介護業界における人手不足の原因と解決のための手立てを解説
昨今、日本では多くの業界で人手不足が深刻化しており、介護業界も例外ではありません。
この問題に立ち向かうには、まずは原因を知ったうえで、解決に向けて行動することが不可欠です。
今回は、介護業界を取り巻く人手不足の原因を、解決のための手立てとともに解説します。
解決策として有効な“外国人人材の採用”も紹介しますので、「人手不足の問題を解決し、介護施設を円滑に運営したい」とお考えのご担当者様はご覧ください。
目次[非表示]
- 1.介護業界の人手不足の現状
- 2.介護業界における人手不足の原因
- 2.1.原因① 少子高齢化
- 2.2.原因② 採用競争の激化
- 2.3.原因③ 離職率の高さ
- 2.4.原因④ 業界に対してネガティブなイメージがある
- 3.介護業界で人手不足が起こることによる問題
- 4.介護業界を取り巻く人手不足を解決するための手立て
- 4.1.労働環境・条件を整える
- 4.2.ITツールを導入する
- 4.3.採用手法を検討する
- 4.4.外国人人材の受け入れを進める
- 4.5.イメージアップに取り組む
- 4.6.現場のフォロー・カウンセリング体制を整える
- 4.7.資格取得支援制度を導入する
- 5.介護業界において外国人人材を雇用する方法
- 6.特定技能「介護」とは
- 7.特定技能を有する外国人を採用するメリット
- 8.介護業界において人材不足の問題を解決した成功事例
- 9.介護業界における人手不足には早めの対応が不可欠!外国人人材の採用を選択肢に入れましょう
介護業界の人手不足の現状
人手不足の原因を説明する前に、介護業界の現状を確認しておきましょう。
以下の表に、厚生労働省が2021年に発表したデータに基づいて、都道府県が推計した介護職員の必要数をまとめました。
【介護職員の必要数】
介護職員の必要数 |
|
2023年度 |
約233万人(5万5,000人/年) |
2025年度 |
約243万人(5万3,000人/年) |
2040年度 |
約280万人(3万3,000人/年) |
参考までに2019年度における介護職員の数を挙げると、約211万人でした。
この人数が変動していないと仮定したうえで比較すると、2023年度には約22万人、2025年度には約32万人、2040年度には約69万人もの職員が不足することになります。
それぞれの年度に必要な介護職員の数を満たすには、2025年度までに年間5万3,000人、2040年度までに年間3万3,000人の増員が求められています。
人手不足が特に顕在化するのは、これからの数年であると考えられており、問題の解決に向けて迅速に対応しなければなりません。
参照元:厚生労働省「別紙1 第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」
介護業界における人手不足の原因
介護業界が人手不足に陥ることには、いくつかの原因が考えられます。
ここでは、4つの原因を紹介します。
原因① 少子高齢化
介護業界における人手不足の原因として、まず挙げられるのは少子高齢化です。
2023年に発表された「令和5年版高齢社会白書」によると、1人の65歳以上人口を支えるために必要な15~64歳人口の数は、以下の通りです。
【1人の65歳以上人口を支えるのに必要な15~64歳人口の数】
65歳以上人口を支えるために必要な15~64歳人口の数(1人あたり) |
|
1950年 |
12.1人 |
2022年 |
2人 |
このデータから、15~64歳人口が65歳以上人口を支える負担は増加していることがわかります。
つまり、介護を必要とする65歳以上の人口は増える一方で、元気に働くことができる15~64歳人口、すなわち“労働人口”は減少しているということです。
労働人口の減少という点では、ほかの業界も同じ状況です。
しかし、主に高齢者を対象とする介護業界では、高齢化によって特に需要が高まっており、人手不足の問題が深刻化しています。
参照元:内閣府「令和5年版高齢社会白書 P3~4」
原因② 採用競争の激化
競争が激しく採用が困難なことも、介護業界の人手不足を招いています。
人手不足がさけばれる介護業界ですが、その志望者の数は決して多くありません。
多くの介護施設が人手不足の問題を抱えているために、介護職を志望する限られた人材を取り合っているのが現状です。
結果として、より良い待遇を用意できる施設に人材が集中し、そうでない施設においては人手不足が加速してしまいます。
