「特定技能」で働くベトナム人が増えている?雇用のメリット・方法も解説
人手不足に悩む日本企業にとって、ベトナム人の「特定技能」労働者の採用は大きな解決策となります。
そこでこの記事では、なぜベトナム人労働者が増えているのか、彼らを採用するメリットや方法、さらに雇用に際しての注意点まで、詳しく解説しています。
特定技能の概要からベトナム人採用の流れまで、企業さまが知っておくべき重要な情報を網羅していますので、ぜひ参考になさってください。
目次[非表示]
- 1.「特定技能」で働くベトナム人の状況
- 2.「特定技能」を活用してベトナム人を雇用するメリット
- 2.1.他の在留資格よりも比較的就労しやすい
- 2.2.日本人との相性が良い
- 2.3.採用ターゲットとなる在留者数が多い
- 2.4.勤勉な性格
- 2.5.出稼ぎで家族を養いたい意欲が強い
- 2.6.成果・報酬に対して貪欲
- 3.ベトナム人を「特定技能」で雇用する方法
- 3.1.雇用する企業側の要件
- 3.2.雇用される側の要件
- 4.「特定技能」でベトナム人を採用する流れ
- 5.ベトナム人を採用する際の注意点
- 5.1.ベトナム現地で採用する場合はDOLAB認定の送出機関の利用が必要
- 5.2.駐日ベトナム大使館またはDOLABの「推薦者表交付申請」が必要
- 5.3.特定技能の転職者を採用する場合も申請手続きが必要
- 5.4.ベトナムの法令で禁止されている職業・作業・地域で働くことができない
- 5.5.ベトナム人留学生は2年以上の専修学校・短期大学以上の学歴が必要
- 5.6.労働時間の制限が定められている
- 6.「特定技能」を活用してベトナム人を雇用する際の費用
- 7.日本の労働環境においてベトナム人は優秀な人材
「特定技能」で働くベトナム人の状況
日本において特定技能の資格を持ち、働く外国人労働者の数は、2023年6月末時点で173,089人にのぼります。
この中で、ベトナム人の占める割合は非常に高く、97,485人がベトナム国籍であることが、出入国在留管理庁のデータから明らかになっています。
特定技能労働者全体の半数以上をベトナム人が占めていることを意味し、日本国内で特定技能ビザを持つベトナム人の数の多さを物語っています。
参照元:出入国在留管理庁
「特定技能」で働くベトナム人が増えている理由
ベトナム人が特定技能ビザで日本で働くことを選択する背景には、いくつか理由があります。
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ここでは、4つの理由について深く掘り下げていきます。
新型コロナウイルスの影響
第一に、2020年のコロナウイルスの影響で、多くのベトナム人が母国へ帰国することが困難になりました。
その結果、日本国内で生活し、働くことを選んだケースが少なくありません。
この状況は2021年12月ごろまで顕著でした。
ベトナム人技能実習生の多さ
次に、日本国内におけるベトナム人技能実習生の多さも大きな理由の一つです。
2022年3月時点で、日本には90,753人のベトナム人技能実習生がおり、国籍別で最も多い数です。
技能実習を終えた後に特定技能ビザに移行することは、ベトナム人にとって収入を増やす大きなチャンスとなります。
特に、特定技能ビザの導入により、技能実習の最大5年間に加えて、さらに5年間、日本で働くことが可能になりました。
仕送りを目的とする多くの技能実習生にとって、魅力的な選択肢となったのです。
参照元:OTIT 外国人技能実習機構
ベトナム人留学生の多さ
さらに、日本国内におけるベトナム人留学生の数も無視できません。
2022年末の時点で、37,405人のベトナム人留学生が日本に滞在しており、国籍別で第2位となっています。
留学生にとっても、特定技能ビザを利用することは日本での生活費を賄い、働く機会を得るための有効な手段です。
さらに、特定技能ビザの導入により、専門学校や短期大学を卒業せずとも、日本で就職する道が開かれました。
日本での就職を目指すベトナム人留学生にとって、大きなメリットをもたらしています。
参照元:独立行政法人 日本学生支援機構
ベトナム人にとって働きやすい環境であること
上記の理由に加えて、ベトナム人が日本で働くことを選ぶ理由には、日本とベトナムの給与水準の違い、日本製品や文化への親近感、地理的な近さ、そして日本の法規制の整備と治安の良さが挙げられます。
これらの要素が相まって、ベトナム人にとって日本は魅力的な就労先となっているのです。
「特定技能」を活用してベトナム人を雇用するメリット
日本での労働環境において、特定技能ビザを持つベトナム人の採用は多くのメリットをもたらします。
