
ホテル業界の人手不足は外国人雇用で解決!宿泊業対応の在留資格は?
日本の産業の中には、働き手の不足に悩まされているものがあります。
ホテル業界もその一つです。
そこで、外国人雇用を検討している企業の担当者さまもいるのではないでしょうか。
本記事では「人手不足解消のため外国人を雇用したい」といった方のため、ホテル業界の現状や外国人が就労できるホテル業界の職種などを紹介します。
この記事を読むことにより、ホテル業界では外国人雇用をどのような形で人手不足の解消につなげていけばいいのかがわかるようになるので、ぜひご覧ください。
目次[非表示]
- 1.ホテル業界の現状
- 1.1.需要増加に伴いホテルの数が不足している
- 1.2.人手不足による影響
- 2.ホテル業界の人材不足が深刻化した背景
- 2.1.ホテルの新規出店・開業件数の増加
- 2.2.観光や宿泊の需要回復
- 2.3.離職率が高い
- 2.4.コロナ禍による人材流出
- 3.ホテル業界が人手不足に陥っている要因
- 3.1.給与水準が低い
- 3.2.休暇日数が少ない
- 3.3.拘束時間の長さと不規則な労働時間
- 3.4.コロナでの人員削減による人手不足に対して利用者が急激に増加している
- 4.ホテル業界の人手不足を解消する方法
- 4.1.外国人を採用する
- 4.2.雇用条件や労働環境の見直し
- 4.3.人材採用の強化
- 4.4.ITによる業務効率化を図る
- 4.5.教育や研修制度の導入
- 5.宿泊業における在留資格とは
- 5.1.特定技能
- 5.2.技術・人文知識・国際業務
- 5.3.「技術・人文知識・国際業務」の審査基準
- 5.4.身分系の在留資格
- 5.5.資格外活動許可
- 6.外国人が就労できるホテル業界の職種
- 7.ホテル業界において外国人を雇用するメリット
- 8.ホテル業界において外国人を雇用する場合の注意点
- 9.ホテル業界において外国人を雇用する場合の募集方法
- 10.ホテル・旅館の外国人採用事例
- 10.1.株式会社油谷湾温泉ホテル楊貴館様
- 10.2.大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社様
- 11.特定技能外国人を活用してホテルの人手不足を解消
ホテル業界の現状
「一般職業紹介(令和7年3月分)」によると、ホテル業界を含む「接客・給仕職業従事者」と「職業計」の有効求人倍率は以下のとおりです。
対象 |
有効求人倍率 |
接客・給仕職業従事者 常用(パート含む) |
2.82 |
職業計 常用(パート含む) |
1.16 |
接客・給仕職業従事者 常用(除パート) |
1.98 |
職業計 常用(除パート) |
1.24 |
常用(パート含む)および常用(除パート)いずれも対前年同月比では改善傾向にあるものの、人手不足の状況は依然として続いています。
参考:(pdf)厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年3月分及び令和6年度分)について」
同様の傾向は「人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月)」でも確認できます。
同資料によると、旅館・ホテル業界に属する企業の半数以上が人手不足を感じています。
【人手不足を感じているホテル・旅館の割合】
|
正社員は業界別で上から10番目、非正社員は業界別で上から7番目の値です。
多くの企業が、人手不足に直面していると考えられます。
参考:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月)」
需要増加に伴いホテルの数が不足している
以前と比べて国際化が進んでおり、日本を訪れる外国人の数が増えています。
アフターコロナへ突入したこともあり、今後さらに日本を訪れる観光客は増えていくことでしょう。
観光地の中には、日本人と比較して圧倒的に外国人の数が多いところもあるほどです。
これに伴い、ホテルの不足が問題になってきました。
増え続ける外国人を受け入れるのに必要なホテルが不足している状況ではありますが、ホテルの建設には莫大なコストがかかることもあり、なかなか簡単に新規建築はできません。