介護施設では、競合他社との競争に勝てる採用計画を立てるとともに、介護職以外を志望している人材を集める手段も検討する必要があります。
原因③ 離職率の高さ
介護業界では、人間関係のストレスによる離職率の高さによっても、人材不足が起こっています。
介護の現場では、利用者や利用者のご家族、医療機関スタッフといったさまざまな方と関わることでやりがいを感じる反面、人間関係に悩むことも多いとされています。
たとえば、「同僚とうまくコミュニケーションがとれない」「利用者が言うことを聞いてくれない」「医療機関スタッフと意見が食い違う」など、悩みも人それぞれです。
職場での人間関係に問題があると、仕事に対するモチベーションが下がり、最終的には離職につながってしまいます。
離職が増えれば、人手不足な介護業界だと人材不足に陥るのは当然のことですから、離職を食い止めることこそ、介護業界における本質的な課題であるともいえます。
原因④ 業界に対してネガティブなイメージがある
人手不足には、介護業界に対するネガティブなイメージも関係しています。
若手人材や未経験人材の介護業界への転職を促すのにあたって、これらのイメージは大きなハードルとなっています。
第6回介護人材確保地域戦略会議で発表された、介護の仕事に対するネガティブなイメージで上位を占めた項目をピックアップしました。
【介護の仕事に対するネガティブなイメージ】
|
介護業界に対するイメージを少しずつでも変えていかなければ、人手不足は悪化の一途を辿る可能性があります。
参照元:株式会社リクルートキャリア HELPMAN JAPANグループ「福祉・介護に関する 意識調査結果とイメージの変化 P7」
介護業界で人手不足が起こることによる問題
介護業界の人手不足が深刻化することによって起こりうる問題は、“利用者の安全の確保が難しくなる”ということです。
介護の現場では、ご自身よりも体格の大きな方を介護することも少なくありません。
入浴や食事、排泄の介助、車椅子からベッドへの移動など、どのような場面であっても利用者の安全を守る必要があります。
しかし、人手不足の状態では、本来なら2名で介助すべき場合でも、1名で行わなければならないシチュエーションが起こりかねません。
さらに、夜勤を含むシフト勤務の場合は不規則な勤務体系となり、生活リズムが乱れると体力的・精神的な負担が大きくなります。
負担が大きくなることで離職者が増えれば、残った介護職員の負担がより大きくなり、離職につながるという悪循環が生まれるかもしれません。
最悪の場合、人手不足によって介護施設の運営そのものが困難になることも考えられます。
介護業界を取り巻く人手不足を解決するための手立て
すでにご紹介したように、介護業界への需要が高まる一方で、介護職員の数は不足しています。
この状況を打破するには、人手不足を解決するための手立てを講じなければなりません。
ここからは、具体的に7つの手段を解説しますのでぜひ参考になさってください。
労働環境・条件を整える
介護職員が働きやすい環境・条件を整えることは、離職率の低下に直結します。
介護職員一人ひとりの負担を減らすために役立つとされているのが、“ユニットケア”です。
ユニットケアとは、10名程度の利用者を1ユニットとしたうえで、利用者は自宅のような環境の施設で共同生活し、専任の職員がケアを行う介護手法のことです。
従来の集団ケアでは、全体のスケジュールに合わせて業務を行う必要があるのに対して、ユニットケアでは、小規模のユニットごとに業務に取り組めます。
そのため、利用者の希望をより一層尊重しながら、目の行き届いた介護を実現することが可能です。
小規模であるがゆえに自由度が高く、やりがいをさらに実感できることで、介護職員のストレスを抑えることにもつながります。
また、教育制度や休暇制度を整えることも、人手不足を解決するためには欠かせません。
入職時に手厚い教育があると、介護職員は安心して業務に取り組めるため、短期離職を防ぐことができます。
必要なタイミングで休暇を取れれば、結婚・出産・家族の介護などの環境の変化があっても、離職を避けられる可能性もあります。
ITツールを導入する
ITツールを導入して、業務の効率化を図って負担を減らすことも、介護業界における人手不足の解決につながります。
多くの介護施設では、介護記録や日報などの書類作成を紙媒体への手書きやExcelへの入力で行っており、手間や時間がかかるため、職員の負担となっているのが実情です。
そこで、ITツールを導入して書類作成を簡易化すれば、大幅な工数・時間を削減することが可能です。