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特定技能ビザ制度は、他の在留資格と比較して就労しやすい点が特徴です。
特に技能実習2号を修了した人材には、試験の一部免除などの利点があります。
雇用側にとって人材不足の解消につながるほか、就労側には長期滞在や業界内での転職の自由度が高いことが魅力となります。
関連記事:ベトナム人の性格・特徴は?雇用前に確認したい地域による違いも
他の在留資格よりも比較的就労しやすい
特定技能ビザは、他の在留資格に比べ就労しやすいという大きなメリットがあります。
特定技能1号として累計5年間、特定技能2号としてさらに長期間の滞在が可能で、家族の帯同も認められる場合があるためです。
また、未経験者を技能実習で受け入れ、その後特定技能で経験者として採用することで、人手不足の緩和や事業推進力の強化が期待できます。
日本人との相性が良い
ベトナム人労働者は、日本企業との相性が良いと評されています。
ベトナム人は母国での生活向上や、家族のためにお金を稼ぐ意欲が強く、勤勉で真面目な性格が特徴です。
また、ベトナムでは漢字の使用経験があるため、日本語習得が比較的早く、言語の壁を乗り越えやすいというメリットもあります。
採用ターゲットとなる在留者数が多い
日本国内に在留するベトナム人の数が多いため、採用の際に広範囲から獲得しやすいというメリットもあります。
技能実習や留学から特定技能への移行も可能なため、今後もベトナム人の採用を前提にした活用が期待されています。
勤勉な性格
ベトナム人労働者の特徴として、勤勉な性格が挙げられます。
彼らは自国の経済発展に伴い、豊かな生活を目指すエネルギーに満ちており、仕事に対する熱心な姿勢を持っています。
このようなハングリー精神は、社内のモチベーション向上にも貢献すると考えられるでしょう。
出稼ぎで家族を養いたい意欲が強い
ベトナム人労働者は、家族を支えるために海外で収入を得たいといった強い意欲を持っています。
日本での就労は彼らにとって金銭的なアドバンテージが大きく、この点が日本での就労意欲を高めています。
成果・報酬に対して貪欲
また、成果や報酬に対する意欲もベトナム人労働者の特徴です。
彼らはより良い生活を求め、仕事を通じて目に見える成果や報酬を得ることに熱心です。
この点も、日本企業にとってポジティブな影響をもたらすと考えられます。
これらのメリットを踏まえ、ベトナム人労働者の採用は日本企業にとって有効な戦略であると言えるでしょう。
ただし、東南アジア特有の時間に対するルーズな態度といった、文化的な違いには注意が必要です。
これらの点を理解し、適切に対応することで、双方にとって有意義な労働関係を築くことができるでしょう。
ベトナム人を「特定技能」で雇用する方法
日本でベトナム人を特定技能ビザで雇用するには、企業側とベトナム人側の両方に特定の要件があります。
ここでは、雇用する企業側の要件・雇用されるベトナム人の要件を順番に解説していきます。
雇用する企業側の要件
特定技能ビザを持つベトナム人を雇用するためには、企業側が以下の要件を満たしている必要があります。
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要件の内容を具体的に見ていきましょう。
過去1年以内に解雇等の会社都合の退職者や行方不明者がいない
企業は過去1年以内に、会社都合での解雇や行方不明者が出ていないことが必要です。
外国人労働者を適切に管理し、安定した雇用を提供する企業であることを確認するためです。
過去2年間に外国人を支援した経験がある
企業が過去2年間に「技術・人文知識・国際業務」や「技能実習」などの就労ビザを持つ外国人を受け入れ、支援した経験があることが望ましいです。
経験がない場合は、登録支援機関への支援委託が必要となります。
支援はベトナム語で行うことが基本であるため、ベトナム語対応が可能な登録支援機関の選定が重要です。
登録支援機関への委託には、毎月の委託料が発生します。
委託料は、特定技能外国人労働者の適切なサポートと、管理を担う費用であることを理解しましょう。
また、適切な登録支援機関を選定することは、特定技能労働者の円滑な受け入れと運営において、欠かせない要素と言えます。
関連記事:登録支援機関とは?特定技能制度における支援内容や役割、選び方を解説
同じ業務に従事する日本人と同等額以上の報酬を支払う
雇用されるベトナム人労働者には、同じ業務に従事する日本人と同等か、それ以上の報酬を支払う必要があります。
報酬については、出入国在留管理庁によって厳しくチェックされるため、不公平な給与設定は認められません。
該当する分野の協議会に加入する
