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特定技能「造船・舶用工業」とは?

近年、出入国管理法の改正により、新しい在留資格である特定技能が追加され、造船・舶用工業分野でも特定技能外国人の採用が可能になりました。
 
では、特定技能外国人を採用すると、どのような効果が得られるのでしょうか。
 
本記事では、特定技能「造船・舶用工業」の基本情報と、人材を採用するまでの流れを解説します。
国内の人材確保が困難だと言われるなか、特定技能外国人の採用を検討されている担当者様は参考にしてください。

目次[非表示]

  1. 1.そもそも特定技能とは?
  2. 2.特定技能「造船・舶用工業」の概要
  3. 3.「造船・舶用工業」の現状
    1. 3.1.有効求人倍率の推移
  4. 4.特定技能「造船・舶用工業」を取得することで就業できる業務と区分
    1. 4.1.「造船・舶用工業」における特定技能1号と2号の違い
  5. 5.受け入れ企業側の条件
    1. 5.1.「造船・舶用工業分野特定技能協議会」に入会する
    2. 5.2.国土交通省が設置した協議会の活動に協力する
    3. 5.3.適切な支援を実施する
  6. 6.特定技能1号「造船・舶用工業」の取得に必要な条件
    1. 6.1.①特定技能評価試験と日本語試験に合格する
    2. 6.2.②造船・舶用工業分野に該当する技能実習2号を修了する
  7. 7.特定技能2号「造船・舶用工業」の取得に必要な条件
  8. 8.特定技能「造船・舶用工業」の試験の概要
  9. 9.特定技能「造船・舶用工業」を有する外国人を採用する流れ
  10. 10.特定技能「造船・舶用工業」の採用にあたっての諸費用
  11. 11.特定技能外国人は人手不足を解消するための有効手段

そもそも特定技能とは?

2019年4月に新設された、新たな在留資格が、特定技能です。
 
特定技能は、国内の人材確保が困難な産業分野において、一定の技術や専門性を有する外国人を受け入れるための制度です。
特定技能外国人を受け入れることによって、各業界の人手不足を解消する目的があります。

関連記事:特定技能とは?採用方法や企業にとってのメリットを解説

特定技能「造船・舶用工業」の概要


特定技能「造船・舶用工業」は、全部で12分野(14業種)ある特定技能の一つです。
また、「造船・舶用工業」は、特定技能1号と特定技能2号の2つに区分されます。
 
さて、特定技能外国人の雇用に関して、押さえるべき要点があることはご存じでしょうか。
特定技能「造船・舶用工業」に該当する人材の雇用に関する要点は、以下の通りです。
 
【特定技能「造船・舶用工業」の雇用に関する要点】

要点

概要

雇用形態

直接雇用のみと定められており、派遣は不可

受け入れ人数

目標は最大11,000人

報酬

日本人が同様の業務に従事する場合の報酬額と同等以上

造船・舶用工業分野での特定技能外国人の受け入れ目標人数は、特定技能制度が新設された当初、最大13,000人とされていました。
しかし2024年1月現在では、新型コロナウイルスの影響による経済状況の変化を受けて、2024年3月までの目標人数が11,000人にまで引き下げられています。
なお、2023年6月の時点で、造船・舶用工業分野の特定技能1号外国人の在留数は、6,377人となっており、受け入れ目標人数からはほど遠いものです。
 
今後の経済や人手不足の状況次第では、さらに受け入れ人数の見直しが行われる可能性があります。
さまざまな状況に対応できるよう、人材確保に注力しながら、業務効率化もあわせて進めておくとよいでしょう。
 
参照元:法務省 出入国在留管理庁 (特定技能在留外国人数)

「造船・舶用工業」の現状

次に、造船・舶用工業分野の現状について、解説します。
                                      
まず、ほかの分野同様、造船・舶用工業分野においても、人手不足が大きな問題となっています。
 
造船・舶用工業が盛んな九州方面や瀬戸内海では、少子高齢化にくわえて、若者の地元離れが進み、若年層の就労者確保に苦労しているのが実態です。
 
なお、造船・舶用工業分野では、特定技能制度が始まった2019~2024年までの5年間で、約22,000人の人材が不足する見込みです。
生産性の向上や、国内の人材の確保に努めても、人手不足に陥ると予想されています。
 
参照元:法務省 出入国在留管理庁 (特定技能在留外国人数)

