
特定技能「ビルクリーニング」とは?受け入れ要件・採用の流れ・費用を解説
ビルメンテナンス業で清掃スタッフの採用が年々難しくなり、外国人採用を視野に入れ始めた担当者も増えています。ただ、特定技能という制度の名称は聞いたことがあっても、自社の業種が対象に含まれるのか、採用に向けて何を準備すればよいのか、イメージがつきにくい方が多いのが実情です。
特定技能「ビルクリーニング」は、オフィスや商業施設の清掃業務に従事する外国人を受け入れられる在留資格で、人手不足の打開策として活用する企業が増えています。受け入れにあたっては建築物清掃業の登録・協議会への加入・支援体制の整備など、業種特有の要件を満たす必要があります。
この記事では、対象業務の範囲から受け入れ企業に求められる要件・外国人側の要件・採用から就労開始までの流れ・費用相場・採用時の注意点まで、検討に必要な情報を順に解説します。自社が受け入れ対象に当てはまるかの確認から、次のステップの判断まで、以下でひとつずつ整理していきます。
なお、人材紹介会社については「 清掃・ビルクリーニングに強い外国人人材紹介会社16社を比較 」をご覧ください。
※本記事は公開日時点の情報をもとに作成しています。制度・要件は変更される場合があるため、最新情報は出入国在留管理庁など公的機関にてご確認ください。
目次[非表示]
特定技能「ビルクリーニング」の制度概要
特定技能「ビルクリーニング」は、オフィスや商業施設などの建築物内部の清掃業務を担う在留資格です。2019年に清掃・衛生管理業が特定技能の対象分野に加わり、業界の人手不足の打開策として活用する企業が年々増えています。まずは制度の背景と全体像を整理します。
関連記事: 在留資格「特定技能」とは?受け入れ要件や採用の流れなどわかりやすく解説
ビルクリーニング業界の人手不足の現状
ビルクリーニング業界では、慢性的な人手不足が深刻な課題となっています。厚生労働省「職業情報提供サイトjob tag ビル清掃」(令和5年度)によると、有効求人倍率は1.31倍に達しており、求職者数を上回る求人が続いています。
特定建築物の対象となる施設は48,313棟(令和5年・厚生労働省「令和5年度衛生行政報告例」)に上り、管理が必要な現場は確実に広がっています。一方で、公益社団法人全国ビルメンテナンス協会の令和5年度調査では、従業員に占める60歳以上の割合が46.7%と、約半数が高齢層であることが明らかになっています。
若年層の入職が進まないなかで清掃現場の維持を続けるには、外国人材の活用が現実的な選択肢の一つになっています。特定技能「ビルクリーニング」は、こうした構造的な課題に対応するために設けられた制度です。
特定技能1号と2号の違い
特定技能には1号と2号の2種類があり、ビルクリーニングはいずれも対象分野です。
主な違いは以下のとおりです。
1号は最長5年間の就労が可能で、企業側には外国人への生活支援を含む10項目の義務的支援を確保することが求められます。2号は在留期間の更新上限がなく、将来的に永住権取得の要件を満たすことも可能です。2号に求められる業務水準は高く、複数の作業員を指導しながら清掃業務を担える技能が必要です。
なお、特定技能外国人は直接雇用のみが認められており、労働者派遣による受け入れはできません。受け入れ前に雇用形態の確認が必要です。
受け入れ人数と5年間の受け入れ目標
令和8年1月の閣議決定により、令和6〜10年度の5年間の受け入れ目標枠が改定されました。ビルクリーニング分野の枠組みは以下のとおりです。
旧枠は20,000人でしたが、今回の改定で60%超の増加となりました。国が積極的な受け入れを後押ししている状況であり、ビルクリーニング分野での外国人採用はより取り組みやすい環境になっています。
ビルクリーニングで任せられる業務
特定技能「ビルクリーニング」で外国人が従事できる業務には、「主業務」「関連業務(日本人と共に従事する場合のみ)」「対象外業務」の3つの区分があります。採用計画を立てる前に、自社現場でどの業務を担ってもらうかを正確に把握しておきましょう。
いくつかポイントがあります。まず、住宅清掃は対象外です。個人宅の家事代行・清掃サービスには特定技能「ビルクリーニング」は適用されません。清掃の対象が「建築物衛生法に基づく特定建築物」であることが基本的な条件です。
次に、ベッドメイキングなどの関連業務は日本人と一緒に従事することが条件です。外国人のみで関連業務を担当させることは認められていません。また、関連業務だけを担当させることも不可で、主業務が中心でなければなりません。
