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特定技能外国人は転職できる?自社で長期就労してもらうポイント

人手不足が問題となっている産業分野において、特定技能による外国人雇用は人手不足解消に繋がることが期待される心強い制度です。
しかし特定技能外国人の採用を検討しているものの「自社で採用した人材にすぐに転職されてしまうこともあるのではないか」と感じている企業さまもいるでしょう。
 
そこで、特定技能外国人の転職に不安を感じている方のため、転職に関しておさえておきたいポイントを紹介します。
この記事を読むことによってそもそも転職は可能なのか、自社で長く働いてもらうにはどうすれば良いかなどが分かるようになるので、ぜひご覧ください。

目次[非表示]

  1. 1.特定技能の概要
  2. 2.特定技能は転職できる?
    1. 2.1.要件を満たせば可能
    2. 2.2.技能実習から特定技能へ移行する際の転職も可能
    3. 2.3.転職先の協力が不可欠
    4. 2.4.在留資格変更許可申請中は他社でのアルバイト不可
    5. 2.5.在留資格変更許可申請が不許可になった場合帰国しなければいけない
  3. 3.転職可能な業種
  4. 4.特定技能外国人の転職理由
    1. 4.1.自己都合
    2. 4.2.会社都合
    3. 4.3.「技能実習」から「特定技能」へ移行するタイミングだった
  5. 5.特定技能の転職に際しての条件
    1. 5.1.業種・業務が変わらない場合
    2. 5.2.業種・業務を変える場合
  6. 6.特定技能の転職に際しての手続き
    1. 6.1.本人側
    2. 6.2.在籍中・在籍していた企業側
    3. 6.3.転職先の企業側
  7. 7.転職にかかる期間
  8. 8.長期就労してもらうために
  9. 9.転職に関する課題
    1. 9.1.直前に言われる可能性がある
    2. 9.2.引き抜き自粛規定が設けられている
    3. 9.3.悪質なブローカーによる仲介
  10. 10.他社に転職されないための工夫が必要

特定技能の概要

特定技能とは在留資格の一つであり、国内で人材の確保が難しい作業分野において専門性や技能を有する外国人を受け入れる目的で作られた制度のことをいいます。
実際に多くの企業が特定技能で外国人雇用を進めている状況です。
 
2019年4月に始まった制度ですが、制度の開始時と現在では異なることもあります。
例えば、制度開始時点では製造業分野が素形材産業分野・産業機械製造業分野・電気電子情報関連産業分野に分かれていましたが、2022年の5月25日には「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」という1つの分野に変わりました。
 
それから、特定技能は国が指定した12の分野に該当する企業のみが対象となるのですが、各分野で受入れ見込み数の見直しが行われています。
該当する12の分野と当初の受入れ見込数、新規の受け入れ見込数、令和5年6月末時点の受入れ数は以下の通りです。
 
【受入れ見込数と受入れ数の現状】


当初の受入れ見込数(5年間の最大値)

現在の受入れ見込数(5年間の最大値)

令和5年6月末時点の受入れ数

介護

60,000人

50,900人

21,915人

ビルクリーニング

37,000人

20,000人

2,728人

素形材産業・産業機械製造業・電気電子情報関連産業

素形材産業:
21,500人
産業機械製造業:5,250人
電気電子情報関連産業:
4,700人

49,750人

35,641人

建設

40,000人

34,000人

18,429人

造船・舶用工業

13,000人

11,000人

6,377人

自動車整備

7,000人

6,500人

2,210人

航空

2,200人

1,300人

342人

宿泊

22,000人

11,200人

293人

農業

36,500人

36,500人

20,882人

漁業

9,000人

6,300人

2,148人

飲食料品製造業

34,000人

87,200人

53,282人

外食業

53,000人

30,500人

8,842人

関連記事:特定技能の12分野(14業種)の職種一覧を解説

参考:法務省:在留資格受入れ機関向けが創設されました[PDF]

参考:法務省:分野別運用方針について(12分野)[PDF]

参考:法務省:特定技能在留外国人数(令和5年6月末現在)[PDF]
 
受け入れ人数の変更には、新型コロナウイルスの影響もあります。アフターコロナにより今後また受け入れ人数が変更される可能性は十分にあるので、受け入れ企業となる側は都度確認が必要です。
 
また、試験に関する受験資格が令和2年4月1日以降の国内試験より拡大されています。それまでより条件が緩和され、より受験を検討しやすくなりました。
試験実施要領については以下より確認可能です。
 
参考:出入国在留管理庁:試験関係 試験の適正な実施を確保するための分野横断的な方針

特定技能は転職できる?

