
特定技能外国人の健康診断は必要?タイミングや注意点を解説
特定技能制度は、深刻な人手不足を補うために設けられた新しい在留資格です。
近年では、制度の活用が進んでいます。
しかし、受け入れ時に健康診断の実施が求められることは意外と知られていません。
健康診断は形式的な手続きではなく、労働者の健康状態を確認し、雇用後の安全な労働環境を確保するために欠かせないものです。
この記事では、特定技能外国人の健康診断が必要な理由や実施タイミング、診断項目から企業側の注意点などを詳しく解説します。
法令遵守だけでなく、労働者との信頼関係を築くためのポイントも理解したい方は、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.特定技能外国人の健康診断は必要
- 2.特定技能外国人の健康診断のタイミング
- 3.健康診断の実施場所について
- 4.特定技能外国人の健康診断の診断項目
- 5.特定技能外国人の健康診断で必要な書類
- 6.特定技能外国人の健康診断の費用
- 7.特定技能外国人の健康診断で企業側の注意点
- 7.1.費用は企業が負担する
- 7.2.健康診断を受ける時期には注意
- 7.3.健康診断の結果は必ず確認する
- 7.4.定期健康診断の結果は本人に通知する義務がある
- 7.5.受け入れ後も定期健康診断の実施が必要
- 8.登録支援機関について
- 8.1.登録支援機関の選び方
- 9.健康診断についてよくある質問
- 10.まとめ
特定技能外国人の健康診断は必要
特定技能外国人の健康診断は、受け入れ企業にとって必要です。
日本の労働環境で安全かつ効率的に働くには、健康状態が良好でなければいけません。
健康は特定技能ビザ申請時の条件でもあり、在留資格を取得するには診断結果が影響します。
特定技能外国人は、日本人と同様に労働基準法や安全衛生法の適用を受けるため、雇用中も定期的な健康診断が必要です。
健康問題を未然に発見できるため、労働者の安全を確保しながらコンプライアンスや経済的損失リスクの軽減にもつなげられます。
特定技能外国人の健康診断のタイミング
特定技能外国人が健康診断を受けるタイミングは、雇用前と雇用後に分かれます。
雇用前は在留資格を申請する時に、必要な書類として提出されるのが一般的です。
正確かつ最新の情報が求められます。
雇用後は、日本人同様に定期的な検査が必要です。
ただし、国内にいるかいないかで診断のタイミングが異なります。
それぞれの詳細を詳しく見ていきましょう。
国内にいる場合
特定技能外国人が国内にいる場合、在留資格の変更を申請した時に健康診断を実施します。
過去1年以内に受けた健康診断結果があれば、手続きを進められます。
ただし、健康診断を受けていない、または1年以上経過している場合は、新たに受診しなければいけません。
この際、厚生労働省が定める検査項目を満たす必要があります。
企業側は、従業員が適切な医療機関で検査を受けられるよう、サポートしましょう。
健康診断の結果は、正確かつ最新のものでなければいけません。
不備や誤りがあると、申請手続きに影響を及ぼすため、細部まで慎重に確認すべきです。
さらに、言語の壁による誤解を防ぐため、通訳や翻訳サービスを活用しましょう。
これにより、健康状態の把握や申請書類の作成がスムーズになります。
国内での健康診断を適切なタイミングで実施すれば、在留資格変更手続きが円滑に進みます。
企業側はスケジュール管理を徹底し、従業員が安心して働ける環境作りに努めてください。
国外にいる場合
特定技能外国人が国外にいる場合は、日本に入国する3ヶ月以内に健康診断を受け、結果を在留資格認定証明書の交付申請時に提出しなければいけません。
この際、日本基準で定められた検査項目を満たす医療機関での受診が求められます。
しかし、国外では日本基準に対応した医療機関が限られるため、事前の情報収集と予約が必要です。
また、国外での健康診断では、母国語で記載された診断書と日本語訳の両方が必要です。
不備や誤訳があると、申請手続きに支障をきたす恐れがあります。
そのため、専門の翻訳サービスや登録支援機関に依頼し、書類作成を正確に行わなければいけません。
さらに、検査項目も事前に確認しましょう。
日本入国後に追加検査が不要になるよう準備を整えておくべきです。
