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特定技能外国人は自社支援できる?自社支援に必要な要件や流れについて解説

近年、特定技能外国人の受け入れで悩む企業が増えています。
支援方法は登録支援機関への委託が一般的と思いがちですが、自社支援も選択肢のひとつです。
 
特定技能制度は人手不足が深刻な産業分野で、外国人材を受け入れる制度として2019年4月に始まりました。
在留期間は特定技能1号が最長5年、特定技能2号は更新回数に制限がありません。
 
外国人材の受け入れには支援が必須です。
ただし、企業は支援を登録支援機関に委託するか、自社で行うかを選べます。
 
自社支援には準備と体制が必要ですが、コスト削減や柔軟な対応が可能です。
 
この記事では、特定技能外国人の自社支援に必要な要件や手続きなどを詳しく解説します。自社支援の実施を検討する企業の方は、ぜひ参考にしてください。

目次[非表示]

  1. 1.特定技能とは
  2. 2.特定技能外国人を登録支援機関なしで自社支援のみで管理できる?
  3. 3.義務的支援と任意的支援について
  4. 4.特定技能外国人の自社支援に必要な要件
    1. 4.1.2年以内に中長期在留者(外国人)の受入れ実績がある
    2. 4.2.十分に理解できる言語による支援体制が用意できる
    3. 4.3.支援の実施状況に係る文書の作成・保管ができる
    4. 4.4.支援の中立性が確保的出来る
    5. 4.5.支援実施義務の不履行がない
    6. 4.6.定期的な面談の実施に関するもの
  5. 5.支援責任者及び支援担当者の要件
  6. 6.特定技能外国人の自社支援で必要な書類
  7. 7.特定技能外国人の自社支援の流れ
  8. 8.自社支援と支援委託の比較
  9. 9.登録支援機関について
    1. 9.1.登録支援機関の選び方
  10. 10.まとめ

特定技能とは

特定技能は、2019年4月に新設された在留資格です。
人手不足が深刻な日本国内の産業分野で、外国人材の就労を認める制度です。
 
対象の分野は16分野で、即戦力となる人材が求められています。

分野
主な仕事
介護

食事介助、入浴介助、排泄介助、移動介助、レクリエーションの企画・運営、生活援助(掃除、洗濯、調理など)

ビルクリーニング

日常清掃(ゴミ回収、床清掃、トイレ清掃など)、定期清掃(床のワックスがけ、カーペットクリーニング、窓ガラス清掃など)

工業製品製造業

素材の加工、部品の組立、製品の塗装、検査、梱包

建設

構造物の計画設計、施工管理、完了後の維持管理

造船・舶用工業

溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工、電気機器組立て

自動車整備

自動車の点検、整備、修理

航空

パイロット、客室乗務員、グランドスタッフ、整備士、運航管理者、航空管制官、ケータリングスタッフ

宿泊

宿泊客のチェックイン・チェックアウト対応、客室清掃、食事の準備・提供、観光案内、施設管理

自動車運送業

貨物の収集、積み込み・積み下ろし、輸送、配達、伝票作成、車両のメンテナンス

鉄道

運転士や車掌、駅員などの運行関連業務、車両整備や保線・土木、電気設備管理などの技術職、営業や経営企画などの事務職

農業

耕種農業(田畑を耕し作物を栽培)、畜産農業(家畜の飼育)、アグリビジネス(農業資材や流通・販売の支援)、スマート農業、観光農業

漁業

魚介類の漁獲、水揚げした魚の選別や出荷、漁具の手入れや修理、船の掃除、養殖業

飲食料品製造業

原材料の処理、加工、調理、包装、出荷、品質検査、衛生管理

外食業

調理(食材の仕込みや調理)、接客(料理の提供や顧客対応)、店舗管理

林業

地ごしらえ、植え付け、下刈り、除伐、枝打ち、間伐、主伐、造材・搬出

木材産業

木材の加工・製造(製材、合板製造、木材チップ製造など)、原材料の調達・受入れ、製品検査、出荷作業(運搬、梱包、積込など)

在留資格には、特定技能1号と特定技能2号があります。
 
1号は基礎知識や技能を必要とし、在留期間は通算5年までです。
2号は熟練した技能が必要で、在留期間の更新に制限がなく、家族帯同もできます。
 
特定技能は、日本社会における労働力不足を補う重要な役割を果たしている制度です。
 
参照元:在留資格「特定技能」とは

特定技能外国人を登録支援機関なしで自社支援のみで管理できる?