自社で特定技能による採用を検討している企業さまは、特定技能外国人の転職に関しても基本をおさえておきましょう。
確認しておきたいポイントを紹介します。

要件を満たせば可能

特定技能外国人は、要件を満たせば転職が可能です。
詳細な要件は後述します。
 
転職が認められる理由として、そもそも特定技能制度が日本国内における人手不足が問題となっている産業分野での人材を確保する目的で作られていることが挙げられます。
転職したとしても国内で働いてもらえるのであれば、日本にとっての貴重な労働力となることから、転職が認められている状況です。
 
これは、技能移転による国際貢献を目的としている技能実習と大きく異なるポイントであり、技能実習では転職が認められていません。

技能実習から特定技能へ移行する際の転職も可能

もともと技能実習の在留資格で日本に在住している方は、技能実習2号を修了した後に特定技能へ移行することが可能です。
ただし、特定技能に移行する場合は技能実習期間を修了していることに加え、技能検定3級又は技能実習評価試験の実技試験に合格しなければなりません。
 
技能実習から特定技能へ移行する際、もともと技能実習時に働いていたのとは異なる企業に転職することが可能です。
ただ、こういったケースでは技能実習として実績を積んできた職種・業務内容と、転職先となる特定技能の職種・業務内容が一致していなければなりません。

転職先の協力が不可欠

特定技能外国人が転職する場合、必要とされる手続きを行わなければならないのですが、その際には転職先の協力が不可欠になります。
これは、特定技能外国人が行えるのはあらかじめ「指定書」と呼ばれるものによって指定されている活動のみだからです。
 
指定書には、企業名とその企業内で行える定められた活動が記載されており、そこに記載されている以外の業務は行えないことになっています。
 
そのため、仮に転職する場合は転職先となる新規受入れ企業の協力によって在留資格変更許可申請を行わなければなりません。
現在の職場で働くために発行された指定書では転職先の企業で働くことが認められないため、指定書の取り直しが必要です。
 
転職先に用意してもらわなければならない書類などもあるため、転職先の協力は必須といえます。

在留資格変更許可申請中は他社でのアルバイト不可

特定技能外国人が転職して新しい職場で働くためには、在留資格変更許可申請を行い、認めてもらわなければなりません。
ですが、在留資格変更許可申請中は他社でのアルバイトができないと定められています。
 
これは、働ける企業や分野、業務区分が指定書によって指定されているためです。
 
もしも退職したもののなかなか在留資格変更許可が出ないといった状況になると、金銭的な余裕がなくても仕事ができない状況になってしまいます。
こういったこともあり、特定技能外国人が転職する場合は慎重な判断が必要です。
 
もちろん、新規の就職先として特定技能外国人を受け入れる企業としても、本人の在留資格変更許可が下りるまで働いてもらうことはできません。
このあたりにも十分注意が必要です。

在留資格変更許可申請が不許可になった場合帰国しなければいけない

転職のために前職を退職し、在留資格変更許可申請を行ったとします。
ですが、何らかの理由によって在留資格変更許可申請が通らなかった場合は在留資格が失われてしまいます。
 
在留資格は日本に滞在することを認める資格であるため、これが認められなくなれば帰国しなければなりません。
 
帰国後に再度入国手続きをし、許可が下りれば再入国することは可能です。
ですが、万が一在留資格変更許可申請が通らず予想外のタイミングで帰国しなければならないとなると、リスクも大きいといえます。
 
