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特定技能「ビルクリーニング」とは?採用の要件や費用を解説

少子高齢化により、人材不足が深刻化しているのは、ビルクリーニング業界も例外ではありません。
 
そこで2019年に、人材不足の問題を解決する手立てとして、外国人労働者を受け入れるための在留資格「特定技能」が創設されました。
 
本記事では、そんな特定技能の一つである「ビルクリーニング」の概要を解説します。
従事できる業務の内容や採用に要する費用も紹介しますので、人材不足にお悩みの事業者様はぜひ、最後までご覧ください。

目次[非表示]

  1. 1.特定技能「ビルクリーニング」の概要
  2. 2.特定技能「ビルクリーニング」の区分
  3. 3.特定技能「ビルクリーニング」が創設された背景
  4. 4.特定技能「ビルクリーニング」の業務内容
  5. 5.受け入れ企業(特定所属機関)側の要件
    1. 5.1.建築物清掃業の登録
    2. 5.2.建築物環境衛生総合管理業の登録
    3. 5.3.ビルクリーニング分野特定技能協議会への加入
  6. 6.特定技能「ビルクリーニング」の採用までの流れ
  7. 7.特定技能「ビルクリーニング」の採用にあたっての費用
  8. 8.特定技能1号「ビルクリーニング」を取得する方法
    1. 8.1.方法① 試験に合格する
    2. 8.2.方法② 技能実習2号「ビルクリーニング」からの移行
  9. 9.特定技能2号「ビルクリーニング」を取得する方法
  10. 10.ビルクリーニング分野特定技能1号の試験概要
  11. 11.特定技能「ビルクリーニング」は人材不足を解決する手立て

特定技能「ビルクリーニング」の概要

特定技能「ビルクリーニング」とは、2019年に創設された特定技能の一分野であり、所有者自身が即戦力となる外国人であることを示す在留資格です。
 
ビルクリーニングは、主にビルや学校といった建物内の清掃や整備を行い、清潔な環境を保つ仕事です。
令和2年に公表された厚生労働省の報告書では、令和7年までの5年間で特定技能「ビルクリーニング」の受け入れ人数を最大37,000人と想定しています。
 
なお、特定技能は一定の技能と知識をもつ外国人に与えられる在留資格であり、保有者は人材不足が問題になっている12分野(14業種)において、就労が可能になります。
 
特定技能の制度で外国人の受け入れが認められている職種は以下の通りです。
 
【特定技能の職種一覧】

  • ビルクリーニング
  • 介護
  • 製造業(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)
  • 建設
  • 造船・船用工業
  • 自動車整備
  • 航空
  • 宿泊
  • 農業
  • 漁業
  • 飲食料品製造業
  • 外食業

詳しくは後述しますが、特定技能には1号と2号があり、特定技能1号の在留資格を得た外国人は最長5年間、要件を満たした企業で就労できます。
2号を取得すれば、在留期限の更新に上限がないため、日本での永住も不可能ではありません。
 
なお、雇用主の注意点として、特定技能は直接雇用に限られており、社会保険に加入させなければならないことが挙げられます。

関連記事:特定技能の12分野(14業種)の職種一覧を解説
 
参照元:ビルクリーニング分野における外国人材受入れ体制適正化調査事業報告書

特定技能「ビルクリーニング」の区分

先ほども述べたように、特定技能は「特定技能1号」と「特定技能2号」に区分されます。
特定技能1号は12分野すべての職種が対象であり、特定技能2号は介護を除く11分野が対象です。
 
つまり、ビルクリーニングは、特定技能1号と特定技能2号の対象となります。
 
2つの特定技能の違いを以下の表にまとめました。
 
【特定技能1号と特定技能2号の違い】


特定技能1号

特定技能2号

在留期限

1年・6か月・4か月ごとの更新(通算5年まで)

3年・1年・6か月ごとの更新(更新の上限なし)

永住権の取得

不可

要件を満たせる可能性あり

技能水準

相当程度の知識または経験を必要とする技能

熟練した技能(各分野の技能試験で確認)

