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特定技能で派遣は可能?条件や正社員との違い、費用相場を解説

繁忙期に人手がほしい業界にとって、通年雇用せずに外国人労働力を確保できないかという問いは切実です。「特定技能外国人は派遣形態でも利用できる」と聞いたものの、実際に制度上どう定められているのか、自社に適用できるのかがはっきりしないまま動けない状況は珍しくありません。

結論から述べると、特定技能外国人の雇用形態は直接雇用が原則です。ただし農業・漁業の2分野に限り、季節変動への対応を目的として例外的に派遣形態が認められています。

この記事では、派遣が許可される分野と許可されない分野の線引き、農業・漁業で派遣を利用する際の派遣元・派遣先それぞれの法定要件、農業・漁業以外の分野での直接雇用の進め方、および派遣と直接雇用の費用・手続きの違いを解説しています。自社の業種に応じた適法な採用手段を把握し、相談先の選定や直接雇用の検討へと迷わず進むための判断軸を以下で整理します。

※本記事は公開日時点の情報です。最新の情報は出入国在留管理庁など公的機関にてご確認ください。

目次[非表示]

  1. 特定技能は原則直接雇用
  2. 農業・漁業で派遣を使う場合の要件
  3. 14分野の直接雇用の進め方
  4. 派遣と直接雇用の違い
  5. まとめ:農業・漁業は派遣も選択肢に、他業種は直接雇用で採用を進めましょう
  6. よくある質問

特定技能は原則直接雇用

特定技能制度では、外国人を雇い入れる雇用形態について明確なルールが定められています。特定技能基準省令により、特定技能外国人は原則として直接雇用でなければなりません。

ただし、この原則には2つの分野に限った例外があります。農業と漁業です。それ以外の14分野はすべて直接雇用のみで、派遣形態での受け入れは認められていません。

派遣できるのは農業と漁業のみ

特定技能基準省令は、農業分野と漁業分野に限り例外的に派遣雇用を認めています。現時点で特定技能の対象となっている16分野のうち、派遣を選べるのはこの2分野だけです。

介護・宿泊・外食・飲食料品製造業・ビルクリーニング・建設・自動車運送業・工業製品製造業など、残る14分野はすべて直接雇用のみとなります。自社の業種がどの分野に該当するかを確認することが、採用手法を検討する最初のステップです。

「特定技能を派遣で受け入れられる」という情報を耳にした場合、それは農業・漁業分野に限った話です。農業・漁業以外の事業者が同じ形態で受け入れようとすると、法令違反となる可能性があります。

農業・漁業で派遣が認められた背景

農業分野で派遣が特例として認められたのは、農業の構造的な人手不足と繁閑差という2つの事情が背景にあります。

農業従事者数は2015年の175.7万人から2023年には116.4万人まで減少し、8年間で約59.3万人(33.7%)が離農しました。平均年齢は68.7歳に達しており、担い手の高齢化と後継者不在が深刻な状況にあります(農林水産省「在留資格『特定技能』について(農業分野)」)。

さらに農業は、作物の種類・作型・天候によって繁忙期と閑散期の差が大きく、通年雇用を前提とした直接雇用では繁忙期に十分な人材を確保しにくいという実態があります。果樹農家が収穫期に集中的に人手を必要とする場合や、複数の農場が時期をずらして人材を共有したい場合に、直接雇用の枠組みでは対応が難しい局面があります。

漁業も同様です。漁期・魚種・海域によって操業スケジュールが大きく変動するため、繁閑の差に合わせた柔軟な人員配置ができる派遣形態のニーズが高い分野です。これらの事情から、農業・漁業の2分野には直接雇用の原則に対する例外的な特例が設けられています(農林水産省「在留資格『特定技能』について(農業分野)」)。

農業・漁業で派遣を使う場合の要件

農業・漁業で派遣形態を選ぶ場合、派遣元となる組織について法令上の要件が定められています。一般の人材派遣会社が農業・漁業の特定技能外国人を派遣することは認められておらず、要件を満たした特定の組織のみが派遣元になれます。

派遣先となる農業・漁業事業者についても、受け入れ機関として共通の要件を満たす必要があります。以下で農業・漁業それぞれの要件と、両分野に共通する要件を整理します。

農業

農業分野の派遣元になれるのは、農業または農業関連業務を行う者であって、地方公共団体または農業関係者が資本金の過半数を出資している組織に限られます(特定技能基準省令)。

農業協同組合(JA)や農業者が組織する事業協同組合などが典型的な派遣元として想定されています。一般の人材派遣会社は、農業分野の特定技能外国人を派遣することができません。農業事業者が派遣での受け入れを検討する場合は、地域の農協や農業系組合への問い合わせが出発点となります。