国外での健康診断を受ける際は、適切な医療機関と連携し、必要な書類を揃えることを意識してください。
健康診断の実施場所について
特定技能外国人の健康診断は、日本国内外どちらでも実施できますが、それぞれ注意点があります。
国内 |
国外 |
|
医療機関の選定 |
厚生労働省基準を満たす医療機関で受診可能 |
日本基準対応の医療機関を事前に調査・予約 |
言語対応 |
通訳が必要な場合は事前に確認 |
母国語対応の施設を選択し、日本語訳付き診断書を用意 |
診断書の形式 |
日本語で作成可能 |
母国語で作成し、日本語訳を添付 |
注意点 |
診断項目の漏れや不備がないよう確認 |
翻訳ミスや検査項目不足による申請遅延に注意 |
国内では、厚生労働省が定めた基準を満たす医療機関で受診しなければいけません。
国外では、日本基準に対応した医療機関が限られるため、事前に対応可能な施設を調べ、予約する必要があります。
また、国外で受診した場合は、日本語訳付きの診断書が求められます。
不備があると、手続きが遅れる可能性があるため注意しましょう。
企業側は、外国人材がスムーズに健康診断を受けられるよう、サポート体制を整えなければいけません。
通訳や翻訳サービスの手配、医療機関との連携などを事前に準備しましょう。
特定技能外国人の健康診断の診断項目
特定技能外国人の健康診断では、必須項目と任意項目に分けて検査を行います。
これらの検査は、労働者が日本で安全かつ健康的に働ける状態かどうかを確認するために必要です。
必須項目は、以下のとおりです。
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診断結果は、在留資格申請時に必要な健康診断個人票に記載されるため、漏れなく実施しなければいけません。
任意項目は、以下のとおりです。
|
項目は上記に加え、業務内容や医師の判断に応じて追加される場合があります。
これらの診断項目の実施は、労働者の健康状態を正確に把握できるほか、安全な労働環境の提供につながります。
特定技能外国人の健康診断で必要な書類
特定技能外国人の健康診断では、必要な書類を正確かつ適切に準備しなければいけません。
書類は在留資格申請時や雇用後の健康管理に使用されるため、不備があると手続きが遅れる可能性があります。
用意が必要な書類は、健康診断個人票と受診者の申告書です。
それぞれ記載内容や形式が異なるため、記入する際は注意しましょう。
2つの書類を詳しく解説します。
健康診断個人票
健康診断個人票は、医師が診断結果を記入する公式書類です。
検査項目ごとの結果や、医師の所見が記載されます。
特定技能外国人の場合は、日本語だけでなく母国語でも作成しなければいけません。
不備や誤記があると、申請手続きが滞る可能性があるため、慎重に確認しましょう。
また、企業側は母国語対応が可能な医療機関を選ぶか、翻訳サービスを手配する必要があります。
健康診断個人票は母国語で作成する
特定技能外国人の健康診断個人票は、労働者本人が内容を正確に理解できるよう母国語で作成します。
これにより、検査結果を労働者と企業側の双方で認識しやすくなります。
ただし、日本語訳も同時に用意し、在留資格を申請する時には日本語版も提出しなければいけません。
翻訳ミスや不備がないよう、専門性の高い翻訳サービスを利用しましょう。
受診者の申告書
受診者の申告書は、特定技能外国人本人が過去の病歴や現在の症状を記載する書類です。
母国語と日本語それぞれで準備し、不足や誤りがないよう注意します。
過去の病歴や現在治療中の疾患を正確に記載すれば、医師が適切な判断を下せます。
また、申告書は健康診断結果とともに保管し、必要に応じて確認できる状態にしておきましょう。
特定技能外国人の健康診断の費用
特定技能外国人の健康診断にかかる総額は、5,000~10,000円が目安です。
費用は、診察料と検査料から構成されています。
項目 |
費用 |
診察料 |
2,000~3,000円程度 |
検査料 |
3,000~7,000円程度 |
通訳料(通訳が必要な場合) |
1時間あたり5,000〜10,000円程度 |
健康診断の費用は、原則として企業が負担しなければいけません。
労働安全衛生法に基づき、特定技能外国人を受け入れる企業は、雇用者の健康管理を行う責任があるためです。