今後、増えることが予想されている外国人観光客に対応するため、ホテルの数が増えていく可能性はありますが、今すぐに対応することは難しい状況です。
人手不足による影響
人手不足は、ホテルの経営にさまざまな影響を与えます。
想定される主な影響は以下のとおりです。
【人手不足の影響】
|
オレンジページnetが発表している資料によると、全体の93.3%の方が「宿泊施設を選ぶときに口コミサイトやランキングサイトを参考にする(参考にする42.9%、参考にするときもある50.4%)と回答しています。
調査の対象は、直近3年間で年1回程度以上宿泊を伴う国内旅行をしたユーザー924人です。
また、人手不足が原因で営業が困難になることもあります。
ホテル経営において看過できない深刻な課題とされています。
参考:オレンジページnet
ホテル業界の人材不足が深刻化した背景
ホテル業界で人手不足が続いている背景として以下の点があげられます。
ホテルの新規出店・開業件数の増加
ホテルや旅館の増加が、人手不足に影響を与えていると考えられています。
「令和5年度衛生行政報告例の概況」によると、施設数の年次推移は次のとおりです。
分類 |
2019年 |
2020年 |
2021年 |
2022年 |
2023年 |
旅館・ホテル |
51,004 |
50,703 |
50,523 |
50,321 |
51,038 |
コロナ禍、東京オリンピック後は減少傾向でしたが、2023年から増加に転じています。
採用競争の激化が、人手不足に影響していると考えられているのです。
参考:(pdf)厚生労働省「令和5年度衛生行政報告例の概況」
観光や宿泊の需要回復
観光および宿泊需要の回復も、人手不足の要因の一つとされています。
宿泊統計調査によると、2019年~2024年における延べ宿泊者数の推移は以下のとおりです。
時期 |
延べ宿泊者数 |
うち日本人 |
うち外国人 |
2019年 |
595,921,480人泊 |
480,265,130人泊 |
115,656,350人泊 |
2020年 |
331,654,060人泊 |
311,308,880人泊 |
20,345,180人泊 |
2021年 |
317,773,850人泊 |
313,456,710人泊 |
4,317,140人泊 |
2022年 |
450,458,460人泊 |
433,955,540人泊 |
16,502,920人泊 |
2023年 |
617,474,940人泊 |
499,723,490人泊 |
117,751,450人泊 |
2024年 |
650,275,390人泊 |
486,676,400人泊 |
163,598,990人泊 |
2023年時点で、コロナ禍前の延べ宿泊者数を上回っています。
近年は、外国人宿泊者数の増加が著しくなっています。
全体の宿泊者数 |
うち日本人 |
うち外国人 |
|
2025年2月 |
4,793万人泊 |
3,417万人泊 |
1,376万人泊 |
前年同月比 |
+0.2% |
-5.9% |
+19.5% |
需要増に対応するため、スタッフを採用しているホテルが多いと考えられます。
参考:(pdf)観光庁「2025年(令和7年)2月分(第2次速報値)報道発表資料」
離職率が高い
離職率の高さも、人手不足の慢性化を招いている要因の一つと考えられます。
「令和6年上半期雇用動向調査結果の概況」によると、宿泊業・飲食サービス業の離職率は以下のとおりです。
【宿泊業・飲食サービス業の離職率】
|
一般労働者、パートタイム労働者とも、全産業で最も高い値です。
積極的に採用活動を行っても、離職者が多いため、人手不足の解消が進みにくい状況にあります。
参考:(pdf)厚生労働省「令和6年上半期雇用動向調査結果の概況」
コロナ禍による人材流出
コロナ禍で人員を削減した影響も残っています。
2019年末と2022年末の比較で、総従業員数が減少した企業(宿泊業)の割合は6割に及びます。
人手不足の傾向はやや緩和しているものの、依然として根本的な解決には至っていません。
分類 |
2023年1月時点の人手不足の割合 |
2025年1月時点の人手不足の割合 |
正社員 |
77.8% |