外国人支援

必須

支援計画の策定・実施は不要

家族の帯同

不可

条件を満たせば可能

日本語能力水準試験の有無

あり

なし

特定技能2号を取得するには、高い技能や知識を求められますが、資格を得られれば家族の帯同が可能なうえ、在留期限の制限がないため、長期で働くことができます。

特定技能「ビルクリーニング」が創設された背景

ビルクリーニング業界は厳しい人材不足に陥っているのが実情です。
厚生労働省の調査によると、2017年には有効求人倍率が2.95倍にものぼったことが判明しています。
 
一方、延べ床面積が3,000m2を超える百貨店などが該当する特定建築物は年々増えており、2014年は43,876棟だったものが、5年後の2019年には46,210件まで増加しています。
 
また、65歳以上の従事者が全体の37.2%も占めており、長期的に見れば、今後の人材不足を加速させる要因となるのは間違いありません。
人材不足により、ビルクリーニングの業務が適正に行き届かなくなると、建物内の衛生状況が悪化し、利用者の健康を損なうおそれがあります。
 
日本政府は、これまでに国内人材の確保や清掃ロボットの開発・導入など対策を講じましたが、人材不足の解消には至っていません。
このような状況を解決するための手立てとして、外国人労働者の雇用を促進させる特定技能制度が創設されました。
 
参照元:厚生労働省「ビルクリーニング分野について」

特定技能「ビルクリーニング」の業務内容

ビルクリーニング分野の特定技能をもった外国人労働者は、次の業務に携わることができます。
 
【特定技能を保有する外国人労働者が携われるビルクリーニングの業務内容】

主な業務

・ビルクリーニング作業
・客室のベッドメイク作業

日本人が通常従事する関連業務

・資器材倉庫の整備作業
・建物外部の洗浄作業
・建築内外の植栽管理作業
・資機材の運搬作業
・客室以外のベッドメイク作業
・ベッドメイク作業を除く客室などの整備作業

携われない業務

・住宅の清掃

主な業務は、ビルやホテルなどの清掃やメンテナンスですが、特定技能をもった外国人労働者は、ベッドメイク業務も認められているのがポイントです。
宿泊業も特定技能制度が認められているものの、ホテル分野での業務は受付や接客が主な仕事であり、ベッドメイクはビルクリーニングの作業に分類されます。
 
そのほかの業務に関しては、日本人が同じ現場で従事している場合に限り、付随して携わることが可能です。
ただし、特定技能「ビルクリーニング」はあくまでもビルクリーニングの主業務を行うための資格なので、関連業務ばかりを行うことは認められていません。

受け入れ企業(特定所属機関)側の要件


ビルクリーニング分野の企業が、特定技能を取得した人材を受け入れるには、いくつかの要件を満たす必要があります。
 
要件の詳細は以下の表をご覧ください。
 
【特定技能「ビルクリーニング」を受け入れる企業の要件】

要件

詳細

所定の登録(知事登録)を受けた営業所であること

・建築物清掃業(建築物衛生法第12条の2第1項第1号)
・建築物環境衛生総合管理業(建築物衛生法第12条の2第1項第8号)

直接雇用であること

・派遣などの雇用形態は認められない

業務内容に問題がないこと

・当該人材の業務内容が、厚生労働省が公表している「職務記述書」に適合している

ビルクリーニング分野特定技能協議会の構成員であること

・特定技能外国人を初めて受け入れる企業は、1号特定技能外国人を受け入れた日から4か月以内に協議会の構成員になる必要がある
・協議会や厚生労働省が要請する場合、調査・指導なども含めて必要な協力を行う

注意点として、建築物清掃業あるいは建築物環境衛生総合管理業の登録は、法人単位ではなく、営業所での取得が求められるという点が挙げられます。
 
また、以下に記した3つの登録をしなければ特定技能外国人を受け入れられないので、詳細を確認しておきましょう。

建築物清掃業の登録

建築物の床を清掃する事業を行うには、事業者は「建築物清掃業」に登録する必要があります。
登録には、以下の物的要件と人的要件を満たさなければなりません。
 
【建築物清掃業の物的要件と人的要件】

物的要件

・真空掃除機
・床みがき機

人的要件

・清掃作業監督者
・研修を修了した従事者

清掃作業監督者は、講習会を修了したうえで、試験に合格した際に与えられる資格を保有する労働者を示します。
なお、機材の借入は認められておらず、同一の機材や監督者で、2か所以上の登録はできません。