有効求人倍率の推移

では、実際にどの程度の人手不足に陥っているのか、有効求人倍率を用いて見てみましょう。
以下に、主な業務区分ごとの有効求人倍率を整理しました。
 
【造船・舶用工業分野における2017年の業務区分別の有効求人倍率】

  • 溶接:2.5倍
  • 塗装:4.3倍
  • 鉄工:4.21倍
  • 仕上げ:4.41倍
  • 機械加工:3.45倍
  • 電気機器組み立て:2.89倍

上記の通り、いずれの業務区分においても、求職者よりも求人数のほうが多く、深刻な人手不足に陥っていることがわかります。
 
四方向を海に囲まれている日本にとって、造船・舶用工業分野は、海上輸送に要する船舶を安定的に供給するために、必要不可欠な産業です。
造船・舶用工業の基盤を維持、発展させていくためにも、特定技能外国人を採用して、人手不足の解消に努めることが非常に重要だと言えます。
 
参照元:国土交通省 「造船・舶用工業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」

特定技能「造船・舶用工業」を取得することで就業できる業務と区分

特定技能「造船・舶用工業」を取得すれば、船舶の製造に関する業務に就くことができます。
その際、材料の調達や清掃などの、付随した業務も行わなければなりません。
同じ区分内で作業する日本人が普段から行っている業務も、特定技能外国人が担当することになります。
 
業務内容は、取得した特定技能の区分によって制限され、6つに分かれます。
以下に、特定技能「造船・舶用工業」における、業務区分を表にまとめました。
 
【特定技能「造船・舶用工業」における業務区分】

業務区分

主な業務内容

溶接

船舶の構造材料である厚板の溶接

塗装

水との摩擦軽減や防食のため、船体を塗装

鉄工

鉄板を切断、加工し、船体を構成するブロックを製造

仕上げ

エンジンの部品のはめ合わせや、プロペラの表面性状の向上

機械加工

エンジン部品などの切削加工

電気機器組み立て

船舶用配電制御システムの組み立てや配線、試験の実施

原則として、特定技能外国人は業務区分をまたがって従事することはできません。
ほかの区分に移行したいのであれば、移行先の区分の試験に改めて合格する必要があります。

「造船・舶用工業」における特定技能1号と2号の違い

特定技能1号と2号は、業務を行ううえで、どのような違いがあるのでしょうか。
 
特定技能1号が、与えられた業務に従事するのみなのに対して、2号では複数の作業員を指揮、管理する監督者としての業務が加えられます。
2024年1月現在、特定技能2号に指定されている業種は、「造船・舶用工業」と「建設業」のみです。
 
また、特定技能1号は、試験に合格すればどの業務にも従事できますが、2号は溶接区分のみに限られるので注意が必要です。
 
さらに、在留期間や家族の帯同の可否にも違いがあります。
特定技能1号の場合は、家族の帯同は不可で、在留期間は最長5年とされ、期間満了時には帰国しなければなりません。
対して、特定技能2号は、在留期間が無制限になり、家族の帯同も可能になるので、家族と日本で暮らし、永続的に業務に従事することが可能です。
 
特定技能2号の取得は、従事する側にとって多くのメリットがあります。
受け入れ企業側も、従業員の在留期間を気にする必要がなくなるので、双方にメリットがあると言えます。

受け入れ企業側の条件

特定技能外国人を受け入れるためには、企業側でもさまざまな条件を満たす必要があります。
以下で、主な条件について具体的に解説します。

「造船・舶用工業分野特定技能協議会」に入会する

造船・舶用工業分野の特定技能外国人の受け入れには、国土交通省が設置する「造船・舶用工業分野特定技能協議会」への入会が必須です。
 
この協議会に入会するためには、国土交通省から「造船・舶用工業分野に係る事業を営む者であること」の認定を受けなければなりません。
認定を受けるのであれば、まず、国土交通省のホームページ内にある、様式第1号の申請書をダウンロードし、必要事項を記入しましょう。
申請書を提出する際には、登記事項証明書と、造船・舶用工業分野に係る事業者であることを証明するための資料(請負契約書、売買契約書など)も添付してください。
送付を終え、申請に問題がなければ、様式第2号の確認通知書が交付され、認定手続きが完了します。
 
次に行うのが、協議会への加入です。
協議会のホームページから、様式第4号の申請書をダウンロードし、必要事項を記入して送付します。
申請書の提出後、申請内容に問題がなければ、加入通知書が交付されて加入完了となります。
 
なお、協議会への入会は、特定技能外国人を採用してから、4か月以内に手続きを行えば問題ありません。
 
書類は、どちらも国土交通省海事局船舶産業課宛てに送付します。
早めに書類を用意して、記入漏れがないよう注意し、スムーズに入会手続きを行いましょう。

国土交通省が設置した協議会の活動に協力する

協議会が調査などを実施した場合、構成員は必要に応じて協力するようにと、運用方針で定められています。
調査の主な内容は、現地調査や特定技能外国人の受け入れ状況報告、意見の徴収などです。
 
