
特定技能外国人の採用に関わる届出の種類と分野別の手続き
海外から一定の技能をもつ外国人を特定技能外国人として雇用する際は、制度について十分に知識を得ておくことが大切です。
特定技能外国人を雇う際には、雇用主となる特定技能所属機関が責任をもって雇用状況などに関する報告を行わなくてはなりません。
登録内容に変更がある場合も、同じく届出が必要になります。
この記事では、特定技能の概要と出入国在留管理庁へ提出する2つの届出、さらに厚生労働省へ届け出る外国人雇用状況の届出について紹介します。
すべての分野に共通する届出以外にも報告や手続きが必要な建設業と造船・舶用工業分野についても取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。
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特定技能とは
在留資格「特定技能」は2019年に創設された制度で、人手不足が深刻化している12の産業分野について、一定の技能や知識を有する外国人の人材を受け入れるための制度です。
先に創設された技能実習は習得した技術を自国に持ち帰ってもらうという国際貢献のための制度ですが、特定技能はさらに就労可能な分野を広げて国内人材の確保が難しい産業分野で活躍してもらうもので、目的に大きな違いがあります。
外国人は日本語の試験と特定技能試験にそれぞれ合格した後「特定技能1号」として就労し、技能や日本語が熟練すると上位の資格である「特定技能2号」試験を受けられます。
特定技能1号と2号の違いは以下のとおりです。
【特定技能1号と2号の特徴】
特定技能1号 |
特定技能2号 |
|
対象分野 |
12分野 |
11分野 |
在留期間 |
上限5年 |
上限なし |
技能水準 |
相当程度の知識と経験を有する |
熟練した技能を有する |
日本語能力水準 |
生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を良好に修了した外国人は試験等が免除) |
試験等での確認は不要 |
転職の可否 |
可能 |
可能 |
家族の帯同 |
基本的に認められない |
可能 |
受入れ機関又は登録支援機関による支援 |
対象 |
対象外 |
上記の12分野は介護/ビルクリーニング業/建設業/素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業/造船・舶用工業/自動車整備業/航空業/宿泊業/農業/漁業/飲食料品製造業/外食業です。
特定技能2号は2分野のみに限られていましたが、2023年に介護を除く11分野まで拡大されました。
関連記事:特定技能とは?採用方法や企業にとってのメリットを解説
特定技能の届け出の種類
特定技能外国人を雇い入れる場合、企業側は出入国在留管理庁へ届け出なくてはなりません。
届出には「定期届出」と「随時届出」の2種類があります。
届出の内容や提出者、提出時期などを確認しておきましょう。
定期届出
「定期届出」は、年に4回出入国在留管理局に対して特定技能外国人の受け入れ・活動・支援の状況を報告するものです。
特定技能所属機関または登録支援機関が四半期ごとに必要書類を提出します。
定期届出の提出時期は以下のとおりです。
【定期届出の提出期間】
提出時期 |
提出期間 |
四半期に対応する時期 |
第1四半期 |
4月1日~4月15日 |
1月1日~3月31日 |
第2四半期 |
7月1日~7月15日 |
4月1日~6月30日 |
第3四半期 |
10月1日~10月15日 |
7月1日~9月30日 |
第4四半期 |
1月1日~1月15日 |
10月1日~12月31日 |
定期届出の提出方法は以下のとおりです。
【定期届出の提出方法】
窓口へ持参 |
特定技能所属機関の本店の住所を管轄する地方出入国在留管理官署へ直接提出 |
書類の郵送 |
特定技能所属機関の本店の住所を管轄する地方出入国在留管理官署へ郵送 |
インターネット申請 |
出入国在留管理庁電子届出システムを利用して届け出る |
郵送を選択する場合は、到着日が期日を過ぎないように早めに発送しましょう。