このような理由もあり、確かに特定技能外国人が転職することは可能ではあるものの、簡単に検討できるものではありません。

転職可能な業種

特定技能外国人が転職可能な業種は、法律で認められている以下の12の分野です。

  • 介護
  • ビルクリーニング
  • 素形材産業・産業機械製造業・電気電子情報関連産業
  • 建設
  • 造船・舶用工業
  • 自動車整備
  • 航空
  • 宿泊
  • 農業
  • 漁業
  • 飲食料品製造業
  • 外食業

特定技能外国人が転職する際、現在と同じ業種・産業分野であればそのまま転職できますが、異なる分野に転職する場合は試験を受けて合格しなければなりません。詳しくは後述します。
 
なお、受け入れ企業側になるためには以下の要件を満たす必要があります。

特定技能所属機関の基準

雇用契約に関する基準

  • 労働や社会保険及び租税に関する法令を遵守している
  • 過去1年以内に特定技能と同業務従事者の解雇者がいない
  • 1年以内に行方不明不者がいない
  • 5年以内に欠格事由に該当しない
  • 外国人が保険金の徴収をされていない
  • 違約金を徴収していない
  • 外国人に受け入れ費用を負担させていない
  • 口座振り込みで報酬を支払う
  • 分野によって定められた基準に適合している
  • 分野によって規定されている業務に従事させる
  • 日本人が従事した場合と同等以上の報酬額を支払う
  • 外国人であることを理由として差別的な扱いをしていない
  • 一時帰国を希望した場合は休暇を取得させる
  • 本人が帰国旅費を負担できない場合は受け入れ機関が負担し、契約終了後の出国が円滑に行えるように対処する

よく確認しておきましょう。

関連記事:特定技能の12分野(14業種)の職種一覧を解説

特定技能外国人の転職理由

特定技能外国人は、どのような理由で退職するのでしょうか。
自己都合と会社都合、タイミングによるものがあります。

自己都合

外国人本人の自己都合によるものがあります。
何らかの事情により現在の会社で働き続けるのが難しくなった場合、転職といった選択肢をとる方もいます。

会社都合

会社側の都合によって、転職しなければならなくなったケースです。
例えば、会社が倒産したなどの理由が挙げられます。

「技能実習」から「特定技能」へ移行するタイミングだった

技能実習として働いている方は、技能実習2号を良好に修了することで同職種・作業内容であれば特定技能1号へ移行が可能です。
このタイミングで転職することもあります。

特定技能の転職に際しての条件

転職前後で業種・業務が変わるかによって条件が異なります。

業種・業務が変わらない場合

特定技能外国人が転職する場合、転職前と転職後の企業が同じ業種・産業分野である場合に限り、新規の試験などは必要ありません。
ただし、出入国在留管理庁に対して在留資格の変更許可申請は必要です。

業種・業務を変える場合

これまでと異なる業種・産業分野に転職する場合、該当分野の特定技能評価試験を受けて合格しなければなりません。
また、注意しなければならないのが一部の業種・産業分野で設定されている「区分」です。
 
例えば、航空業の場合は「空港グランドハンドリング」と「航空機整備」の2区分があります。
空港グランドハンドリングの特定技能評価試験に合格していても、航空機整備を営む企業へ転職する場合は航空機整備の特定技能評価試験に合格する必要があります。

実際に特定技能外国人が転職する場合、どのような手続きが必要になるのでしょうか。
本人側と企業側で必要となる手続きについて紹介します。

特定技能の転職に際しての手続き

実際に特定技能外国人が転職する場合、どのような手続きが必要になるのでしょうか。
本人側と企業側で必要となる手続きについて紹介します。

本人側

本人が行わなければならない手続きは、以下の2つです。
 
【必要な手続き】

  • 入国管理局への届け出
  • 在留資格変更許可申請

入国管理局に対し、契約機関に関する届出を提出します。
 
在留資格変更許可申請では所属機関に関する提出書類を新受け入れ企業に準備してもらい、申請人に関する提出書類と分野に関する提出書類をそろえて申請します。
また、現在とは異なる業種・産業分野に転職する場合は該当分野での試験合格も必要です。