受け入れを検討している現場の業務が「主業務」に当たるかどうかを、採用前に確認しておくことが先決です。
受け入れ企業に求められる要件
特定技能「ビルクリーニング」の受け入れには、他の特定技能分野にはない業種固有の要件があります。なかには準備に数ヶ月を要するものもあるため、採用計画の早い段階から確認しておく必要があります。
建築物清掃業の登録
受け入れ企業は、建築物衛生法第12条の2第1項第1号に基づく「建築物清掃業」の登録を都道府県知事から受けていなければなりません。登録は営業所単位で行う必要があります。
登録には、物的要件と人的要件の両方を満たすことが求められます。
物的要件
真空掃除機(1台以上・自社保有)
床みがき機(1台以上・自社保有)
機器はいずれも自社が所有している必要があり、借入では認められません。
人的要件
清掃作業監督者の配置(営業所ごと)
清掃作業監督者は、建築物環境衛生管理技術者や厚生労働大臣の登録を受けた機関が実施する講習の修了者などが要件を満たします。なお、同一の機材・同一の監督者で複数の営業所の登録を兼ねることはできないため、営業所が複数ある場合は各所で独立した体制が必要です。
また、清掃業務に加えて機械整備・補修・点検を行う事業所は、「建築物環境衛生総合管理業」の登録も必要になります。自社の業務範囲がどちらに該当するかを確認したうえで、必要な登録を進めてください。
ビルクリーニング分野特定技能協議会への加入
受け入れ企業は、厚生労働省が所管するビルクリーニング分野特定技能協議会への加入が義務付けられています。
注意すべきは加入のタイミングです。在留資格申請より前に加入を完了していることが必要です(2026年6月時点)。かつては「受け入れ後4ヶ月以内」に加入すればよい運用でしたが、現在この要件は変更されており、申請前の加入完了が求められます。
加入手続きはオンラインで申請できますが、審査に時間がかかる場合もあります。採用が決まったらすぐに手続きを開始することで、在留資格申請のスケジュールに遅れが生じるリスクを避けられます。
支援体制の確保
特定技能1号外国人を受け入れる企業には、生活面を含む10項目の義務的支援を確保することが求められます。主な支援内容は以下のとおりです。
事前ガイダンス(労働条件・生活情報の説明)
出入国時の送迎
住居確保・生活に必要な契約の補助
日本語学習の機会の提供
相談・苦情への対応
定期的な面談と行政機関への通報
これらの支援をすべて自社で実施するには、外国語対応できる担当者の確保や手続き管理など、相当な運用負荷が生じます。外国人採用が初めての企業には、登録支援機関への委託が現実的な選択です。
委託した場合の費用相場は、出入国在留管理庁「特定技能外国人の受入れに関する実態調査」によると月額平均28,386円(最多ゾーンは20,001〜25,000円)です。
関連記事: 登録支援機関とは?特定技能制度における支援内容や役割、選び方を解説
特定技能外国人が満たすべき要件
特定技能1号を取得するためには、外国人本人が技能と日本語能力の要件を満たす必要があります。要件を満たす経路は「試験合格」と「技能実習2号の修了による免除」の2パターンです。
技能評価試験への合格
ビルクリーニング分野の技能要件は、公益社団法人全国ビルメンテナンス協会が実施する「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」への合格で確認されます。
試験は2種類で構成されています(2026年6月時点)。
学科・実技いずれも60%以上の得点が必要です。試験の日程や実施場所については、公益社団法人全国ビルメンテナンス協会のウェブサイトで最新情報を確認してください。
日本語能力試験への合格
技能評価試験とは別に、日本語能力の証明も求められます。以下のいずれかを満たす必要があります。
国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic):250点中200点以上
日本語能力試験(JLPT):N4以上
JFT-BasicはJLPT N4と同程度の水準とされており、いずれか一方に合格していれば要件を満たします。
試験が免除される条件
ビルクリーニング分野の技能実習2号を良好に修了した人材は、技能評価試験と日本語試験の両方が免除されます。すでに技能実習生として現場を経験した人材を特定技能1号に移行させる場合、手続きを比較的スムーズに進められます。