農業分野の特定技能外国人が従事できる業務は、耕種農業全般(栽培管理・集出荷・選別等)と畜産農業全般(飼養管理・集出荷・選別等)に区分されています。なお耕種農業全般と畜産農業全般を同時に兼任させることはできないため、従事させる業務の区分を事前に確認しておきましょう(農林水産省「在留資格『特定技能』について(農業分野)」、出入国在留管理庁「農業分野」)。

漁業

漁業分野の派遣元になれるのは、漁業または漁業関連業務を行う者であって、地方公共団体または漁業者が資本金の過半数を出資している組織に限られます(特定技能基準省令)。農業分野と対称的な要件設計になっており、漁業協同組合や漁業生産組合などが派遣元の典型例です。

漁業分野の特定技能外国人が従事できる業務は、漁業(漁具の製作・修繕・水産動植物の採捕等)と養殖業(養殖資材の製作・修繕・養殖水産動植物の管理等)の2区分です。漁期に合わせた季節的な派遣として活用するケースが多くなっています(水産庁「在留資格『特定技能』による新たな外国人材の受入れ(漁業分野)」)。

共通する要件

農業・漁業いずれの分野においても、派遣先となる事業者(受け入れ機関)は特定技能共通の要件を満たす必要があります。

主な要件は以下のとおりです。

  • 法令遵守:労働関係法令・社会保険関連法令を遵守していること

  • 非自発的離職者なし:過去1年以内に日本人・外国人を問わず非自発的な離職者を発生させていないこと

  • 行方不明者なし:過去1年以内に行方不明の特定技能外国人を発生させていないこと

  • 協議会への加入:農業分野は農業特定技能協議会、漁業分野は漁業特定技能協議会への加入が必要

協議会への加入については、2024年6月15日以降に在留資格の申請を行う場合、申請前に加入を完了していることが条件とされています(出入国在留管理庁「農業分野」「漁業分野」)。

また、農業・漁業の派遣形態には労働者派遣法も適用されます。派遣契約の締結・管理台帳の整備・派遣元への通知など、労働者派遣法に基づく手続きが別途必要になります。農業・漁業固有の要件だけでなく、派遣法上の義務も並行して確認しましょう。

14分野の直接雇用の進め方

農業・漁業以外の14分野(介護・宿泊・外食・飲食料品製造業・ビルクリーニング・建設・自動車運送業・工業製品製造業など)では、直接雇用のみが選択肢です。この14分野で特定技能外国人を採用する場合、どのルートで進めるかによって費用・所要期間・手続きの負担が大きく変わります。

直接雇用で使える採用ルート

直接雇用の主な採用ルートは4つに整理できます。自社の状況(初めての採用か・在籍中の技能実習生がいるか等)に応じて最適なルートを選ぶことが、コストと時間を抑えるポイントです。

① 人材紹介会社経由(国内求人)

国内に在住している外国人(留学生からの変更・既存在留者など)を紹介するルートです。初期費用は50〜120万円程度が業界相場とされており、就労開始まで比較的早期に進められるのが特徴です。

② 海外からの現地採用

特定技能試験に合格した外国人を海外から呼び寄せるルートです。初期費用は70〜200万円以上になるケースが多く、就労開始まで4〜6ヶ月程度を見込む必要があります。言語・文化的な背景が均質な人材を採用しやすい利点がある一方、来日後の生活サポートを計画的に準備する必要があります。

③ 国内在住外国人の採用(在留資格変更)

留学・技術・人文知識・国際業務など他の在留資格で日本に在住している外国人の在留資格を変更して採用するルートです。特定技能の試験要件を満たしている候補者であれば比較的短期間で採用できる場合があります。

④ 技能実習2号修了者からの移行

自社または他社で技能実習2号を修了した人材を特定技能1号に移行するルートです。技能実習2号を良好に修了した場合、特定技能1号の技術試験・日本語試験が免除されます。試験対策の期間が不要なため、初期費用は15〜30万円程度に抑えられるケースが多く、4つのルートの中でコストが最も低くなりやすいルートです。

ただし、このルートについては制度変更への理解が欠かせません。次のH3で詳しく説明します。

技能実習移行ルートと育成就労への切り替わり

技能実習2号修了者の特定技能への移行は、費用を抑えられる有力なルートです。現在、自社に技能実習生が在籍している企業にとっては、引き続き活用できる手段として機能します。

しかし、技能実習制度は2026年12月31日で新規入国が終了し、2027年4月1日から育成就労制度へ全面移行します(2024年改正、出入国在留管理庁「育成就労」)。これからの新規採用計画を技能実習の受け入れを前提に立てることは、制度の廃止スケジュールと合わない計画になります。

育成就労制度では、制度目的が「国際貢献」から「人材育成・人材確保」に変わり、一定要件のもとで転籍も可能になります。農業・漁業の派遣特例も育成就労に引き継がれる見通しです。