特定技能外国人の支援は、登録支援機関への委託だけでなく、自社支援でも対応できます。
ただし、出入国在留管理庁が定めた要件を満たさなければいけません。
 
主な要件は、以下のとおりです。

  • 中長期在留者の受け入れ実績
  • 十分な言語対応能力
  • 中立性を保った支援体制の確保
  • 自社支援では義務的支援内容(住居確保や生活オリエンテーションなど)

実施には責任が生じますが、コスト削減や柔軟な対応ができるなどのメリットもあります。
 
しかし、体制構築や書類作成の負担が大きいため、初めて外国人材を受け入れる企業にはハードルが高くなる可能性もあるでしょう。
自社支援を検討する際は、自社の状況やリソースを十分に考慮しなければいけません。
 
まずは登録支援機関を活用し、経験を積んだ上で自社支援への移行を目指しましょう。

義務的支援と任意的支援について

特定技能外国人を受け入れる企業は、義務的支援と任意的支援の2種類を実施できます。
 
義務的支援は、法律で定められた必須項目です。
怠ると、罰則や在留資格の取り消しなどのリスクがあります。
 
任意的支援は、企業の裁量で実施するものです。
外国人材の生活や、業務への適応をよりスムーズにするために役立ちます。

支援区分
内容
実施の要否

義務的支援

事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保、生活オリエンテーション、公的手続き同行、日本語学習機会提供、相談対応、日本人との交流促進、転職支援、定期面談

必須

任意的支援

日本語教育の充実、生活用品の供与、医療機関の案内、地域行事への参加支援

任意

義務的支援には、外国人材が日本で生活し働くために必要な最低限のサポートが含まれます。
特に、日本語学習機会の提供、住居確保や公的手続きへの同行は、外国人材にとって欠かせません。
 
任意的支援は、実施すると外国人材が職場や地域社会に早く馴染めます。
積極的に支援すれば、人材定着率や満足度の向上につながるでしょう。

特定技能外国人の自社支援に必要な要件

特定技能外国人の自社管理には、6つの要件があります。

  • 2年以内に中長期在留者の受入れ実績がある
  • 十分に理解できる言語による支援体制が用意できる
  • 支援の実施状況に係る文書の作成・保管ができる
  • 支援の中立性が確保できる
  • 支援実施義務の不履行がない
  • 定期的な面談を実施できる

これらの要件を満たせば、自社支援が可能です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

2年以内に中長期在留者(外国人)の受入れ実績がある

外国人材の受け入れ実績は、自社支援の基本になる要件です。
過去2年以内に、技能実習生や留学生など中長期在留者を受け入れた経験が必要です。
 
実績には雇用だけでなく、適切な労務管理や生活支援の提供も含まれます。

実績がない企業は、登録支援機関に委託して経験を積まなければいけません。
 
実績期間中は支援のノウハウを蓄積し、自社支援に向けた体制づくりを進めましょう。

十分に理解できる言語による支援体制が用意できる

外国人材とのコミュニケーションを円滑に行うには、特定技能外国人が理解できる言語での支援を実施しなければいけません。
外国人材は日本語能力試験N4以上の能力を持っているものの、専門用語や複雑な説明は母国語での対応が望ましいです。
 
通訳スタッフの配置や通訳サービスの利用など、言語面での支援体制も必要です。
特に、生活相談や緊急時の対応では、意思疎通が欠かせません。
 
支援担当者は、基本的なコミュニケーションが取れる語学力を身につけましょう。

支援の実施状況に係る文書の作成・保管ができる

特定技能外国人の支援を自社で行う場合は、支援の実施状況を記録し、適切に保管する必要があります。
支援が計画通りに実施されているかを確認し、不備がないことを証明するために欠かせません。
 
作成が必要になる文書は4つです。

  • 支援計画書
  • 面談記録
  • 相談対応記録
  • 生活指導記録

文書は、支援終了後も1年以上保管する義務があります。
また、出入国在留管理庁から求められた際に提出できるよう準備が必要です。
 
文書管理を徹底すれば、支援内容の透明性と信頼性を確保できます。
さらに、支援体制の改善や問題点の把握にも役立つでしょう。

支援の中立性が確保的出来る

中立性とは、外国人材が安心して働ける環境を提供し、公平な立場で支援を行うことを指します。
具体的には、支援担当者を直接の上司以外から選任し、外国人材が相談しやすい体制を整えるなどの取り組みです。
 
また、相談窓口を設置し、業務上や生活上の悩みを気軽に相談できる環境の構築も欠かせません。
その際は、支援内容や対応履歴をすべて記録として残し、不正や偏りがないよう透明性を確保します。
 
取り組みを実施すれば、外国人材との信頼関係が深まるほか、職場環境の改善にもつながるでしょう。

支援実施義務の不履行がない

特定技能外国人への支援では、義務的支援項目を確実に実施する責任があります。
不履行が発生すると、出入国在留管理庁から指導や改善命令を受けるだけでなく、在留資格の取り消しにつながる可能性があるため注意が必要です。
 