特定技能制度において、ベトナム人を含む外国人労働者を雇用する企業は、その業種に応じた協議会への加入が必須です。
現在、特定技能制度は12の異なる分野を対象としており、分野ごとに組織された協議会が存在します。
これら協議会への加入は、特定技能労働者を受け入れる企業に求められる要件の一つとなっています。
各分野の協議会は、その業種固有のニーズや特性に基づいて、独自の加盟条件を設定しています。
例えば、介護分野では「介護分野における特定技能協議会」、建設分野では「一般社団法人 建設技能人材機構(JAC)」、農業分野では「農業特定技能協議会」といった具体的な協議会が設置されています。
特定技能外国人の受け入れまでに加入が必要です。
従って、特定技能外国人を雇用する前に、自社が属する分野の協議会加盟条件を十分に確認し、適切に対応することが求められます。
支援体制が構築されている
特定技能制度の下でベトナム人を含む外国人労働者を雇用する企業は、義務的支援の実施体制を構築し、適切に実行しなければなりません。
法令により定められた義務的支援は、次の10項目が含まれます。
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これらの支援活動を適切に実施するため、企業は支援責任者と支援担当者を選任する必要があります。
役職者は、特定技能外国人労働者の生活や、職業上の問題に対応し、彼らの安定した日本での生活を支える役割を果たします。
雇用される側の要件
日本で特定技能ビザを取得して働くベトナム人は、以下どちらかの要件を満たしている必要があります。
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要件の具体的な内容を確認していきましょう。
日本語試験及び特定技能の分野別技能試験に合格している
特定技能労働者として日本で働くには、まず日本語能力の確認が必要です。
日本語能力の証明として、「日本語能力試験(N4以上)」または「国際交流基金日本語基礎テスト(A2以上)」、いずれかの試験に合格している必要があります。
2つの試験は日本国内外で広く実施されており、海外居住者も受験することが可能です。
また、特定技能の分野別技能試験も要件の一つとなっています。
分野別技能試験は、特定技能労働者が従事する分野に応じた、専門技能を有していることを証明するために行われます。
試験は分野ごとに独自に設定されており、一部の分野では、特定の日本語試験の合格が追加で求められることもあります。
技能実習2号または3号を良好に修了している
技能実習2号、または3号を良好に修了したベトナム人は、特定技能評価試験や日本語試験に合格することなく、特定技能ビザへの移行が可能です。
ただし、条件として技能実習時と同じ分野に限られるため、異なる分野で特定技能ビザを取得しようとする場合は、上記の試験に合格する必要があります。
「特定技能」でベトナム人を採用する流れ
特定技能ビザを利用してベトナム人を採用する場合、海外採用と国内採用の二つのルートがあります。
それぞれの採用プロセスにステップがあるため、順番に詳しく解説していきます。
海外採用
海外からベトナム人を日本に呼び寄せて採用する場合は、以下のステップを確認してください。
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海外採用においては、送り出し機関の選定に特に注意が必要です。
不適切な送り出し機関を選んでしまうと、法令違反のリスクや採用プロセスの遅延など、いくつかの問題が生じる可能性があります。
そのため、DOLABから認定された、信頼できる送り出し機関を選ぶようにしましょう。
国内採用
既に日本に在住しているベトナム人を採用する場合は、以下のステップを確認してください。
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国内採用の際は、留学生のオーバーワークや税金の未納といった点に注意する必要があります。
これらの問題は特定技能ビザ取得に影響を与える可能性があるため、事前の確認と対策が求められます。
ベトナム人を採用する際の注意点
ベトナム人を採用する際は、いくつかの点に注意する必要があります。
特定技能ビザの取得に関わる法令や手続き、労働条件などに関連するものです。
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以下を確認しながら、正しい方法で採用できるようにしておきましょう。
ベトナム現地で採用する場合はDOLAB認定の送出機関の利用が必要
ベトナム現地から人材を採用する際は、DOLAB(ベトナム労働・傷病兵・社会問題省海外労働管理局)によって認定された送出機関を通じての採用が必須です。