60.2% |
非正社員 |
81.1% |
50.0% |
人手不足は、ホテル業界が継続的に取り組むべき重要課題です。
【参考元】
PRTIMES「宿泊業の6割 人手「戻らず」コロナ禍で雇用減の影響残る 非正社員、企業の1割が減少幅「5割超」」
帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月)」
ホテル業界が人手不足に陥っている要因
ホテル業界で人手不足の状態に陥っている要因を深掘りしていきます。
大きな原因は、利用者の急増、賃金の低さ、休暇日数の少なさの3つです。
給与水準が低い
人手不足の原因として、ホテル業界の給与水準が低いことがあげられます。
「令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況」によると宿泊業・飲食サービス業の賃金は269,500円(男女計・年齢計)です。
この水準は、全産業中で最も低い水準とされています。
参考に、全産業で最も高い電気・ガス・熱供給・水道業と比較します。
産業 |
賃金 |
年齢 |
勤続年数 |
宿泊業・飲食サービス業 |
269,500円 |
43.5歳 |
18.2年 |
電気・ガス・熱供給・水道業 |
437,500円 |
42.8歳 |
9.4年 |
採用活動における競合他社は、ホテル業界に属する企業だけではありません。
業界全体の給与水準が低いと、求職者から選ばれにくくなります。
参考:(pdf)厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
休暇日数が少ない
休暇の取得が困難な点も、人手不足の継続につながっている要因の一つとされています。
「就労条件総合調査」によると、2020年における適用労働者1人平均年間休日総数は以下のとおりです。
産業 |
適用労働者1人平均年間休日総数 |
調査産業計 |
116.0日 |
宿泊業・飲食サービス業 |
103.9日 |
宿泊業・飲食サービス業の年間休日数は、全産業平均よりも約12日少ない水準です。
また、ホテル業界は、年次有給休暇日数も少ないうえ、取得しづらい環境にあるとされています。
「令和6年就労条件総合調査 結果の概況」によると、年次有給休暇の取得状況は以下のとおりです。
産業 |
労働者1人平均付与日数 |
労働者1人平均取得日数 |
労働者1人平均取得率 |
調査計 |
16.9日 |
11.0日 |
65.3% |
宿泊業・飲食サービス業 |
11.6日 |
5.9日 |
51.0% |
平均付与日数、平均取得日数、平均取得率のいずれもが、全産業中で最低水準にとどまっています。
【参考元】
e-Stat政府統計の総合窓口「就労条件総合調査 産業・企業規模、年間休日総数階級別適用労働者割合及び適用労働者1人平均年間休日総数」
(pdf)厚生労働省「令和6年就労条件総合調査 結果の概況」
拘束時間の長さと不規則な労働時間
拘束時間の長さも、人手不足の慢性化を招く要因の一つとされています。
「毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報」によると、一般労働者における宿泊業・飲食サービス業の月間実労働時間と出勤日数は次のとおりです。
産業 |
総実労働時間 |
うち所定内労働時間 |
うち所定外労働時間 |
出勤日数 |
調査産業計 |
162.2時間 |
148.7時間 |
13.5時間 |
19.4日 |
宿泊業・飲食サービス業 |
173.6時間 |
158.1時間 |
15.5時間 |
20.2日 |
夜勤や中抜けがあるなど、労働時間が不規則になりやすい点もポイントです。
ワークライフバランスの確保が難しく、従業員の定着率に影響を与えるとされています。
参考:(pdf)厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報」
コロナでの人員削減による人手不足に対して利用者が急激に増加している
新型コロナウイルスが流行していた頃は、日本を訪れる外国人が大幅に少なくなりました。
日本政府観光局(JNTO)発表のデータを見てみると、コロナ禍が始まった2020年の訪日外客数(総数)は4,115,828人であり、翌年の2021年は245,862人まで落ち込んでいます。