特定技能外国人の適切な受け入れや保護を実現するために、協議会の構成員は、互いに情報を共有しあいます。
構成員が相互に連携をとり、受け入れ時の問題点を協議することが、地域差の是正、そして各地域の特定技能外国人の受け入れ体制の整備へとつながります。
 
協議会に協力すれば、受け入れ企業が抱える問題の解決につながる可能性があり、造船・舶用工業分野全体に貢献できるということです。

適切な支援を実施する

特定技能外国人を採用した場合、職場や日常生活、社会上の支援を行う義務があります。
これらの支援を義務的支援と言います。
実際に、どのような支援を行うのか、以下に義務的支援の内容を整理しました。
 
【義務的支援の内容】

  • 事前ガイダンス
  • 出入国する際の送迎
  • 住居確保・生活に必要な契約支援
  • 生活オリエンテーション
  • 公的手続きへの同行
  • 日本語学習の機会の提供
  • 相談・苦情への対応
  • 日本人との交流促進
  • 転職支援(人員整理などの場合)
  • 定期的な面談・行政機関への通報

上に記した内容は、受け入れ企業側が必ず行わなければならない支援です。
 
事前ガイダンスや空港への送迎、生活に必要な契約や公的手続きなどを、主たる業務と並行して行うのは困難でしょう。
 
そのような場合は、出入国管理庁から認定された、登録支援機関に委託するという方法もとれます。
委託の費用はかかりますが、多くの支援業務の負担を抑えられるメリットがあるので、一案として検討してみてください。
 
また、義務的支援を補助する位置づけで、任意的支援があります。
たとえば、特定技能外国人が日本語を学習する際にかかる費用の支援や、相談窓口一覧の事前準備などが挙げられます。
 
任意的支援は、義務的支援と異なり、必ず実施しなければならないものではありません。
義務的支援をスムーズに進めるために、行ったほうがよいものと理解しておいてください。
 
特定技能外国人に安心して就労してもらえるよう、可能な範囲で実行しましょう。

特定技能1号「造船・舶用工業」の取得に必要な条件

特定技能1号「造船・舶用工業」を取得するための方法は、二通りあります。

①特定技能評価試験と日本語試験に合格する

まず挙げられる方法が、特定技能評価試験と日本語試験に合格するパターンです。
 
特定技能評価試験は、業務区分ごとに「造船・舶用工業分野特定技能1号試験」と「技能検定3級」があり、どちらかに合格する必要があります。
しかし、溶接区分のみ、技能検定が実施されていないため、特定技能1号試験しか受験できないので、注意しましょう。
 
また、日本語試験では、「日本語能力試験」をN4以上で合格、または「国際交流基金日本語基礎テスト」を受験して合格することが求められます。
日本語能力試験N4以上に合格するには、基本的な日本語が理解でき、日常会話が可能なレベルの日本語力が必要です。

②造船・舶用工業分野に該当する技能実習2号を修了する

次に、技能実習2号を修了し、特定技能1号に移行する方法を紹介します。
 
技能実習2号で、造船・舶用工業分野に関係する作業を修了した場合、特定技能1号としての、必要な技能や日本語の水準を満たしていると認められます。
そのため、1つ目の方法で紹介した試験が免除され、そのまま特定技能1号に移行することが可能です。
 
しかし、技能実習2号で造船・舶用工業分野と関係のない作業を修了した場合は、日本語試験は免除されますが、技能試験は受験して合格しなければなりません。

特定技能2号「造船・舶用工業」の取得に必要な条件

特定技能2号を取得するための条件も、把握しておきましょう。
 
まず、特定技能2号を取得するには、溶接区分において、「造船・舶用工業分野特定技能2号評価試験」もしくは「技能検定1級」を受験して、良い成績を収めなくてはなりません。
具体的には、自らの判断で適切な方法をとり、いかなる状態でも溶接を行うことができるかが問われます。
 
そのうえで、実務経験も積まなくてはなりません。
造船・舶用工業分野において、複数の作業員を指揮、命令、管理する監督者としての実務経験を2年以上有することが条件となっています。
 
技術だけではなく、監督者としての高度なコミュニケーション能力が求められる点が、特定技能1号とは異なる部分です。
 
なお、造船・舶用工業では、特定技能2号を取得できるのは溶接区分のみです。
ほかの区分では、特定技能2号を取得することはできません。

特定技能「造船・舶用工業」の試験の概要

次に、特定技能「造船・舶用工業」の試験の概要を説明します。
 
受検資格は、試験日において満17歳以上であり、日本国内で受験する場合、在留資格を有していることです。
試験内容は、学科試験と実技試験があり、原則として日本語で行われます。
 