そのため、事前ガイダンスや住居確保、公的手続きの同行など、すべての義務的支援項目を計画通りに進めなければいけません。
 
また、不履行の防止には、定期的な進捗状況の確認や内部監査も有効です。
不足や問題点が見つかった場合は速やかに対応し、改善策を講じましょう。
 
義務履行は、自社支援体制の信頼性向上に直結するほか、不履行のリスクを最小限に抑えられます。

定期的な面談の実施に関するもの

特定技能外国人との定期面談は、自社支援に欠かせない要件です。
法律では3ヶ月に1回以上の面談実施が義務付けられています。
 
面談では生活状況や業務上の課題を把握し、適切なサポートにつなげなければいけません。
結果は記録として残し、その後の対応計画に反映させます。
 
定期面談は、問題の早期発見と解決が可能です。
さらに、外国人材との信頼関係の構築にも影響を与えます。
 
自社支援体制全体の質と外国人材の満足度の向上を実現するには、適度なコミュニケーションが必要です。

支援責任者及び支援担当者の要件

特定技能外国人の自社支援を行うには、支援責任者と支援担当者を選任する必要があります。
 
支援責任者は、支援全体の管理や計画の策定を担います。
支援担当者は外国人材と接しつつ、日々の支援業務を遂行するのが役割です。
 
両者は同一人物が兼任できますが、それぞれの要件を満たさなければいけません。

  • 過去2年以内に外国人材の生活相談業務や労務管理に関する経験がある
  • 外国人材との円滑なコミュニケーションが取れる
  • 出入国在留管理庁が指定する研修を受講している
  • 特定技能制度や関連法令について十分な知識を持っている

適切な支援計画の作成や実施には、支援体制の透明性と信頼性の確保も必要です。
常に、公平な立場で業務を遂行しなければいけません。
 
要件を満たせば、自社支援体制は適正に機能し、外国人材が安心して働ける環境を提供できます。

特定技能外国人の自社支援で必要な書類

特定技能外国人の自社支援を行う際には、必要な書類を準備し、適切に管理しなければいけません。
 
書類は、出入国在留管理庁への提出や内部記録として使用されます。
 
主な必要書類は、以下のとおりです。

書類名
説明

支援計画書(参考様式第1-17号)

特定技能外国人への支援内容を記載した計画書。在留資格申請時に提出が必要で、職業生活・日常生活・社会生活上の支援内容を網羅している。

特定技能所属機関概要書(参考様式第1-11号)

自社が特定技能外国人を受け入れる能力があることを示す書類。過去の受け入れ実績や支援責任者・担当者の情報などを記載している。

支援計画の変更に係る届出書(参考様式第3-2号)

支援内容や体制に変更が生じた場合に提出する届出書。登録支援機関から自社支援へ切り替える場合などにも使用される。

支援責任者・担当者の履歴書および誓約書

支援責任者や担当者が適切な資格や経験を有していることを証明するための書類。過去2年間の外国人支援経験や役職情報などが記載されている。

特定技能所属機関による支援委託契約届出

登録支援機関との契約解除や新たな契約締結時に提出する書類。自社支援への移行時にも必要になる。

書類は、雇用終了後も1年以上保管する義務があります。
不測の事態への対応や監査時に備え、いつでも提出できるよう管理しておきましょう。
 
書類の適切な管理は、自社支援体制への信頼性の向上にも影響します。

特定技能外国人の自社支援の流れ

特定技能外国人の自社支援を行うには、手順に従い、必要な書類や記録を適切に管理する必要があります。
 
自社支援のステップと必要書類は、以下のとおりです。

ステップ
内容

必要書類

1.支援体制の整備


支援責任者と支援担当者を選任し、必要な研修を受講させる。外国人材が理解できる言語で対応できる体制を整備する。


支援責任者・担当者の履歴書、誓約書

2.支援計画の作成

外国人材ごとに個別の支援計画書を作成する。義務的支援内容や実施方法を詳細に記載し、在留資格申請時に提出する。

支援計画書

3.必要書類の準備と提出

特定技能所属機関概要書や支援責任者・担当者の就任承諾書などを準備し、出入国在留管理庁へ提出する。不備がないよう慎重に作成する。

特定技能所属機関概要書、支援責任者・担当者の就任承諾書

4.支援の実施

支援計画に基づき、住居確保、公的手続き同行、日本語学習機会提供、定期面談など義務的支援内容を実施する。

面談記録、相談対応記録

5.記録の作成と保管

支援状況を記録し、雇用終了後も1年以上保管する。これにより、監査やトラブル発生時にも対応可能な体制を整える。

面談記録、相談対応記録、生活指導記録

6.定期的な見直しと改善

支援体制や内容について定期的に見直し、不足や問題点があれば改善策を講じる。これにより、外国人材への支援の質を向上させることができる。

改善計画(必要に応じて)