ただし、現在技能実習生を抱える企業は注意が必要です。技能実習制度は2026年12月末をもって新規入国が終了し、育成就労制度へ移行することが決定しています(2024年改正)。技能実習生の在籍期間や修了予定時期を踏まえ、早めに移行手続きの計画を立てることを検討してください。
採用から就労までの流れ
候補者の選定から就労開始まで、書類準備や行政手続きを含めると3〜6ヶ月程度かかります。採用計画は余裕を持って立てることが、現場への影響を最小限に抑えるポイントです。全体の流れを時系列で確認しておきましょう。
候補者の選定
採用ルートは大きく3つに分かれます。自社の状況と候補者のプロフィールに応じて選択します。
海外採用(送り出し機関・エージェント経由)
海外から新たに採用する場合は、現地の送り出し機関や人材エージェントを通じて候補者を選定します。来日前の日本語教育・技能研修の質は送り出し機関によって異なるため、機関選びが採用後の定着を左右します。選定から就労開始まで4〜6ヶ月以上かかる点を見込んでおいてください。
関連記事: 清掃・ビルクリーニングに強い外国人人材紹介会社16社
国内採用(在留資格変更)
すでに日本に在留している外国人が対象です。他の在留資格から特定技能1号への変更申請を行います。2〜4ヶ月程度で就労開始できるケースが多いです。
技能実習生からの移行
自社で技能実習生を受け入れていた場合、ビルクリーニング分野の技能実習2号を良好修了した人材は試験免除で特定技能1号に移行できます。現場を熟知しており定着率も高くなる傾向があります。前述のとおり、技能実習制度は2026年12月末に新規入国が終了するため、早めの移行計画が求められます。
雇用契約の締結
特定技能外国人との雇用契約は、特定技能の基準を満たす内容で締結する必要があります。
確認が必要な主な項目は以下のとおりです。
給与: 同一業務に従事する日本人と同等以上の賃金水準
労働時間: 週30時間以上・年間217日以上のフルタイム勤務
業務範囲: 特定技能「ビルクリーニング」の対象業務に該当すること
フルタイム要件は、ビルクリーニング現場特有の早朝・深夜帯の短時間シフトが多い事業所では満たすことが難しい場合があります。雇用契約を結ぶ前に、シフト全体の週あたり労働時間を合算して要件を満たせるかを確認してください。
在留資格の申請
候補者の在留状況によって申請手続きが異なります(2026年6月時点)。
申請から許可まで1〜3ヶ月程度かかります。この段階で重要なのは、申請より前にビルクリーニング分野特定技能協議会への加入を完了させておくことです。加入が間に合っていないと申請自体ができないため、採用が決まった段階で並行して手続きを進めてください。
在留資格の申請書類の作成については、行政書士と連携したサポートを提供している機関を活用することを検討してください。
就労開始と入社後の手続き
就労開始時には、以下の届出・手続きを行います。
外国人雇用状況の届出: 雇用保険の加入手続きと合わせて、ハローワークへ届出(入社日翌月末まで)
社会保険加入手続き: 健康保険・厚生年金への加入
就労開始後も継続的な義務があります。
登録支援機関に支援を委託している場合は、これらの対応を代行してもらえます。
ビルクリーニング人材の採用にかかる費用
採用ルートによって費用構成が異なります。海外採用と国内採用(在留資格変更)のそれぞれの目安を確認したうえで、自社の採用計画に合った試算を立ててください。
関連記事: 特定技能外国人受け入れの費用相場とコストダウンのポイント
海外採用の費用目安(1名あたり)
国内採用(在留資格変更)の費用目安(1名あたり)
登録支援機関の委託費は1名あたり月額平均28,386円(出入国在留管理庁調査)が相場です。費用を抑えるポイントは、支援内容・月額・紹介料をあわせて比較し、成功報酬型で採用確定前に費用が発生しない機関を選ぶことです。退職補償制度(入社後一定期間内の早期離職時に再紹介を保証する制度)を設けている機関もあり、採用後のリスク軽減になります。
ビルクリーニング人材の採用の注意点
特定技能「ビルクリーニング」には、他の特定技能分野とは異なる現場特性や制度変更に起因する注意点があります。採用を進める前に確認しておきたいポイントを整理します。
フルタイムのシフト確保
ビルクリーニング業では、早朝の開館前清掃や深夜の閉館後清掃など、短時間シフトを組み合わせて業務を回している現場が多いという特性があります。しかし特定技能では、週30時間以上・年間217日以上のフルタイム勤務が必要です。