これらの事務作業に費やしていた時間を介助にあてることができ、より充実したケアを行うこともできます。
ほかにも、介護職員の体力的な負担を軽減するために、介護ロボットを導入するのも効果的です。
身体的介助をサポートできる介護ロボットを導入すれば、腰痛といった身体的な不調による離職を減らせるかもしれません。
採用手法を検討する
介護業界における人手不足を解決するには、採用手法を見直すのも一つの手です。
「なかなか応募がこない」「人手不足で急いで採用しなければならない」といった事態は、介護施設では起こりうるものです。
そのような場合、希望に応じた人材を仲介してくれる人材派遣・紹介会社を利用するのもよいでしょう。
紹介を受けられるようにあらかじめつながりを作っておくと、いざというときに速やかに人材を確保できるので安心です。
なお、大手求人サイトを利用すれば、必ず応募が集まるというわけではありません。
介護職に興味を持っている人材に見つけてもらえるように、介護に特化した求人サイトを利用することをおすすめします。
外国人人材の受け入れを進める
外国人人材を受け入れ、雇用の選択肢を広げることも、介護業界の人手不足を解決するのに有効です。
雇用できる在留資格としては、以下の4種類があります。
【介護業界で雇用できる在留資格】
|
「日本で働きたい」と考える外国人は若年層が多く、ある程度の体力が求められる介護の現場において活躍が見込めます。
外国人人材を受け入れる際は、定着に向けて施設側の体制を整えることも欠かせないため、現場で協力することが重要です。
なお、介護業界において外国人人材を雇用する方法や、在留資格のうち特定技能の詳細は後述しますので、そちらをご覧ください。
イメージアップに取り組む
介護業界のイメージをポジティブに変えていくことも、人手不足を解決するための手立てとして挙げられます。
先述したように、介護業界には「体力的・精神的にきつそう」というネガティブなイメージがあります。
ネガティブなイメージを払拭するには、募集要項に正しい情報を記載するだけでなく、理念や取り組みを公表したり、介護業界の魅力を発信したりすることも大切です。
どの介護施設も、誇りとやりがいを感じながら働いている職員によって支えられているはずです。
そのような介護職員と一緒に働くことが、「おもしろそう」「かっこいい」と思ってもらえるような情報を積極的に発信していきましょう。
「大手ではないので、情報発信にお金をかけられない……」という介護施設もあるかもしれません。
しかし今の時代は、SNSをはじめ費用をかけずに行える方法は多数あるので、施設に合う発信方法をぜひ探してみてください。
現場のフォロー・カウンセリング体制を整える
介護業界における人手不足を解決するためには、現場のフォロー・カウンセリング体制の整備も忘れてはなりません。
介護施設では、人間関係の悩みで離職する職員が少なからずいます。
そのため、職場に気軽に相談できる相談窓口が設けられていれば、介護職員の悩みの解決につながり、離職を食い止められる可能性があります。
施設としても、さまざまな職員の意見を集めて検証することで、労働環境の改善にもつなげることができるはずです。
介護労働安定センターが実施した調査によると、“相談窓口が設置されていない職場で働く職員は仕事に関する悩みを多く抱えている”という結果も出ています。
職場に相談窓口を設置し、現場のフォロー・カウンセリング体制を整えることは、介護業界の人手不足に対して有効であるとわかります。
参照元:公益財団法人 介護労働安定センター「介護労働の現状について 令和元年度 介護労働実態調査の結果と特徴 P18~19」
資格取得支援制度を導入する
介護福祉士の資格を取得する“資格取得支援制度”の導入も、人手不足を解決するのに効果的です。
介護福祉士は、専門知識と技術を活かして利用者の身体上・精神上のケアや、ほかの職員の指導・育成を行う、介護のスペシャリストです。
数ある介護に関する資格のなかで唯一の国家資格であり、取得すると仕事の幅が大きく広がります。
キャリア形成をサポートすることで、職員は手当がついて給与を上げることができ、それによってモチベーションがアップすると、離職率の低下にもつながります。
また、介護福祉士の資格取得には費用がかかるため、この費用を施設側で負担すれば、介護福祉士を目指す人材が募集してくれるかもしれません。
介護業界において外国人人材を雇用する方法
ここまでは、介護業界における人手不足の原因や、解決のための手立てを解説しました。
ここからは、人手不足を解決するための手立てのなかでも“外国人人材の受け入れ”に着目し、説明していきます。