適正な手続きと法令を順守するためのルールとなっています。
駐日ベトナム大使館またはDOLABの「推薦者表交付申請」が必要
ベトナム人と雇用契約を結んだ後、日本での入国に必要な在留資格認定証明書を取得するためには、駐日ベトナム大使館やDOLABへの推薦者表交付申請が必要です。
海外採用だけでなく、日本国内での採用においても必要な手続きとなります
特定技能の転職者を採用する場合も申請手続きが必要
既に特定技能ビザを持ち、他の会社で働いているベトナム人を採用する場合は、在留資格変更許可の申請が必要です。
労働者の在留資格に記載されている、指定書の確認が含まれます。
ベトナムの法令で禁止されている職業・作業・地域で働くことができない
ベトナムの法令により、特定の地域や職業、作業が禁止されている場合があります。
憲法に反する困難な仕事、外国人労働者の労働を禁じる地域、危険地域などが含まれます。
ベトナム人留学生は2年以上の専修学校・短期大学以上の学歴が必要
留学生として特定技能ビザを取得するためには、少なくとも2年以上の専修学校や短期大学などの学歴が必要です。
適切な技能と日本語能力の保証に関連しています。
労働時間の制限が定められている
特定技能ビザを持つベトナム人の労働時間には制限があり、フルタイム勤務の場合、原則として1日8時間、週40時間以内に制限されています。
休憩時間や休日の取り扱いについても、日本の労働基準に準じる必要があります。
「特定技能」を活用してベトナム人を雇用する際の費用
特定技能制度を利用してベトナム人を雇用する際は、国内採用と海外採用に分けて、それぞれにかかる費用の概算を把握しておくことが重要です。
海外採用の場合の費用相場は、以下を参考にしてください。
項目 |
費用相場 |
確認事項 |
送り出し機関の手数料 |
1人当たり約20万円〜60万円 |
特定技能労働者1〜3ヶ月分の給与に相当する額 |
渡航費用 |
1人当たり約3万円〜8万円 |
航空券代金は企業の負担が一般的ですが、必須ではない |
住宅の初期費用 |
敷金や礼金など |
住宅を企業が手配する場合に発生する初期費用 |
事前ガイダンス費用 |
1人当たり約1万円〜2万円 |
義務的支援の一部 |
生活オリエンテーション費用 |
1人当たり約1.5万円〜3万円 |
義務的支援の一部 |
ビザ申請にかかる費用 |
1人当たり約8万円〜20万円 |
特定技能1号ビザの申請に関連する費用 |
支援委託費用 |
1人当たり毎月約1.5万円〜3.5万円 |
登録支援機関に支援業務を委託する際に発生 |
ビザ更新に関わる費用 |
1人当たり年間約4万円〜8万円 |
ビザ更新の際の書類作成を外部に委託する場合にかかる費用 |
続いて、国内採用の場合の費用相場は、以下を参考にしてください。
項目 |
費用相場 |
確認事項 |
人材紹介にかかる手数料 |
1人当たり約30万円〜60万円 |
紹介される人材に応じた費用が発生 |
住宅の初期費用 |
敷金や礼金など |
住宅を企業が手配する場合に発生する初期費用 |
推薦者表取得の費用 |
1人当たり約5千円〜1.5万円 |
在日ベトナム大使館での申請にかかる手数料 |
事前ガイダンス費用 |
1人当たり約1万円〜2万円 |
義務的支援の一部 |
生活オリエンテーション費用 |
1人当たり約1.5万円〜3万円 |
義務的支援の一部 |
ビザ申請にかかる費用 |
1人当たり約8万円〜20万円 |
特定技能1号ビザの申請に関連する費用 |
支援委託にかかる費用 |
1人当たり毎月約1.5万円〜3.5万円 |
登録支援機関に支援業務を委託する際に発生 |
ビザ更新に関わる費用 |
1人当たり年間約4万円〜8万円 |
ビザ更新の際の書類作成を外部に委託する場合にかかる費用 |
ビザ更新の際の書類作成を外部に委託する場合にかかる費用
これらの費用はあくまで概算であり、具体的な金額は各企業の事情や委託する機関によって異なることに注意が必要です。
また、建設業など一部の業種では、追加の費用がかかる可能性があります。
費用を抑えるためには、自社で可能な業務の自己実施を検討するのも一つの方法と言えます。
関連記事:特定技能外国人受け入れにかかる費用相場とコストダウンのポイント
日本の労働環境においてベトナム人は優秀な人材
いかがでしたでしょうか。
日本でベトナム人労働者が多い理由、その背景についてご理解いただけたかと思います。
また、ベトナム人は日本の労働環境にマッチしており、優秀な人材が多いことも、この記事を通じて知ることができたでしょう。
ベトナム人労働者を採用する際は、上述したステップを確認しながら進めていきましょう。