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入管法改正の背景や、そのメリットとデメリットを解説

入管法は、日本から出国、あるいは日本へ入国する、すべての人を公正に管理するとともに、難民の認定手続きを整備するための法律です。
人手不足が深刻化する日本では、外国人労働者の受け入れを拡充すべく、都度、入管法の改正が行われてきました。
 
そこで本記事では、入管法改正の背景や、それにより企業にもたらされるメリットとデメリットを解説します。
外国人労働者の雇用を検討している事業者様は、ぜひ最後までご覧ください。



目次[非表示]

  1. 1.入管法(出入国管理及び難民認定法)とは
  2. 2.入管法改正の歴史と背景
    1. 2.1.2019年の入管法改正
    2. 2.2.2021年、入管法改正案の取り下げ
    3. 2.3.2023年の入管法改正
  3. 3.入管法改正に関する今後の見通し
  4. 4.入管法改正で企業にもたらされるメリット
  5. 5.入管法改正で企業にもたらされるデメリット
  6. 6.外国人労働者の採用に際して企業が留意すべきポイント
    1. 6.1.ポイント① 外国人労働者を理解する
    2. 6.2.ポイント② フォロー体制を構築する
    3. 6.3.ポイント③ 教育プログラムを構築する
    4. 6.4.ポイント④ 在留資格を把握して管理する
  7. 7.入管法の改正により外国人労働者の雇用が推進された

入管法(出入国管理及び難民認定法)とは

入管法とは、日本に出入国するすべての人の在留に関する公正な管理を図るために制定された法律です。
ポツダム命令に基づいて1951年10月4日に公布されており、正式名称を“出入国管理及び難民認定法”といいます。
その目的は、出入国管理及び難民認定法の第一条にて、以下のように記されています。

(目的)
第一条 出入国管理及び難民認定法は、本邦に入国し、又は本邦から出国する全ての人の出入国及び本邦に在留する全ての外国人の在留の公正な管理を図るとともに、難民の認定手続を整備することを目的とする。

引用元:e-Gov法令検索 

要するに、日本からの出国・入国を管理し、在留資格や不法滞在、難民の認定手続きを定める法律ということです。
 
なお入管法は、出入国する外国人だけでなく、雇い入れる企業も把握しておくべき法律です。
外国人を雇用する企業は、入管法に基づいて採用活動を行い、外国人の在留資格を管理する必要があります。

入管法改正の歴史と背景

入管法は、1951年に公布されて以来、改正を繰り返してきました。
そのなかでも、近年の2019年・2021年・2023年の動きについて解説します。

2019年の入管法改正

2019年の入管法改正では、在留資格“特定技能”が創設されました。
 
特定技能は、国内人材を確保するのが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性と技能を有する外国人を受け入れることを目的とした在留資格です。
これを受けて、従来は外国人が就労できなかった12分野14業種において、外国人労働者の就労が可能になりました。
人手不足が深刻化している業種において、長期的に外国人労働者を雇用できるようになったわけです。
 
特定技能には“特定技能1号”と“特定技能2号”、2種類の在留資格があります。
それぞれの違いは、以下の表にまとめましたので、ご参照ください。
 
【特定技能1号と特定技能2号の違い】


特定技能1号

特定技能2号

目的

相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格

熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格

在留資格

  • 1年を超えない範囲内で法務大臣が個々の外国人について指定する期間ごとの更新
  • 通算で上限5年まで
  • 3年、1年、6か月ごとの更新
  • 上限なし

技能水準

  • 試験などで確認
  • 技能実習2号を良好に終了した外国人は試験など免除
  • 試験などで確認

日本語能力水準

  • 生活や業務に必要な日本語能力を試験などで確認
  • 技能実習2号を修了した外国人は試験免除
  • 試験などでの確認は原則として不要

受け入れ見込数(上限)​​​​​​​

  • あり
  • なし

家族の帯同

  • 基本的に認められない
  • 要件を満たせば可能(配偶者・子)

支援

  • 受け入れ機関または登録支援機関による支援の対象
  • 受け入れ機関または登録支援機関による支援の対象外

分野

  • 介護
  • ビルクリーニング
  • 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
  • 建設業
  • 造船・舶用工業
  • 自動車整備業
  • 航空業
  • 宿泊業
  • 農業
  • 漁業
  • 飲食料品製造業
  • 外食業(全12分野)
  • ビルクリーニング
  • 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
  • 建設業
  • 造船・舶用工業
  • 自動車整備業
  • 航空業
  • 宿泊業
  • 農業
  • 漁業
  • 飲食料品製造業
  • 外食業(全11分野)

従来は、外国人労働者を雇用するための“技能実習”という制度もありました。
しかし、技能実習の場合は、“技能移転を通じた、開発途上国への国際協力”が目的であり、最長5年間しか日本に滞在できませんでした。
その点、特定技能2号に移行すれば、上限なく日本で働きつづけることが可能になったのです。