対応策として、複数現場を掛け持ちして合計勤務時間を確保する事業者や、日中の定期清掃と夜間清掃を組み合わせて1日の勤務時間を通常の労働者と同等にするシフト設計を採用している事業者もいます。採用前に「現場単位ではなく1週間単位で週30時間を確保できるか」を確認してください。
協議会加入は在留資格申請より前に
ビルクリーニング分野特定技能協議会への加入は、在留資格申請より前に完了していることが条件です(2026年6月時点)。
かつては「受け入れ後4ヶ月以内」に加入すればよい運用でしたが、現在この条件は変更されています。採用が決まってから協議会加入の手続きを始めても、申請に間に合わないケースがあります。採用活動と並行してすぐに加入手続きを開始することで、スケジュール上のリスクを減らせます。
給与は日本人と同等以上
特定技能外国人に支払う給与は、同一業務に従事する日本人と同等以上でなければなりません。清掃スタッフ全体の賃金水準が低い現場では、特定技能外国人の雇用にあたって既存スタッフとの賃金設定を見直す必要が生じる場合があります。
入管庁への定期報告では給与額も報告対象に含まれます。日本人より不当に低い賃金を設定していた場合、行政処分の対象となる可能性があります。雇用契約書に明記した賃金水準を実際の支払いと一致させ、適切に管理することが求められます。
まとめ:特定技能「ビルクリーニング」の採用は事前準備が鍵
清掃スタッフの採用難が続くなか、特定技能「ビルクリーニング」は即戦力確保の現実的な選択肢になっています。受け入れには建築物清掃業の登録・協議会加入・支援体制の整備が必要で、協議会加入は在留資格申請より前に完了している必要があります。費用は一人採用あたり50〜100万円程度が目安で、登録支援機関への委託を含めたスケジュール設計が採用成否を左右します。
まず自社が受け入れ要件を満たしているかを確認し、週30時間のシフト確保と協議会加入のタイミングを早めに押さえることが、スムーズな就労開始への近道です。検討を進めるなら、要件確認と初期の情報収集から始めてみてください。
外国人採用から育成支援まで、フルサポートならスタッフ満足へ
採用実績5,000名以上のスタッフ満足なら、紹介料30万円〜、月額委託料1.6万円で、特定技能の外国人採用と育成支援が可能です。費用や対応エリアをはじめ、自社の業種・採用国籍への対応可否、採用開始までの具体的な流れを担当者が個別にご説明します。
✓ 紹介料30万円〜、月額1.6万円の登録支援
✓ 全国47都道府県・海外6ヶ国の自社ルート
✓ 採用成功報酬型。採用が決まるまで費用はかかりません
気になることがあれば、まずお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. 建築物清掃業の登録がない場合、特定技能ビルクリーニング分野での受け入れはできませんか?
A. 受け入れはできません。建築物衛生法に基づく「建築物清掃業」または「建築物環境衛生総合管理業」の登録が必須要件です(2026年6月時点)。未登録の場合は先に登録手続きを済ませてください。
Q. 登録支援機関に支援業務を委託した場合、企業側の義務はなくなりますか?
A. なくなりません。登録支援機関への委託は支援実務の代行であり、協議会への加入や建築物清掃業登録など受け入れ企業として求められる要件は引き続き企業側が負います。委託後も義務の主体は企業である点を確認しておいてください。
Q. 協議会への加入はいつまでに済ませる必要がありますか?
A. 在留資格申請より前に加入を完了しておく必要があります(2026年6月時点)。かつては受け入れ後4ヶ月以内とされていましたが、制度変更により申請前の加入が必須となりました。採用スケジュールを組む際は、協議会加入を最初のステップに位置づけてください。
Q. 技能実習2号修了者を特定技能1号に移行させる場合、試験は免除されますか?
A. ビルクリーニング分野の技能実習2号を修了した方は、技能試験と日本語試験がいずれも免除されます(2026年6月時点)。ただし免除が適用されるのはビルクリーニング職種の実習修了者に限られます。他職種の技能実習修了者は原則として試験の受験が必要です。
Q. ベッドメイキング作業を特定技能「ビルクリーニング」の外国人に担当させることはできますか?
A. 結論、担当させることは可能です。ただし、客室清掃の業務の一連の業務の中に、ベッドメイキングなどの関連業務を取り入れることで対応可能です。関連業務だけを単独で担当させることはできず、主業務が中心であることが条件です。