それが2023年は25,066,350人まで増加しました。
コロナ流行前の2019年を見てみると31,882,049人だったのですが、2024年はこの数を上回る外国人が日本を訪れる可能性も十分にあります。[2]
その結果、問題が大きくなっているのがホテルの不足です。
従業員の不足も関係して多くのホテルでは利用者の急増に対応するのが難しくなっています。
実際に、帝国データバンクによると正社員の人手不足割合(上位10業種)のうち、旅館・ホテルは上から3番目に正社員の人手が不足している状況です。
【参考元】
日本政府観光局(JNTO): 訪日外客統計
株式会社帝国データバンク:人手不足に対する企業の動向調査(2024 年 1 月)
ホテル業界の人手不足を解消する方法
ホテル業界の人手不足を解消するための方法は、いくつかあります。
ここでは、特におすすめの方法を4つ紹介します。
外国人を採用する
積極的に検討したい対策として、外国人材の採用があげられます。
ただし、誰でも無条件に採用できるわけではありません。
日本で働くため、外国人は在留資格を求められます。
関連記事:外国人採用の方法や手順を徹底解説!必要な手続きや注意点も確認
特定技能とは
外務省は、在留資格を以下のように定義しています。
外国人が日本で行うことができる活動等を類型化したもの
引用:外務省「制度の概要」
上記のとおり、在留資格は複数の種類に分類されています。
ホテル業界の人手不足解消に貢献するとされるのが、在留資格「特定技能」です。
特定技能は、人手不足が深刻化している産業分野(=特定産業分野)で、一定の専門性・技能を有する外国人労働者を受け入れる在留資格と説明できます。
相当程度の知識・経験を要する業務に従事する特定技能1号、熟練した技能を要する業務に従事する特定技能2号に分類されます。
特定技能の在留資格を取得するため、外国人労働者は産業別の試験と日本語試験(特定技能2号は除く)に合格する必要があります。
特定技能1号の在留期間は通算5年が上限、特定技能2号の在留期間に上限はありません。
所定の要件を満たした場合、長期的な雇用が可能となります。
対応可能な業務領域
特定技能で従事できる産業分野は、介護、ビルクリーニング、建設など、16種類です(特定技能1号は11分野)。
ホテル業界に適した産業分野として以下のものがあげられます。
ホテル業界に適した産業分野 |
従事する主な業務の内容 |
特定技能「宿泊」 |
フロント業務、企画・広報業務、接客業務、レストランサービス業務 |
特定技能「ビルクリーニング」 |
清掃業務、清潔さを維持する業務(多数の者が出入りする建物の内部が対象)、客室清掃業務 |
特定技能「外食業」(一定の要件を満たす場合) |
飲食物の調理、接客、店舗管理 |
受け入れ予定の産業分野に応じて、適切な特定技能の在留資格を取得することが重要です。
外国人の採用なら業界最安級の低価格の『スタッフ満足』
特定技能外国人の採用を検討している方は、スーパーホテルグループの『スタッフ満足』にご相談ください。
人材紹介料は1名あたり30万円~、登録支援機関の業務委託料は1名あたり月額16,000円〜です(特定技能外国人を受け入れる企業は、登録支援業務の実施を義務づけられています。支援は登録支援機関に委託できます。)
業界内でも低価格帯で、人材紹介から定着までサポートしています。
採用したスタッフが1年以内に退職した場合、新たなスタッフを無料で紹介する点も特徴です。
雇用条件や労働環境の見直し
就労条件を見直すことも重要です。
条件が悪いと、応募者が集まりにくくなり、採用後すぐに退職する人が出る恐れがあります。
見直しの主なポイントは以下のとおりです。
【見直しのポイント】
|
可能な範囲から取り組むことが重要です。
たとえば、年間休日を増やせないのであれば、土日を交代で休めるようにする、固定シフト制に変更して休みを取りやすくするなどの方法が考えられます。
人材採用の強化
人材採用を積極的に行うことで、人手不足の解消が期待できます。
転職エージェントを活用する、リファラル採用を導入するなど、新たな採用手法を取り入れるとよいでしょう。