関連記事:特定技能とは?採用方法や企業にとってのメリットを解説

2021年、入管法改正案の取り下げ

2021年、新たに入管法改正案が提出されましたが、多くの反対の声が上がり、廃案となりました。
では、一体どのような改正案だったのか、その概要を見てみましょう。
 
【2021年に提出された入管法改正案の概要】

  • 難民認定手続き中の外国人でも、申請回数が3回以上となった場合、強制送還が可能となる
  • 不法滞在者を速やかに帰国させる
  • 強制送還を拒む者に対して刑事罰を科す
  • 難民には該当しないが、紛争などから逃れてきた人を、補完的保護対象者として保護する
  • 収容施設ではなく、支援者や親族など入管が認めた監理人のもとで生活できる制度を新設する

上記の改正案には、難民手続き中の外国人を強制送還できるうえ、送還を拒否する者には刑事罰を科すといった、外国人にとって負担の大きい内容が盛り込まれています。
送還を拒む外国人のなかには、帰国すれば身に危険が及ぶ方や、日本で生まれ育った方、日本人の配偶者がいる方が多くいます。
このような背景と人権保護の観点から、懸念の声が寄せられたわけです。
 
また、2021年3月6日、入管施設に長期収容されていたスリランカ人の女性が、収容中に亡くなる事件が発生し、この事件も大いに影響を与えました。
その後、批判がさらに強まり、改正案が取り下げられることとなったのです。

2023年の入管法改正

2023年6月9日に改正入管法が成立し、同年同月16日に公布されました。
では、2023年の入管法改正の変更点を見てみましょう。
 
【2023年の入管法改正の概要】

  • 難民認定の申請が3回目以降の場合、相当な理由を示せなければ本国への強制送還が可能となる
  • 難民には該当しないが紛争などから逃れてきた人を、補完的保護対象者として保護する
  • 退去命令を受けたにもかかわらず、送還を妨害した場合の刑事罰を新設する
  • 入管施設への収容の要否を3か月ごとに見直す
  • 収容施設ではなく、支援者や親族など、入管が認めた監理人の下で生活できる制度を新設する 

この改正の必要性を理解するには、日本が抱えている問題を認識しておく必要があります。
 
【日本が抱える課題】

  • 収容施設での収容が長期化している
  • 難民などを確実に保護する制度が不十分である
  • 日本からの退去が難しい外国人が多い

日本から退去することが決まった外国人のほとんどは、何事もなく帰国しています。
しかし、ごく一部の外国人は、難民認定申請を繰り返すことで退去を回避したり、航空機内で暴れたりすることで、帰国を困難にさせていました。
日本では、退去が確定した外国人を本国に送還するまで、収容施設で収容することになっていましたが、それが原因で収容期間が長期化していたのです。
 
このような問題を解決すべく、以下のような考えをもとに、入管法の改正が施行されることになりました。

➀ 保護すべき者を確実に保護する。
➁ その上で、在留が認められない外国人は、速やかに退去させる。
➂ 退去までの間も、不必要な収容はせず、収容する場合には適正な処遇を実施する。

引用元:出入国在留管理庁

この改正により、外国人の長期収容が解消されると考えられています。
しかし、2021年に廃案となった内容を引き継いでいる箇所が多く、国内外から批判を浴びているのも事実です。

入管法改正に関する今後の見通し

入管法改正の今後の動向として、専門分野に特化した外国人労働者の受け入れを、積極的に推進することが予想されます。
その例として、特定技能の受験機会の拡大や、一定のポイントを満たす外国人労働者を優遇する“高度人材ポイント制”の開始と調整が挙げられます。
 
2019年に特定技能が創設され、外国人労働者の採用ハードルが大きく下がりました。
しかし、入管法の改正については、人権保護の観点から、さまざまな議論が交わされており、外国人を雇用する企業としては、今後も目が離せません。

入管法改正で企業にもたらされるメリット

入管法の改正により、外国人労働者の受け入れが増加することが期待されています。
では、企業が外国人労働者を受け入れることで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
 
【入管法改正で企業にもたらされるメリット】

  • 人手不足を解消できる
  • 外国人労働者を長期雇用できる
  • 職場が活性化される

まず考えられるのは、人手不足の解消です。
外国人労働者を採用の対象に加えることで、求職者の母数が増え、恒常的な人手不足に悩む業界や業種でも、適切な人数を確保できる可能性が高まります。
 
また、企業は、外国人労働者を長期的に雇用できるようになります。
技能実習や特定技能1号は、受け入れ期間を最長5年までと定められていました。
その点、特定技能2号なら、その外国人に転職されない限り、無期限での雇用が可能です。
くわえて、特定技能外国人には、高い志をもつ方が多いため、熱意のある意欲的な従業員が企業に増えることで、職場の活性化にもつながります。
 