提出者
定期届出の提出者は、受入れ・活動状況に係る届出や賃金台帳の写しなどは特定技能所属機関が提出しなければなりません。
自社支援の場合は支援実施状況に係る届出書や定期面談報告書などを提出し、登録支援機関に委託している場合は登録支援機関が支援実施状況に係る届出書や定期面談報告書などを提出します。
【定期届出の種類と提出者】※
特定技能所属機関が提出する |
|
自社支援を実施している場合に |
|
登録支援機関が提出する書類 |
|
※参照元:出入国在留管理庁「特定技能制度定期届出書の記載方法と留意点」
随時届出
「随時届出」は、特定技能外国人に関する届出が必要になった日から14日以内に提出するものです。
随時届出が必要になるケースは以下のとおりです。
【随時届出が必要になるケース】
雇用条件が変更になったとき |
以下の項目に変更がある場合
|
契約期間満了前に雇用契約が終了するとき |
特定技能外国人への継続雇用が以下の理由で困難になったとき
|
新たな雇用契約を締結したとき |
雇用契約を終了し、終了に係る届出がされてから在留期間内に同一の特定技能所属機関と再度雇用契約を締結する場合 |
随時届出の提出期間は以下のとおりです。
【随時届出の提出期間】
|
随時届出の提出方法は以下のとおりです。
【随時届出の提出方法】
窓口へ持参 |
特定技能所属機関の本店の住所を管轄する地方出入国在留管理官署へ直接提出 |
書類の郵送 |
特定技能所属機関の本店の住所を管轄する地方出入国在留管理官署へ郵送 |
インターネット申請 |
出入国在留管理庁電子届出システムを利用して届け出る |
郵送を選択する場合は、到着日が期日を過ぎないように早めに発送しましょう。
提出者
随時届出は、特定技能外国人を雇い入れている特定技能所属機関が届け出るのが基本です。
ただし、登録支援機関で以下のような変更がある場合は、登録支援機関が随時届出を提出しなければなりません。
【登録支援機関が届け出るケース】
|
特定技能の届け出に必要な書類
特定技能の届け出に必要な書類について、添付書類も含めて確認していきましょう。
定期
定期届出の必要書類は以下のとおりです。
【定期届出の種類】
|
定期届出は特定技能所属機関が必ず提出するものと、自社支援・登録支援機関それぞれが提出するものに分かれているため、事前に確認のうえ書類を揃えてください。
随時
随時届出の必要書類は以下のとおりです。
【随時届出の種類】
(雇用条件を変更したとき)
|
上記に加えて、住民票の写しや証明書、通知書といった添付書類が求められる場合もあります。
届出を怠った場合などの罰則等
出入国管理及び難民認定法(入管法)では、各種届出について不履行(未提出)や虚偽の届出をした場合、罰則の対象になります。
出入国管理及び難民認定法では、届出を行わなかった場合は20万円以下の罰金が適用されます。
また、虚偽の届出は1年以下の懲役または20万円以下の罰金に、住所地の届出をしない・虚偽の住所地を届け出た場合は、在留資格が取り消されます。
さらに、各種届出が受理されてからその内容に不備や不適合が見つかり指導や助言を受けた場合、従わなければ改善命令の対象となります。
労働施策推進法に基づく届出の種類
2007年に義務化された「外国人雇用状況の届出」は、外国人労働者の雇用の安定・改善・再就職支援を目的として創設された制度です。
入管法を規定する出入国在留管理庁は法務省の外局として外国人材の受け入れに関するルールを定めていますが、外国人雇用状況の届出は厚生労働省が所管している労働施策総合推進法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)に基づいています。
この届出は、特定技能外国人を含む外国人労働者を雇用したとき・離職したときに必ず提出するものです。
外国人労働者を雇用している事業主が正しく届け出ることで、事業者だけではなく国も外国人労働者の雇用状況を把握できるようになり、雇用の安定や再就職支援といったサポートが行えます。
ここでいう外国人労働者とは、雇用形態や在留資格に関わらずすべての方が対象となります。
例外として特別永住者・在留資格「外交」・在留資格「公用」によって在留している方は含まれません。