在籍中の技能実習生を特定技能へ移行させる計画は現行の枠組みで進められますが、新規採用の中長期計画については育成就労制度を踏まえた設計に切り替えましょう。

関連記事: 【27年4月施行】育成就労制度とは?技能実習との違いや企業が準備すべきことを解説

派遣と直接雇用の違い

農業・漁業事業者が派遣と直接雇用を比較する際、費用・手続きの負担・繁閑への対応柔軟性の3点が主な判断軸になります。一方で、在留期間については雇用形態によらず特定技能1号は通算最長5年という共通のルールがあります。

農業分野については、繁忙期に就労して閑散期に一時帰国するサイクルを繰り返す運用を行うことで、入国後最長10年間の在留が可能になる運用があります。

費用・コストの比較

直接雇用の場合、採用にかかる初期費用は国内採用で50〜120万円、海外採用では70〜200万円以上が目安です。

就労後には登録支援機関への委託料が毎月発生し、業界平均は月額28,386円(令和4年・出入国在留管理庁「特定技能外国人の受入れに関する実態調査(令和4年)」)となっています。

登録支援機関を選ぶ際は月額費用の差が年間コストに直結します。支援内容と費用のバランスを確認した上で委託先を選ぶことが、採用後の固定費を抑えるポイントです。

農業・漁業の派遣形態を選んだ場合、支援義務は派遣元が担うため、受け入れ先が登録支援機関へ委託料を支払う必要はありません。そのかわり、派遣元に対して派遣料金(時間単価等)の支払いが発生します。

繁忙期のみ利用する場合は年間の就労時間と派遣単価をもとにトータルコストを試算し、直接雇用の場合と比較した上で選択することが現実的です。

手続きや流れの比較

直接雇用を選んだ場合、受け入れ企業が担う手続きは複数あります。雇用契約の締結・1号支援計画の策定・特定技能協議会への加入・在留資格申請・定期面談(3ヶ月ごと)・定期届出(年1回)が主な対応事項です。

2025年4月施行の省令改正により、受け入れ機関の定期届出が年4回から年1回に簡素化されており、手続き負担は以前と比べて軽減されています(出入国在留管理庁「令和7年4月1日施行の省令改正について」)。

農業・漁業の派遣形態を選んだ場合、外国人への支援義務(定期面談・生活サポート等の1号支援10項目)は派遣元が負うため、受け入れ先(農業・漁業事業者)の手続き負担は直接雇用より少なくなります。ただし、派遣元の要件確認・派遣契約の締結・労働者派遣法に基づく管理台帳の整備は別途必要です。

海外から直接採用する場合は、選考・採用決定から就労開始まで4〜6ヶ月程度がかかります。繁忙期に合わせて人材を確保したい場合は、逆算したスケジュールで早めに動き出すことで、受け入れの準備が整います。

まとめ:農業・漁業は派遣も選択肢に、他業種は直接雇用で採用を進めましょう

特定技能外国人の派遣受け入れが認められているのは農業と漁業の2分野のみで、残る14分野はすべて直接雇用が原則です。農業・漁業事業者は、要件を満たした派遣元組織(農協・漁協等)を通じた派遣形態と直接雇用を、繁閑の波や年間コストをもとに比較しながら選択できます。

介護・外食・宿泊など14分野の事業者は直接雇用のみが選択肢です。技能実習2号修了者からの移行は費用を抑えやすい有力ルートですが、2027年4月の育成就労制度への全面移行を見据えた採用設計が求められます。

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よくある質問

Q. 農業・漁業以外の分野で、どうしても派遣形態で採用したい場合はどうすればよいですか?

農業・漁業以外の14分野は制度上、派遣での受け入れが認められていません。直接雇用での採用となるため、人材紹介会社や登録支援機関を活用して手続きを進めることになります。

Q. 農業分野で派遣会社を探す場合、どこに問い合わせればよいですか?

農業分野の派遣元は「地方公共団体または農業関係者が過半数出資の農業関連事業者」に限定されています。JAや農業協同組合、農林水産省の窓口に相談するのが一般的なルートです。

Q. 農業・漁業で派遣を利用した場合、登録支援機関は必要ですか?

派遣形態の場合、派遣元が支援計画の作成・実施を担います。登録支援機関への委託義務は派遣元に生じるため、派遣先(受け入れ企業)が直接契約する必要はありません。

Q. 直接雇用で採用する場合、法違反リスクを避けるために特に注意すべき点は何ですか?

在留資格の活動範囲を超えた業務をさせると不法就労に該当します。採用前に従事させる業務が特定技能1号の対象業務に含まれるか確認し、雇用契約書と在留資格の整合性を保つことが求められます。

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