採用が思うように捗らず、人手不足に陥っている企業にとって、外国人労働者の受け入れは、現状を打破する有効な手立てとなるでしょう。

入管法改正で企業にもたらされるデメリット

一方で、外国人労働者を受け入れることにより、デメリットが生じるのも事実です。
 
【入管法改正で企業にもたらされるデメリット】

  • スムーズなコミュニケーションがとりにくい
  • 価値観の相違によりトラブルが発生する可能性がある
  • 企業が在留資格を理解しておかなければならない

例として、文化や習慣、言語の違いで、思うようにコミュニケーションがとれない状況に陥ることが挙げられます。
日本人と外国人とでは、育った国の文化により価値観の基準が異なります。
考え方の違いから思うように意思を疎通できず、トラブルに発展するといった状況も、起こり得るわけです。
そのため、日本人と外国人、双方がお互いを理解しようとする心構えと配慮が必要です。
 
また、外国人労働者ならではの雇用に関する手続きや、就労のルールがあります。
在留資格によっては就けない業務もあるため、そのような規則は企業側が理解しておかなければなりません。
社内に外国人労働者の雇用に精通した社員がいない場合は、専門機関や行政書士に相談するのが無難です。

外国人労働者の採用に際して企業が留意すべきポイント

外国人労働者を採用する際、メリットとデメリットが生じることはご理解いただけたと思います。
もし、メリットが大きいと感じるなら、ぜひ外国人労働者の採用を検討してみてください。
その際、いくつかのポイントを押さえておくと安心です。
 
以下では、外国人労働者を採用する際のポイントを紹介します。

ポイント① 外国人労働者を理解する

先ほどもお伝えした通り、外国人を採用する際は、国ごとに異なる文化や習慣を理解する心がけが大切です。
 
特に、宗教的配慮は欠かせません。
多くの外国人にとって、宗教は極めて重要な文化です。
宗教上の理由で食べられないものがあったり、お祈りや断食が必要だったりすることも珍しくありません。
適宜、業務中にお祈りの時間を設けるなどの配慮が必要です。
なお、宗教で禁止されている行為を無理強いするのは、ハラスメントに該当します。
 
また、文化や習慣への無理解によって差別が生じることは、なんとしても避けたいところです。
同じ職場で働く方に対して、差別的な態度を取るのはもちろんですが、採用に際して国籍や出自を理由に、労働条件の不利益な変更を行うことは認められていません。
 
宗教をはじめとする価値観は、国によって大きく異なることを理解し、社内の体制を見直しておきましょう。

ポイント② フォロー体制を構築する

外国人労働者の雇用を成功させるには、フォロー体制の充実が欠かせません。
 
社会保険の加入手続きや、外国人雇用に関する書類の作成にも、日本人従業員が付き添うといったフォローが求められます。
そのほか、日本に住み慣れていない外国人にとって難しいであろう、銀行口座の開設や通院、住居探しなどについても、企業の支援が必要になるでしょう。
 
初めて日本にやってくる外国人のほとんどは、日本の生活習慣について、わからないことばかりのはずです。
仕事に専念できる環境を整えるためにも、企業をあげてサポートできる体制を整えておきたいところです。

ポイント③ 教育プログラムを構築する

外国人を雇用する企業では、日本語教育をはじめ、業務のスキルアップやビジネスマナーを学ぶ研修の実施が必要です。
 
滞りなく業務を遂行するには、日本人従業員と外国人労働者のスムーズなコミュニケーションは不可欠です。
特定技能外国人は、特定技能の審査により、ある程度の日本語能力を担保されているとはいえ、継続的な日本語教育は欠かせません。
 
また、教育プログラムの構築は、外国人労働者の自社への長期的な就労にもつながります。
多くの外国人労働者は、スキルアップやキャリアアップを目指しています。
教育環境を整えることで、外国人労働者のニーズを満たし、長期的な就労につなげられるというわけです。

関連記事:外国人労働者に対する日本語教育の重要性と効果的な日本語教育の方法

ポイント④ 在留資格を把握して管理する

在留資格には種類があり、それぞれで従事できる業種や業務が定められています。
外国人を雇用する企業は、本人が、どの在留資格を有しているのかを把握しておかなければなりません。
 
もし、就労が認められていない業務を行ったことが発覚すれば、不法就労と見なされ、企業には、懲役もしくは罰金、あるいはその両方が科される可能性があります。
該当の外国人労働者自身にも同じく、懲役や罰金、日本からの強制退去など、厳しい処分が下されます。
 
外国人を雇用する際は、企業が在留資格を把握し、外国人労働者をどの業務に就かせるか管理する必要があるわけです。

入管法の改正により外国人労働者の雇用が推進された

今回は、入管法の改正について解説しました。
 
入管法は、1951年に公布されて以降、改正を繰り返してきました。
そのなかで、企業に対して大きな影響を及ぼしたのが、2019年の改正に伴い創設された“特定技能”です。
特定技能は、人材確保の困難な産業分野において、外国人を受け入れることを目的とした在留資格です。
人手不足の解消につながるものの、従事できる業務に制限があるため、受け入れ企業は、その内容を正しく把握しておかなければなりません。
 
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