在籍中・在籍していた企業側

特定技能外国人が在籍中・在籍していた企業側では、以下の手続きが必要です。
 
【必要な手続き】

  • 出入国管理局への届け出
  • ハローワークへ雇用保険被保険者資格喪失の届出
  • 退職手続き

出入国在留管理庁に対して自社で働いていた特定技能外国人が退職する旨を伝えます。
その際、特定技能所属機関による受入れ困難に係る届出と、特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出が必要です。
 
ハローワークに対して外国人雇用状況の届出を行うのも忘れないようにしましょう。
その他は日本人の退職手続きと同様です。

転職先の企業側

転職者を受け入れる側の企業では、以下の手続きを行います。
 
【必要な手続き】

  • 雇用契約の締結に関する手続き
  • 出入国在留管理局に届出を提出
  • ハローワークへ外国人雇用状況の届出を提出

あらかじめ雇用契約を締結し、申請に必要な書類を用意します。在留資格の許可が下りて入社した後に管轄のハローワークに対して外国人雇用状況の届出を行いましょう。
その後、四半期ごとの定期報告など必要な手続きを継続して行っていくことになります。

転職にかかる期間

特定技能外国人の転職には長い期間がかかるケースがあります。
在留資格変更許可申請の審査には1~2ヶ月ほどかかりますし、提出書類の準備も必要です。
早くて1ヶ月半程度、長くて3ヶ月程度が目安です。
 
また、異なる業種・産業分野に転職する場合は試験を受けて合格しなければなりません。
ですが、分野によっては試験の開催頻度が低く、試験が受けられるまでに時間がかかるとさらに時間がかかることもあります。

長期就労してもらうために

自社で採用した特定技能外国人に長期就労してもらうためには、工夫が必要です。
 
まず、外国人の母国語でオリエンテーションを行い、適切な支援につなげましょう。
働き始めてからつまずいてしまうことも多いため、適切なフォローアップも必要です。
 
日本人と比較して差別されていると感じると不満を覚えて転職につながりやすいので、場合によっては待遇面の改善も検討しなければなりません。
 
自社だけで適切な支援を行うのは非常に難しいといえます。
そこで、特定技能外国人の支援をサポートしている登録支援機関を利用すると良いでしょう。
 
スタッフ満足」では外国人の採用から定着まで総合的にサポートしているので、ぜひご相談ください。
長期就労を目指すことができます。

転職に関する課題

特定技能外国人の転職に関する課題があります。
以下の3点を確認しておきましょう。

直前に言われる可能性がある

外国人を採用している企業にとって非常に困るのが、直前の転職の申し出です。
日本人の場合は退職する30日前には会社側に申し出ておくのが習慣として身についています。
しかし、こういった習慣がない外国人の場合、水面下で転職活動・準備を進めていて、突然「転職するので今日で辞めます」と申し出てくることが少なくありません。
 
こういった可能性を考え、入社時にあらかじめ転職する場合の報告のタイミングについて伝えておきましょう。

引き抜き自粛規定が設けられている

法務省では、特定技能外国人の引き抜き雇用は自粛するように要請しています。
これは、大都市の企業や力のある一部の大企業が有利な条件で引き抜きを行うことによって、その他の企業が適切に人材を確保できなくなる状況を防ぐためです。
 
ただ、特定技能外国人に転職してきて欲しいと考えている企業からすると課題となります。

悪質なブローカーによる仲介

転職しようと考えている特定技能外国人が悪質ブローカーの被害に遭ってしまうことがあるようです。
本来、登録支援機関や人材紹介会社は外国人本人から手数料を徴収してはいけないと法律によって定められています。
 
ですが、これを守らずに外国人から手数料を徴収している悪質ブローカーがいるのも転職に関する一つの課題です。

他社に転職されないための工夫が必要

いかがだったでしょうか。
特定技能を外国人の転職について確認しておきたいポイントをご理解いただけたかと思います。
 
日本人と同様に転職が可能であることから、自社で長期就労してもらいたいと考えた場合はそのための工夫や対策が必要です。
 
具体的にどのような対策をとれば良いのかわからない、採用した外国人の転職が多く困っているといった場合は、「スタッフ満足にご相談ください。
これまで培ってきた豊富な経験と知識をもとに外国人の定着に関する課題解決を支援しています。

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