建築物環境衛生総合管理業の登録

建築物環境衛生総合管理業とは、建築物の清掃や機械の整備、補修や点検を併せ行う事業であり、従事するには登録が必要です。
 
建築物環境衛生総合管理業に登録する際の、物的要件と人的要件は以下の通りです。
 
【建築物衛生環境総合管理業の物的要件と人的要件】

物的要件

・真空掃除機
・床みがき機
・残留塩素測定器
・浮遊粉塵測定器
・一酸化炭素測定器(検知管方式)
・二酸化炭素測定器(検知管方式)
・温度計(0.5度目盛)
・乾湿球湿度気(0.5度目盛)
・風速計(0.2m毎秒以上の気流を測定できる測定器)
・測定に必要な器具(測定器固定用台車等)
・残留塩素測定器(DPD法と同等以上)

人的要件

・統括管理者
・清掃業監督者
・空気環境測定実施者
・空調給排水管理監督者
・研修を修了した従事者

その他の要件

・基準に適合した作業方法、機材器具などの維持管理方法

これらの要件を満たしたうえで、営業所の所在地を管轄する都道府県知事に申し出て、登録を行います。

ビルクリーニング分野特定技能協議会への加入

ビルクリーニング分野特定技能協議会は、特定技能外国人の受け入れと保護に有用な情報を共有し、人材不足に対して措置を講ずることを目的とした団体です。
雇用上の問題が発生した際の対応や転職の支援などを行います。
 
外国人労働者を受け入れる場合には、このビルクリーニング分野特定技能協議会への加入が不可欠です。
また、加入期限は特定技能外国人を受け入れ始めてから4か月以内と定められており、期限内に加入手続きをしなければなりません。
 
ビルクリーニング分野特定技能協議会への加入は、厚生労働省のホームページからオンラインで申請が可能です。

特定技能「ビルクリーニング」の採用までの流れ

特定技能外国人を採用する際の流れは、次のように進められます。
 
【特定技能外国人を採用する際の流れ】

  1. 人材紹介サービスなどに求人を出す
  2. 面接して採用する
  3. 内定者と雇用契約を結ぶ
  4. 法定の事前ガイダンスを行う
  5. 入国管理局へ書類申請する
  6. 入国管理局から許可を受ける
  7. 入社

採用面接から入社までは、少なくとも2~3 か月はかかることを想定してください。

また、特定技能外国人を受け入れるために必要な、建築物清掃業や建築物環境衛生総合管理業の登録などは事前に済ませておくとよいでしょう。

関連記事:特定技能外国人を採用する際の流れとかかる費用を解説

特定技能「ビルクリーニング」の採用にあたっての費用

ビルクリーニング分野の特定技能外国人を雇用する際の費用の概算を下記の表にまとめました。


海外から呼び寄せる場合

国内で特定技能に移行する場合

送り出し機関への
手数料

20万~60万円

0円

人材紹介会社への
手数料

0円

20万~40万円

在留資格申請
に関する委託費用

10万~20万円

10万~20万円

登録支援機関への
支援委託費用

24万~36万円(年間)

24万~36万円(年間)

在留期間更新申請
に関する委託費用

5万~15万円

5万~15万円

国外から呼び寄せた人材を採用する場合、フィリピンやベトナム、カンボジアやミャンマーの労働者に関しては、送り出し機関を通さなければならず、費用の支払いが発生します。
国内で人材紹介会社を利用する際には、成功報酬の支払いが必要です。
 
