紹介しました。
すべての職場でN1レベルが必要になるわけではありません。
自社で求める人材のレベルを明らかにし、適した人材を採用していきましょう。
外国人採用に不安や悩みを抱えているのであれば、人材紹介サービス「スタッフ満足」までご相談ください。
各社のニーズをお聞きし、これまで培ってきた豊富な知見とノウハウを活かしながら、適した人材の採用をサポートしています。