あるいは、未経験者まで採用対象を広げるとも検討できます。
上記の取り組みなどを行うことで、これまで接点のなかった求職者とも出会う機会が増えるでしょう。
ITによる業務効率化を図る
DX化による生産性の向上も人手不足対策になりえます。
生産性が高まると、業務に必要な人員が減少するためです。
具体的な取り組みとして、RPAを導入して予約管理業務を自動化する、ロボットを活用して清掃業務を省力化するなどがあげられます。
DX化の推進は、人手不足の解消だけでなく、労働環境の改善にも有効です。
福利厚生の充実度を高める
従業員の満足度を高めるためには、福利厚生を充実させることが欠かせません。
例えば、家賃補助や食事補助など、できる範囲内で取り組んでいきましょう。
ホテルの従業員は過酷な労働環境になることが多いので、宿泊施設利用の優待など、日々の疲れを癒せるような福利厚生を充実させるのもおすすめです。
教育や研修制度の導入
教育・研修制度の導入も、検討したい対策といえます。
以下のメリットを期待できるためです。
【見直しのポイント】
|
業界未経験者の採用もしやすくなります。
教育・研修制度を充実させれば、人手不足を解消しやすくなるでしょう。
宿泊業における在留資格とは
外国人の採用を検討しているのであれば、日本で働くことが認められている在留資格を持つ外国人を採用しなければなりません。
日本では、特定技能や技術・人文知識・国際業務、身分系の在留資格、資格外活動許可などの在留資格で働くことが認められます。
それぞれ解説します。
特定技能
特定技能は2019年から始まった制度で、日本で採用活動を行っても十分な人員を確保できない産業分野で認められている在留資格です。
2025年5月時点では16の分野で認められており、そのうちの一つに「宿泊」が含まれています。
条件を満たせば、永住権の取得要件に合致する可能性があります。
特定技能には1号と2号があり、1号の在留資格では最長5年までしか働けません。
ただし、経験を積んで2号に移行できれば、在留資格の更新制限はなくなります。
自社で長く働いてくれる人材を探している場合にも向いているでしょう。
業務内容
特定技能外国人が対応可能な業務内容の一例は、以下の通りです。
【任せられる業務の一例】
|
ポイントとして、旅館やホテル内における販売や備品の点検・交換なども関連業務として対応可能です。
付随的な業務として従事する場合に限り、清掃やベッドメイキングなどの単純労働も認められます。
付随的な業務とは、基本となる業務を行う上で必要となる補助的な作業・関連業務のことです。
そのため、清掃のみ、ベッドメイキングのみといった形で業務を行わせることはできません。
なお、清掃業務を基本業務として任せたいと考えた場合は、「ビルクリーニング」分野の特定技能が対象となることがあるため、事前に確認しておくことが重要です。
報酬
特定技能外国人に支払うべき報酬の基準は、日本人が同様の仕事に従事した場合に受ける報酬と同額以上であることです。
日本人より安く雇用できて人件費を抑えられる制度ではないため、注意しておきましょう。
技術・人文知識・国際業務
技術・人文知識・国際業務とは、外国人が日本において専門性の高い業務に就くために設けられている在留資格で「技人国ビザ」とも呼ばれるものです。
学業や職務を通じて得た知識・経験、または母国の文化・言語に関連する業務に従事する場合に限り、旅館やホテルなどで働くことも認められます。
「技術・人文知識・国際業務」の審査基準
技術・人文知識・国際業務の在留資格が認められるためには審査があり、従事する業務内容と学歴・職歴、報酬が審査されることになります。
以下をすべて満たさなければなりません。
業務内容
フロント業務を任せる場合、外国人の対応が業務に含まれていなければなりません。
そのため、各国人宿泊者がほとんどいないホテルでは認められない可能性が高いといえるでしょう。
また、宿泊客と同じ言語を話せることが求められるため、言語面にも留意する必要があります。
採用した外国人の母国語と、ホテルの宿泊客のほとんどの母国語が異なる場合は不許可となる恐れがあります。
それから、経理や営業といったオフィスワーク業務を任せることもできます。