ただし、受け入れる前に行われる健康診断は、企業と外国人労働者との間で合意があれば、労働者自身が費用を負担するケースも認められています。
また、検査項目が増える、精密検査が必要になる場合には、追加費用が発生する可能性があります。
企業側は事前に必要な検査項目を確認し、予算を確保しておきましょう。
特定技能外国人の健康診断で企業側の注意点
特定技能外国人の健康診断で、企業側が注意すべき点は5つあります。
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それぞれを理解し、スムーズな健康診断を実現させましょう。
費用は企業が負担する
特定技能外国人の健康診断費用は、原則として受け入れ企業が負担します。
これは労働安全衛生法に基づき、雇用者が労働者の健康管理を行う責任があるためです。
雇用後の定期健康診断は、全額負担が義務付けられています。
ただし、雇用前に実施される健康診断は、企業と外国人労働者との間で合意があれば、一部または全額を労働者が負担できます。
この場合でも、事前に十分な説明を行い、双方の理解を得なければいけません。
費用負担の明確化は、外国人材との信頼関係を築くためにも必要です。
また、健康診断費用には通訳料や翻訳料が含まれる場合もあるため、追加費用も考慮し、予算計画を立てましょう。
健康診断を受ける時期には注意
特定技能外国人の健康診断を受ける時期は、計画を立てて明確にしなければいけません。
雇用前には在留資格申請時に診断結果を提出する必要があるため、入国する3ヶ月以内または国内在住の場合は1年以内の受診結果が求められます。
期間を過ぎた検査結果は無効になるため、受け直さなければなりません。
また、雇用後も定期的に健康診断を実施する必要があります。
これは日本人労働者と同様に法律で義務付けられており、原則として年1回行われます。
適切な時期に実施しないと、在留資格申請や法令遵守に支障をきたす可能性があるため注意が必要です。
企業側はスケジュール管理を徹底し、必要なタイミングで受診できるようサポート体制を整えましょう。
健康診断の結果は必ず確認する
特定技能外国人の健康診断結果は、受け入れ企業による確認が必須です。
これは労働者の健康状態を把握し、安全な労働環境を提供するためです。
特に、結核や感染症など他の従業員に影響を及ぼす可能性がある疾患は、迅速な対応が求められます。
診断で異常が見つかった場合は、医師と相談しながら適切な措置を講じましょう。
また、診断結果を確認した際は、記載内容に不備や誤りがないか確認します。
不備があると、在留資格申請や更新手続きに影響する可能性があるため注意が必要です。
診断結果は適切に保管し、必要に応じて提出できる状態にしておきましょう。
定期健康診断の結果は本人に通知する義務がある
企業は定期健康診断の結果を、特定技能外国人に通知する義務があります。
通知は労働安全衛生法で規定されており、労働者自身が自分の健康状態について正確に把握できるよう配慮するためのものです。
通知方法は書面で渡すか、口頭で説明するのが一般的ですが、いずれも母国語で説明できる体制を整えておく必要があります。
通知結果に対して質問や相談があった場合は、丁寧かつ迅速に対応しましょう。
このような取り組みは、労働者との信頼関係の構築につながるほか、安全で快適な職場環境づくりにも影響します。
受け入れ後も定期健康診断の実施が必要
特定技能外国人を受け入れた後も、定期的な健康診断の実施が必要です。
定期診断の実施は法令で義務付けられており、原則として年に1回行われます。
定期診断は、新たな疾患や体調不良の早期発見・治療につながるほか、職場全体の安全衛生管理にも影響します。
企業側は日程や内容について事前に通知し、従業員全員が受診できるよう調整しましょう。
また、多言語に対応可能な医療機関との連携や通訳サービスの手配なども欠かせません。
継続的な健診の実施は、労働者の健康維持と職場環境改善につながります。
登録支援機関について
登録支援機関は、特定技能外国人の受け入れ企業に代わり、支援計画の作成や実施を行う専門機関です。
主な支援業務は、4つあります。
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企業がこれらの業務を自社対応するのは多大な労力が必要です。