外国人雇用状況の届出
外国人雇用状況の届出について、種類・期日を確認していきましょう。
【外国人雇用状況の届出 ※被保険者ではない場合】
雇用保険の被保険者ではない |
届出の期日 |
届出先 |
雇用保険被保険者資格取得届 |
翌月10日まで |
窓口へ持参・ インターネット申請 |
雇用保険被保険者資格喪失届 |
翌日から起算して10日以内 |
窓口へ持参・ インターネット申請 |
【外国人雇用状況の届出 ※被保険者である場合】
雇用保険の被保険者である |
届出の期日 |
届出先 |
外国人雇用状況通知書 (雇い入れ) |
翌月10日まで |
窓口へ持参・ インターネット申請 |
外国人雇用状況通知書 (離職) |
翌日から起算して10日以内 |
窓口へ持参・ インターネット申請 |
特別永住者の方・日本国籍を持たない方・在留資格「外交」「公用」の方は書類の提出は不要です。
派遣社員・派遣アルバイトの外国人労働者については、派遣元の企業などが届け出ます。
提出先は、雇い入れる外国人労働者の勤務先住所を管轄するハローワークへ直接持参するか、厚生労働省が提供する「外国人雇用状況届出システム」のWebサイトから申請します。
建設分野と造船・舶用工業分野で必要となる手続きについて
建設業と造船・舶用工業の2分野では、上記で紹介した各種届出に加えていくつかの手続きや届出が必要です。
それぞれの手続き・届出内容を確認していきましょう。
建設業
建設業では、以下の手続きと届出が必要です。
【建設業の届出と届出のタイミング】
手続き・届出の内容 |
関係先・届出先 |
FITSの受入後講習の受講・定期巡回の受入れ |
FITS |
特定技能外国人の受け入れ報告 |
国土交通省 |
特定技能外国人の退職報告 |
国土交通省 |
特定技能外国人の帰国時報告 |
国土交通省 |
特定技能外国人の受入れ継続が困難になった場合の報告 |
国土交通省 |
建設特定技能受入計画の変更に係る変更申請・届出 |
国土交通省 |
FITS(一般財団法人国際建設技能振興機構)は、特定技能として建設業での就労をスタートする外国人材のために講習会を実施しています。
特定技能外国人を雇う企業は、受け入れ後から6ヶ月以内に講習を受講させることが義務付けられています。
国土交通省への申請については、同省が提供する「外国人就労者管理システム」に登録し、必要に応じて随時報告や届出を行わなくてはなりません。※
※参考元:国土交通省「外国人就労者管理システム」
造船・舶用工業
造船・舶用工業では、以下の手続きと届出が必要です。
【造船・舶用工業の届出と届出のタイミング】
手続き・届出の内容 |
関係先・届出先 |
造船・舶用工業分野における事業者の確認 |
国土交通省 |
造船・舶用工業では、出入国在留管理庁への申請よりも前に国土交通省から「造船・舶用工業分野における事業者の確認」を受けなければなりません。
「造船・舶用工業分野における事業者の確認」は、造船法第6条第1項、小型船造船業法第2条第1項で規定されている項目です。
確認を受けた後、国土交通省から発行される「確認通知書」を添付して出入国在留管理庁へ申請を行います。
関連記事:特定技能「造船・舶用工業」とは?
申請や届出の内容を把握し早めに準備を
今回は、特定技能の届け出の種類や分野別に必要な手続きの種類について紹介しました。
特定技能所属機関が提出する届出には定期届出と随時届出があり、さらに自社支援と登録支援機関に委託している場合での提出書類や、届出に加えて理由や証明を行うための添付書類が必要になります。
申請については複雑になりやすく、期日に間に合わないトラブルなども考えられますが、事前に届出の種類や流れ・タイミングなどを押さえておくことで、ゆとりをもって準備ができます。
特定技能外国人材を受け入れる予定の方は、必要書類やスケジュールの確認をお早めに済ませておき、準備を進めてみてはいかがでしょうか。
スタッフ満足では、採用から定着、教育にいたるまでトータルでサポートを行っています。
豊富な知見とノウハウを持っているので、初めて特定技能外国人の採用を検討している方も、お気軽にお問い合わせください。