ただし、特定技能と異なりベッドメイキングやレストランの配膳や清掃などの単純労働はできません。
従事させようとする業務が単純労働に該当しないかを事前に確認することが重要です。
学歴・職歴
学歴としては、日本か外国の大学・専門学校を卒業したうえで従事する業務内容と関連性のある教育を受けていなければなりません。
日本か外国の大学・専門学校を卒業していない場合であっても、宿泊業で正社員として10年以上の勤務経験を持つ外国人であれば、申請が可能となります。
報酬
報酬については特定技能外国人と同様で、同じ仕事を行う日本人と同等以上の報酬を受けなければなりません。
もし、在留資格の許可を得てから日本人よりも安く雇用していたことが判明した場合、合理的な理由が認められなければ不許可となる可能性があります。
身分系の在留資格
身分系の在留資格には、以下のようなものがあります。
在留資格 |
身分・該当例 |
永住者 |
法務大臣によって永住が認められた者 |
日本人の配偶者等 |
日本人の配偶者・子・特別養子 |
永住者の配偶者等 |
永住者・特別永住者の配偶者や日本で生まれ引き続き在留している子 |
定住者 |
第三国定住難民・日系3世・中国残留邦人など法務大臣が特別な理由を考慮し、一定の在留期間を指定して居住を認めた者 |
これらの在留資格には就労時間に制限がありません。
正社員に加えて、アルバイトとしてもホテルで勤務できます。
資格外活動許可
在留資格ごとに、認められる活動の範囲が定められています。
本来留学生の在留資格は勉強目的としていることから、就労は原則として認められていません。
資格外活動許可とは、日本にいる留学生などがアルバイトを行うために申請する制度です。
ただし、1週間あたりの労働時間は28時間以内に制限されているため、注意が必要です。
この範囲内であれば業務内容に大きな制限はないため、人手不足の深刻度が低い場合の対応策として検討できます。
外国人が就労できるホテル業界の職種
一口にホテル業界といっても、さまざまな職種があります。
外国人を雇用する場合は、任せたい職種に合った在留資格を所有している人物を採用しなければなりません。
ホテル業界で従事できる在留資格と、その在留資格で任せられる職種としては、以下のようなものがあります。
在留資格 |
技術・人文知識・国際業務 |
特定技能「宿泊」 |
特定技能「外食」 |
特定技能「ビルクリーニング」 |
職種 |
外国人宿泊客が く訪れるホテルのフロント業務やホ テルレストランの サービス業務 |
フロントや企 画・広報、接 客・レストラ ンサービスの 提供などのうち、調理以外の業務 |
ホテル内にあるレ ストランでのサー ビス業務や調理、調理補助関連業務 |
ホテルでの客室 清掃やベッドメ イキング |
特定技能「宿泊業」のほか、レストラン業務における「外食」、客室清掃における「ビルクリーング」のように、宿泊業以外の職種であっても特定技能として働くことが可能です。
特定技能「外食」を取得すると、ホテルのレストランで調理補助や配膳といった業務に就くことができるようになります。
さらに、接客や店舗管理などにも対応可能です。
また、ベッドメイキングを任せたいと考えた場合、特定技能「宿泊」では他の業務に付随する形でベッドメイキングを任せられます。
そのため、ベッドメイキング業務のみに従事することはできません。
ベッドメイキングや清掃業務を専門的に任せたいと考えているのであれば、特定技能「ビルクリーニング」を取得している外国人を採用しましょう。
このように、ホテルの中でもどのような業務を任せたいのかによって適した在留資格が変わってくるので、よく確認しておく必要があります。
ホテル業界において外国人を雇用するメリット
ホテル業界で外国人を雇用するメリットは、人手不足の改善と外国人利用者への対応力が上がることです。
それぞれ解説します。
メリット① 人手不足の改善につながる
日本人のみに限定して求人を出すよりも、外国人も含めて募集した方が求職者の母数が拡大します。
これにより、なかなか日本人従業員が増やせず苦戦していた企業でも人手不足の改善につなげやすくなるのがメリットです。
紹介したように、日本のホテル業界は労働内容が過酷、低賃金、十分な休暇が取れないなどの理由から離職が多い状況となっています。