しかし、登録支援機関を活用すれば、業務負担を大幅に軽減できます。
また、外国人材が安心して働ける環境の構築も実現しやすいです。
登録支援機関は民間企業や行政書士などが運営しており、出入国在留管理庁に登録されています。
2024年2月時点では約9,545件が登録されており、それぞれが異なる分野や国籍に対応しているのが特徴です。
自社のニーズに合った登録支援機関を選べば、効率的かつ適切なサポートを受けられます。
参照元:登録支援機関とは?特定技能制度における支援内容や役割、選び方を解説
登録支援機関の選び方
登録支援機関を選ぶ際は、特定技能外国人の受け入れを円滑に進め、適切なサポートを提供できるかどうかに注目しましょう。
それぞれ得意分野や対応可能な国籍・言語、費用体系が異なるため、自社のニーズに合った機関を選ぶ必要があります。
選び方のポイントは、以下のとおりです。
選び方のポイン |
具体的な内容 |
注意点 |
ライセンス登録の有無 |
国から認定された登録支援機関であることを確認 |
登録されていない機関に依頼すると法令違反となる可能性がある |
対応可能な言語と国籍 |
労働者が話す言語や出身国に対応しているか確認 |
外国籍スタッフが在籍している場合、よりスムーズなコミュニケーションが期待できる |
業務委託費用 |
月20,000〜30,000円程度が相場。費用内容や追加料金の有無を事前に確認 |
安さだけで選ばず、サービス内容とのバランスを見る |
所在地と対応範囲 |
自社所在地や労働者の居住地に近いか、またはオンライン対応が可能か確認 |
地域特有の事情に詳しい機関はより適切なサポートが期待できる |
受け入れ分野の協議会加入状況 |
分野ごとに設置された協議会への加入状況を確認 |
協議会未加入の場合、特定分野での支援が制限される可能性がある |
実績と柔軟性 |
過去の支援実績や迅速な対応力を評価 |
実績が豊富な機関はトラブル時にも適切な解決策を提供できる |
これらのポイントを基準に比較検討することで、自社に最適な登録支援機関を見つけることができます。特に、対応言語や業務実績は労働者との信頼関係構築にも直結するため慎重に選びましょう。また、事前に複数の登録支援機関から見積もりやサービス内容を確認し、契約後のトラブルを防ぐことも大切です。
「スタッフ満足」の登録支援機関サービスについて詳しくはこちら
なお、スタッフ満足では特定技能外国人の採用から支援までトータルサポートが可能です。
健康診断についてよくある質問
健康診断についてよくある質問を3つ紹介します。
日本人との健康診断の違いは?
特定技能外国人と日本人の健康診断の内容に、大きな違いはありません。
しかし、手続きや書類面で異なる点があります。
特定技能外国人の場合は、在留資格申請に必要な健康診断個人票と受診者の申告書を提出する義務があります。
書類は労働者が理解できる母国語で作成し、日本語訳を添付しなければいけません。
日本人の場合は、書類の提出が不要です。
特定技能外国人の健康診断結果に問題がある場合がどうしたらいい?
特定技能外国人の健康診断結果に問題が見つかると、在留資格申請が不許可になる可能性があります。
特に、結核や感染症など重大な疾患があった場合、雇用契約やビザ申請の継続は難しくなるでしょう。
企業側は診断結果を確認した上で、速やかに医師と相談し、治療や再検査を進める必要があります。
また、労働者本人にも結果を正確に伝え、必要なサポートを提供しなければいけません。
入国管理局に提出しなければならない健康診断に関する書類は?
入国管理局に提出すべき健康診断に関する書類は、健康診断個人票と受診者の申告書です。
健康診断個人票は、医師による検査結果を記載した公式書類です。
すべての必須項目が含まれている必要があります。
受診者の申告書は、過去の病歴や現在の症状を労働者本人が記入するものです。
これらの書類は母国語と日本語で作成し、日本語訳を添付しなければいけません。
まとめ
特定技能外国人の健康診断は、日本で安全かつ健全に働くために欠かせません。
健康診断個人票と受診者の申告書を正確に作成し、入国管理局へ提出しましょう。
企業側は外国人材がスムーズに手続きできるようサポートし、質問に対して適切な対応を行う必要があります。
万全の準備を整え、特定技能外国人との信頼関係を築き、安全な労働環境を提供しましょう。