外国人人材を雇用する方法は、以下の通りです。
【介護業界において外国人人材を雇用する代表的な方法】
在留資格名 |
概要 |
在留期間 |
特定技能1号 |
人手不足が深刻化する特定分野での人材採用を目的とする在留資格 |
最大5年間 |
技能実習 |
発展途上国をはじめとする諸外国に対し、日本の介護分野の技術を移転することを目的とする在留資格 |
技能実習1号:1年 |
在留資格「介護」 |
日本で介護職として就職するための在留資格 |
制限なし |
特定活動(EPA介護福祉士) |
インドネシア・フィリピン・ベトナムとの経済連携を強化するために創設された在留資格 |
4年間 |
ほかにも、介護福祉士養成施設に通う介護ビザを有する留学生や、定住者・永住者という身分上のビザを有する外国人も雇用の対象です。
介護に関する在留資格といっても、資格によって受け入れる流れが異なるため、事前に詳細を確認したうえで、施設に適した人材の採用に向けて動き出しましょう。
特定技能「介護」とは
特定技能「介護」とは、介護職ならびに看護助手としての就労を目的とする在留資格のことです。
介護分野において深刻化する人手不足を解決するために、2019年に施行されました。
なお、特定技能の分野によっては1号と2号がありますが、介護分野は1号しかありません。
在留期間を超えて日本で働くには、介護福祉士の国家試験に合格し、在留資格「介護」の取得を目指す必要があります。
特定技能「介護」を有する外国人に任せられる業務は、入浴や食事、排泄などの身体介助や、レクリエーションの実施の補助などです。
2024年6月現在、訪問介護サービスでの雇用は認められていませんが、厚生労働省の有識者検討会にて、特定技能を有する外国人も従事できるように検討が進められています。
特定技能を有する外国人を採用するメリット
外国人人材を雇用すると、多くの恩恵を得ることができます。
【特定技能を有する外国人を採用するメリット】
|
外国人採用においては、「日本で頑張って働く」「母国に仕送りして家族を養う」という意欲が高い人材の雇用が見込めます。
また、異国で真摯に仕事に取り組む外国人の姿は、日本人の職員にも良い影響を与え、モチベーションの向上につながるかもしれません。
関連記事:介護事業者が外国人労働者を採用するメリット・デメリット
介護業界において人材不足の問題を解決した成功事例
深刻化する人手不足を解決するためには、外国人人材の受け入れを進め、雇用の選択肢を広げることが必要不可欠となってきています。
そこでここからは、特定技能「介護」を有する外国人を採用し、人手不足を解決した事例を紹介していきます。
医療法人愛信会 介護老人保健施設 愛の里
医療法人愛信会 介護老人保健施設 愛の里は、外国人人材を雇用することによって、人手不足の問題を解決した施設です。
【施設の概要】
施設名 |
医療法人愛信会 介護老人保健施設 愛の里 |
業種 |
医療機関 介護事業 |
従業員数 |
100名 |
就労中の外国人人材 |
15名(内定済み含む)※2023年12月時点 |
この施設では、日本人の採用に苦戦しており、思うような人材が集まらない状況が続いていました。
特定技能を有する外国人の採用・支援に強みをもつ「スタッフ満足」に相談したところ、十分な日本語能力と介護士の経験がある外国人が採用に至りました。
この職員の働きぶりが好評だったこともあり、その後は続々と採用が決まり、現在ではインドネシア・ベトナム・ミャンマー・ネパールなど、さまざまな国の方が働いています。
「人手不足に悩んでいた私たちにとって、外国人の職員は大切な存在です」という声が上がるほど、人手不足の解決に大きな役目を果たしています。
医療法人愛信会 介護老人保健施設 愛の里 様の導入事例はこちら
介護業界における人手不足には早めの対応が不可欠!外国人人材の採用を選択肢に入れましょう
本記事では、介護業界を取り巻く人手不足の原因を、解決のための手立てとともに解説しました。
介護業界は、少子高齢化や採用競争の激化、離職率の高さなどによって人手不足に陥っています。
この状況を打破するためには、介護職員が働きやすい環境・条件を整備することは必須です。
また、採用手法を見直したうえで、外国人人材の受け入れを進めるのも人手不足を解決するのに効果的です。
スタッフ満足では、特定技能を有する外国人をはじめとする、外国人採用をお手伝いしております。
日本語や介護に関する技術を事前研修するなど、人材の教育に力を入れているので、人手不足にお悩みのご担当者様は、ぜひお問い合わせください。