新規に人員を確保するのが難しくなっていますが、外国人の中には日本の観光・宿泊業界で働きたいと強い意志を持っている方も多いです。
そういった方を採用し、人手不足の改善につなげましょう。
メリット② 外国人利用者への対応が柔軟になる
日本を訪れる外国人の数が増えており、ホテル業界ではこれまで以上に外国人利用者への対応が求められるようになりました。
外国人を採用することにより、英語や、その他の言語に対応しやすいのも大きなメリットです。
外国人の中には、2ヶ国語以上話せる方もいるので、対応できる言語が増えればそれをホテルの強みにもできるでしょう。
ホテルに宿泊する外国人から見ても、何か困ったことがあった時に母国語で相談できるスタッフがいると心強いです。
ホテル業界において外国人を雇用する場合の注意点
ホテル業界で外国人を雇用することを検討しているのであれば、先に注意点から確認しておくと良いでしょう。
特に注意すべきポイントは以下の3つです。
雇用予定の外国人が不法就労にならないかを確認する
大前提として、雇用できるのは日本での就労が認められている外国人のみです。
例えば、就労が認められていない在留資格で日本に滞在している方や、すでに認められている在留期限が切れている方などを採用することはできません。
こういった方を採用・雇用すると不法就労の扱いとなってしまいます。
不法就労で処罰の対象となるのは、当該外国人だけではありません。
採用した企業も不法就労助長罪の対象となります。
罰則は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金又はその両方です。
外国人に就労ビザを取得していることを確認したものの、実際は働くことが認められていない外国人だったといったケースもあります。
こういった場合でも、企業側に在留カードの確認をしていない等の過失があると認められた場合は処罰の対象となるので、十分注意が必要です。
在留資格である就労ビザを取得していたとしても、その就労ビザで認められていない業務を担当する場合は同様に不法就労となります。
無意識のうちに不法就労になるのを避けるためにも、当該外国人が取得している在留資格でできること、できないことを明確に理解しておかなければなりません。
外国人自身も理解できていないケースがあるため、注意しましょう。
「外国人を雇用する場合は、日本人と比較して低めの賃金で良い」との認識を持っている方もいますが、これは誤っています。
雇用条件は、日本人と同等以上に設定しなければなりません。
雇用条件を日本人と同等以上に設定する
「日本人と同等以上」であり、最低賃金ではありません。
これは、同じ職場で同じ作業をする日本人と同様の金額設定を意味しています。
また、その他の雇用条件などに関しても日本人と同等以上にしましょう。
守らなかった場合、その在留資格が認められなくなってしまう可能性があるため、注意が必要です。
外国人労働者が働きやすい環境を整える
外国人に限ったことではありませんが、誰しも働きやすい環境の職場が良いと考えているので、職場の環境づくりは非常に重要です。
母国を離れて日本で働く外国人は、さまざまな不安や悩み、暮らしにくさを感じています。
日本ならではの文化や習慣、言葉が通じない問題などに悩んでいる方も多いです。
あまりにもホテルの労働環境が整っていない場合は、他社に転職されてしまう可能性もゼロではありません。
優秀な人材を採用できても転職されてしまえば採用にかかったコストだけが高くついてしまうことになるので、注意が必要です。
例えば、日本に早く馴染めるように、日本人との交流の機会を作るのも良いでしょう。
パーソナル総合研究所が行った調査によると、正社員として働く外国人のうち、32.6%が「私は孤立しているように思う」と感じています。
職場で孤立していれば、楽しく業務を行うことはできません。
また、正社員の外国人材が抱える職場の不満をみてみると、上位3つは「昇進・昇格が遅い」「給料が上がらない」「給料が安い」でした。
特に給与に関する不満を抱えている方が多いとわかります。[5]
働きやすい環境を整える上で、外国人労働者に対する給与設定は慎重に検討しましょう。