以下に、学科試験の内容をまとめます。
 
【学科試験の内容】

問題数

30問

試験時間

60分

出題形式

〇×式

合格基準

正解率60%以上

専門用語や、難しい漢字にはふりがながふってあるので、漢字が読めなくて答えられないということはないでしょう。
 
また、実技試験は、実際に各業務に関する作業を行い、最終的な仕上がりで、合否が判定されます。
実務経験がある方や、人材育成センターなどで準備してきた方は有利と言えます。

特定技能「造船・舶用工業」を有する外国人を採用する流れ

特定技能外国人を採用するにあたり、日本国内に在留しているか、海外から来日するかで、手続きが異なります。
なお、採用面接から入社までは、少なくとも4~6か月はかかることを想定してください。


以下に、それぞれの採用までの流れをまとめました。
 
【特定技能「造船・舶用工業」を有する外国人を採用する流れ】

採用フロー

日本国内の外国人を採用する場合

日本国外の外国人を採用する場合

ステップ①

外国人が技能試験・日本語試験に合格、または技能実習2号を修了

ステップ②

受け入れ企業が外国人と雇用契約を締結

ステップ③

受け入れ企業、または登録支援機関が事前ガイダンスを実施

ステップ④

健康診断の受診

ステップ⑤

外国人が「在留資格変更許可申請書」を地方出入国在留管理局に提出

外国人、もしくは受け入れ企業が「在留資格認定証明書交付申請書」を地方出入国在留管理局に提出

ステップ⑥

外国人が、地方出入国在留管理局から「在留資格変更許可」を受け、在留カードを受け取る

受け入れ企業が、地方出入国在留管理局から「在留資格認定証明書」の交付を受け、外国人へ送付

ステップ⑦

受け入れ企業、または登録支援機関が適切な義務的支援を実施

外国人が自国にある日本大使館・領事館へ「在留資格認定証明書」を提出、ビザの申請を行う

ステップ⑧

就労開始

ビザの審査通過後、ビザが発給される

ステップ⑨

-

「在留資格認定証明書」の発行から3か月以内に外国人が日本へ入国

ステップ⑩

-

受け入れ企業、または登録支援機関が適切な義務的支援を実施

ステップ⑪

-

就労開始

上記のなかで、もっとも内容に差異が出るのは、在留資格の手続きです。
国内に在留している場合は、在留資格の変更で済みますが、海外から来日する場合は在留資格の新規取得が必要です。
また、海外から来日する場合は、「在留資格認定証明書」の送付の有無や、入国までの期限などが日本在留の場合と異なるので、忘れずに確認しておきましょう。

関連記事:特定技能外国人を採用する際の流れとかかる費用を解説

特定技能「造船・舶用工業」の採用にあたっての諸費用

採用までの流れがわかったところで、次に気になるのが費用面ですよね。
特定技能外国人を雇用するには、さまざまな費用がかかります。
 
以下に、特定技能外国人を雇用する際にかかる費用を整理しました。
 
【特定技能外国人を雇用する際にかかる費用】

雇用にかかる費用

概要

送り出し機関への手数料

海外から呼び寄せる場合にかかる費用で、国によって金額は前後する

人材紹介会社への手数料

年収の10~30%、または1名あたり固定の料金が発生する

在留資格申請に関する委託料

書類の作成などを委託する場合にかかる

手数料は、雇い入れる外国人の出身や人材紹介会社、委託業者によって異なるので、採用を検討する際に確認しておくとよいでしょう。

関連記事:特定技能外国人受け入れにかかる費用相場とコストダウンのポイント

特定技能外国人は人手不足を解消するための有効手段

いかがでしたでしょうか。
 
人手不足が深刻な造船・舶用工業分野で、特定技能外国人の雇用は非常に重要です。
雇用を検討する際、特定技能外国人の採用は手続きが多く、億劫に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、登録支援機関や委託業者などを利用すれば、日々の業務に影響することなく、人手不足を解消できます。
 
特定技能の概要を理解して、事前に書類の準備や登録支援機関の選定を行い、効率的に採用までつなげましょう。
 
スタッフ満足では、採用から定着、教育にいたるまでトータルでサポートを行っています。
豊富な知見とノウハウを持っているので、初めて特定技能外国人の採用を検討している方も、お気軽にお問い合わせください。

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