また、申告書類の作成を登録支援機関や行政書士に委託するとなると、初回の申請時と更新のたびに費用が発生します。
 
くわえて、登録支援機関の支援体制に関する基準を満たすための、支援業務を委託する場合は、雇用する外国人1人ごとに支援委託費用を支払います。
 
なお、上記の金額はあくまで概算であり、状況に応じて変動する点はご留意ください。

関連記事:特定技能外国人受け入れにかかる費用相場とコストダウンのポイント

特定技能1号「ビルクリーニング」を取得する方法

外国人労働者が特定技能1号のビルクリーニングを取得するには、次の方法が挙げられます。

方法① 試験に合格する

特定技能1号を取得する方法として、まずは「ビルクリーニング分野の特定技能1号評価試験」での合格が挙げられます。
試験の概要はのちほど解説しますが、特定技能1号を取得するには「ビルクリーニング分野特定技能業評価試験」と、日本語能力を判定するテストを受けなければなりません。
 
主な試験会場は日本ですが、ほかにもインドネシアやフィリピン、タイ、またカンボジアやミャンマーなどでも行われています。
 
なお、2023年7月に実施された試験の合格率は87.1%であり、しっかり勉強していれば合格できる内容だといえます。

方法② 技能実習2号「ビルクリーニング」からの移行

もう一つの方法は、ビルクリーニング分野の技能実習2号からの移行です。
 
技能実習2号とは、技能実習制度に基づき、一定の期間で技能実習を行い、要件を満たすことで得られる在留資格です。
名称は似ていますが、「特定技能2号」とは異なります。
 
外国人労働者は、技能実習2号を良好に修了していることと、技能実習の職種と特定技能1号の業務の関連性が認められた場合、技術実習から特定技能への移行が可能です。
この場合、特定技能1号評価試験は免除されます。

特定技能2号「ビルクリーニング」を取得する方法

特定技能2号を取得するには、特定技能1号の資格を得たうえで「ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験」または「技能検定1級」に合格する必要があります。
 
くわえて、特定技能2号では熟練した技術が求められるため、監督者や指導者として一定の実務経験を積まなければなりません。

ビルクリーニング分野特定技能1号の試験概要

特定技能「ビルクリーニング」の在留資格を得るには、「技能水準」と「日本語能力水準」の両方を満たさなければなりません。
 
「技能水準」は、公共社団法人 全国ビルメンテナンス協会が実施する「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」で判定されます。
一方「日本語能力水準」については、「国際交流基金日本語基礎テスト」か「日本語能力試験」のいずれかのテストで合格する必要があります。
 
なお、試験を受けるには、試験日に満17歳であることと、国内試験を受ける場合に限り、在留資格を有していなければなりません。
 
ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験の内容は、以下の表をご覧ください。
 
【ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験の内容】

試験科目

詳細

判断試験

・清掃に使用する用具や機材の写真から名称と一致するものを選ぶ
・清掃作業の順番について、正しい選択肢を選ぶ
・床みがきの作業動線について、正しい選択肢を選ぶ

作業試験

・床面の清掃作業
・ガラス面の清掃作業
・洋式大便器の清掃作業

試験の開催日は、厚生労働省と公共社団法人ビルメンテナンス協会が協議したうえで決定されます。
試験の日程は、公共社団法人ビルメンテナンス協会のホームページで確認できます。
また、定期試験を受けられない方のための出張試験も実施しているので、試験会場に赴くのが難しい場合は、そちらも活用したいところです。
 
日本語能力水準を測定する試験のうち「国際交流基金日本語基礎テスト」では、250点中200点以上で合格となります。
「日本語能力試験」の場合、「基本的な語彙や漢字で書かれた文章を読んで理解できる」レベルであるN4以上を獲得しなければなりません。

特定技能「ビルクリーニング」は人材不足を解決する手立て

いかがでしたでしょうか?
 
特定技能は、一定の技能と知識をもつ外国人に与えられる在留資格であり、特定の職種において、人材不足を解決する手立てとなる制度です。
深刻な人材不足に悩むビルクリーニング分野でも、ぜひ活用したいところです。
 
特定技能を有する外国人を雇用するには、いくつかの要件があるので、必要な手続きや各所への登録はできるだけ早めに済ませておきましょう。
 
スタッフ満足では、外国人の採用から定着までをワンストップでサポートします。
これまで1,000人以上の採用に貢献してきた知見を活かし、企業が抱える課題を解決しますので、人材不足にお悩みの清掃業者様はぜひ一度、お問い合わせください。

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