ホテル業界は総合的に人手が不足していることもあり、好条件の給与設定が可能な大企業がたくさんの外国人を集めてしまうこともあります。
給与面で大企業ほどの好条件が整えられないとしても、工夫次第で外国人にとって働きやすい職場にすることは可能です。
実際に外国人を雇用した後は、何か困っていることがないか、どのようなサポートが必要かなどもよく確認しながら支援を続けていきましょう。
参考:パーソル総合研究所:日本で働く外国人材の就業実態・意識調査
ホテル業界において外国人を雇用する場合の募集方法
ホテル業界で外国人を雇用したいと考えた際、どのようにして募集すれば良いのでしょうか。
代表的な方法として、以下のようなものが挙げられます。
【募集の方法】
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公的機関を利用する方法としては、無料で求人の掲載が可能なハローワークがあります。
特に初めて外国人を雇用する際はわからないことが多々ありますが、ハローワークでは労働契約の注意点や教育の仕方などのアドバイスを受けることも可能です。
また、東京都名古屋、大阪、福岡には外国人雇用サービスセンターと呼ばれるものが設置されています。
高度外国人に対する職業相談・職業紹介や、外国人を雇用する事業主への雇用管理に関する指導・援助などが受けられるので、こちらもおすすめです。
さらに幅広く求人情報を出したいのであれば、求人専門のWebサイトを活用する方法が向いているでしょう。
中には、外国人を専門的に探せるサービスもあります。
新卒の外国人雇用を目指しているのであれば、専門学校での募集も効果的です。
特にトラベル関係の専門学校であればホテルで働くのに必要な知識や技術を身に付けている可能性があります。
また、採用の質にこだわりたい場合はエージェントサービスを利用するのも良いでしょう。
外国人採用がホテル業界における人手不足解決の鍵になる可能性を紹介してきましたが、外国人であれば誰でも良いわけではありません。
採用できても自社のニーズに全く合っていない人材だと、予定していた業務を任せられない可能性もあります。
エージェントサービスは各社のニーズに合わせて人材の紹介を行っているので、自社に適した人材を採用しやすくなるはずです。
このように、募集方法にはさまざまな種類があります。
いくつか組み合わせて募集を行うのもおすすめです。
ホテル・旅館の外国人採用事例
続いて、外国人を採用したホテル・旅館の事例を紹介します。
株式会社油谷湾温泉ホテル楊貴館様
風光明媚なエリアに位置するため、日本人スタッフを容易に確保できない課題を抱えていました。
解決策として選んだのが『スタッフ満足』を利用した特定技能外国人の採用です。
『スタッフ満足』を選んだ理由として、家具の使い方を説明するなど、外国人スタッフへのサポートが充実していたことがあげられます。
日本での生活について説明する手間が省けるため、入社後すぐに業務に集中できます。
特定技能外国人の真面目な姿勢、真心を込めた対応は、スタッフだけでなくお客様からも好評です。
株式会社油谷湾温泉ホテル楊貴館様の事例詳細【インタビュー動画付】
大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社様
大江戸温泉物語 Premium伊勢志摩では、5人の外国人スタッフが働いています(2023年3月時点)。
特定技能外国人を採用した理由は、立地の問題で日本人スタッフの採用に苦戦していたためです。
採用選考では、外国人スタッフの意欲と積極性が決め手になりました。
当初は1名の採用予定でしたが、面接を行った5名全員を採用。
外国人スタッフの前向きな姿勢は、お客様アンケートでも高く評価されています。
特定技能外国人を活用してホテルの人手不足を解消
ここでは、ホテルの人手不足について解説しました。
主な原因は、給与水準が低いことや休みを取りにくいことです。
観光・宿泊需要の増加や、新規開業するホテルの増加も、人手不足を助長しています。
対策を講じたい方は、特定技能外国人の採用を検討してみてはいかがでしょうか。
意欲の高い人材を安定的に確保できる可能性があります。
安価な料金と充実したサポートを特徴とする『スタッフ満足』にご相談ください。