これらのステップは、自社支援体制をスムーズかつ適正に運営するための基本的な流れです。
特に、支援計画書の作成は重要で、外国人材が日本で安定して生活し働ける環境を整えるための具体的な指針です。
 
自社支援の流れを理解し、不足や問題点があれば早期に対応する意識を持ちましょう。

自社支援と支援委託の比較

項目

自社支援
委託支援
コスト

初期投資は必要だが、長期的にはコスト削減できる。

月額2〜3万円程度の委託費用が発生する。

手間

支援体制の整備や書類作成など、多くの業務負担が発生する。

支援業務を外部に任せられるため、業務負担が軽減される。

柔軟性

自社で直接対応できるため、状況に応じた迅速な対応が可能。

委託先との調整が必要で、対応に時間がかかる場合がある。

専門性

自社でノウハウを蓄積する必要があるため、初期段階では専門性に課題が見られる場合もあり。

専門的な知識と経験を持つ登録支援機関からサポートを受けられる。

管理体制

自社内で一貫して管理できるため、支援内容を細かく把握できる。

委託先に依存するため、自社での管理は限定的になる。

自社支援は社内ですべての支援業務を完結させるため、コスト削減や迅速な対応ができる点がメリットです。
しかし、その分だけ準備や運営に多くのリソースを割かなければならず、初めて外国人材を受け入れる企業にはハードルが高い場合があります。
 
登録支援機関への委託は、スムーズな運営が期待できるのがメリットです。
ただし、費用負担が増加し、自社での柔軟な対応が難しくなる可能性があります。
 
それぞれメリットとデメリットがあるため、自社の状況を分析し、最適な選択肢を見極めましょう。

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登録支援機関について

登録支援機関とは、特定技能外国人を受け入れる企業に代わり、支援計画の作成や実施、地方出入国在留管理局への対応などを行う専門機関です。
これにより、企業は特定技能外国人の採用や生活支援にかかる負担を軽減できます。
 
機関への登録は、民間企業や行政書士などが可能です。
ただし、一定の要件を満たさなければいけません。
 
2024年2月時点では全国に9,545件が登録されており、業務内容や対応可能な言語、費用などは機関ごとに異なります。
 
実施される主な義務的支援は、事前ガイダンス、住居確保、公的手続き同行、日本語学習機会の提供などの10項目です。
また、企業側が対応しきれない場合には、これらの業務を部分的またはすべて代行してくれます。
 
登録支援機関の利用は、特定技能外国人とのコミュニケーションが難しい場合や、支援業務に割くリソースが不足している企業に最適です。
 
参照元:登録支援機関とは?特定技能制度における支援内容や役割、選び方を解説

登録支援機関の選び方

選定基準
詳細

ライセンス登録


登録支援機関として国から認定されているか確認する


対応可能な言語・国籍

特定技能外国人が話す言語で対応可能かどうか確認する。

業務委託費用

月額2〜3万円程度が相場だが、追加料金の有無やコストパフォーマンスも考慮する。

業種・分野への理解

自社の業種や分野に精通しているか確認する。

所在地

必要時に迅速な対応が可能な距離かどうか確認する。

実績

過去の支援実績が豊富で信頼できるか確認する。

一括対応能力

人材紹介から支援までワンストップで対応可能かどうか確認する。

登録支援機関を利用すると、自社では難しい専門的な支援を受けられます。
したがって、特定技能外国人との信頼関係の構築や職場定着率の向上を実現できるでしょう。
 
ただし、費用負担が発生するため、自社のリソースとのバランスを考慮して選ばなければいけません。
 
また、長期的な付き合いになるため、柔軟性や迅速な対応力も選定基準として重視しましょう。
適切な登録支援機関を選べば、特定技能外国人の雇用をスムーズに進められます。

参照元:登録支援機関とは?特定技能制度における支援内容や役割、選び方を解説

まとめ

特定技能外国人の受け入れには、自社支援と登録支援機関の利用の2つがあります。
 
自社支援はコスト削減や柔軟な対応ができますが、体制構築や書類作成の負担が大きい点が課題です。
登録支援機関は専門的なサポートを提供してくれるため、企業の負担を軽減できますが、費用が発生します。
 
適切な支援方法を選ぶ際は、自社のリソースや経験に応じて慎重に検討しましょう

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