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飲食店で外国人を雇用する際に確認したい在留資格とチェックポイント

外国人観光客が増えていたり、日本人の働き手が不足していたりすることから、人手不足に悩んでいる飲食店は少なくありません。
そういった場合は、外国人の雇用も検討してみると良いでしょう。
ただ、外国人を雇用する際は日本人の雇用とは異なることも多々あります。
 
そこで、本記事では飲食店を営んでいて外国人の雇用を検討している方のため、雇用のメリットや確認しておくべき在留資格、在留カードのチェックポイントなどを解説します。
この記事を読むことにより、事前におさえておきたい注意点がわかるようになるので、ぜひご覧ください。

目次[非表示]

  1. 1.飲食店(外食産業)で働く外国人が増えている
  2. 2.飲食店(外食産業)が外国人を雇用するメリット
  3. 3.飲食店(外食産業)で働くことのできる在留資格
    1. 3.1.正社員
    2. 3.2.アルバイトとして働くことができる在留資格
  4. 4.外国人雇用前の在留カードのチェックポイント
    1. 4.1.偽造在留カードに注意
    2. 4.2.在留カードのチェック方法
  5. 5.飲食店(外食産業)が外国人を雇用する流れ
  6. 6.外国人を雇用する際の注意点
    1. 6.1.不法就労助長罪のリスクがある
    2. 6.2.雇用手続きの流れが通常とは異なる
    3. 6.3.日本語能力や接客マナーが不十分な場合がある
    4. 6.4.文化や風習などの違いを理解する
  7. 7.外国人雇用では複雑な手続きも必要

飲食店(外食産業)で働く外国人が増えている

日本で働く外国人は増えており、これは飲食産業でも同様のことがいえます。
厚生労働省が発表したデータによると、令和5年10月末時点で外国人労働者数は前年比の225,950人増加となる2,048,675人でした。
これは、外国人雇用状況の届出が義務化された平成19年以降で見ると、過去最高の数字です。[1]
 
国籍で最も多いのはベトナム人であり、外国人労働者数全体の25.3%を占める518,364人が日本で働いています。
外食産業を見てみると「宿泊業、飲食サービス業」で働いている人の数は、外国人労働者全体の11.4%となる233,911人です。
また、外国人を雇用する事業所数の産業別の割合を見てみると、全体の14.3%にあたる45.495所が「宿泊業、飲食サービス業」でした。

外国人が日本で働くには、就労可能な在留資格を取得しなければなりません。
在留資格のうち、働いている外国人が最も多いのは「身分に基づく在留資格」であり「専門的・芸術的分野の在留資格」「技能実習」と続きます。
「専門的・芸術的分野の在留資格」のうち、特定技能の在留資格で働く人は前年比75.2%増の138,518人でした。[2]
大幅に増えていることがわかります。
 
[1]参考:厚生労働省:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)
 [2]参考:(PDF)厚生労働省:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和5年10月末時点)

飲食店(外食産業)が外国人を雇用するメリット

外食産業などの飲食店で外国人を雇用することにより、さまざまなメリットがあります。
代表的なメリットは、以下の通りです。
 
【メリット】

  • 人手不足対策やインバウンド対応
  • 多言語化
  • 日本人スタッフへの刺激
  • ビジネスチャンスへの機会につながる 

近年はインバウンドにより観光客が増えており、人手不足に悩んでいる飲食店が多く見られます。
外国人を雇用すれば人手不足対策が可能です。
 
飲食店の中には、観光客が増えたものの英語やその多言語に対応できず、苦戦していることもあるでしょう。
外国人の採用で日本語以外にも対応できる言語が増え、多言語化につながるのも大きなメリットです。
 
また、外国人と働くことが日本人スタッフにとって刺激になるケースもあります。
外国人に対する理解も深まるので、当該外国人の国の文化やマナーを知ることが外国への進出などの新たなビジネスチャンスの機会につながることも期待できます。

飲食店(外食産業)で働くことのできる在留資格

在留資格のすべてが日本で働けるわけではありません。
就労系の資格の中でも、正社員として働けるのは以下の5つの在留資格です。
 
【正社員として飲食店で働ける在留資格】

  • 特定技能
  • 技能
  • 技術・人文知識・国際業務
  • 特定活動46号
  • 定住者・永住者・日本人の配偶者、永住者の配偶者など

また、以下の3つに関してはアルバイトならば飲食店で働けます。

【アルバイトとして飲食店で働ける在留資格】

  • 留学
  • 家族滞在
  • 特定活動(就職活動)

それぞれどのような在留資格なのか解説します。

正社員

正社員として外国人を雇用したいのであれば、以下5つのいずれかの在留資格を取得している外国人を雇用しましょう。

特定技能「外食業」

特定技能は、日本人だけだと人手が不足している特定の産業分野で、外国人雇用を進めるための在留資格です。
特定産業分野に関して相当程度の知識や経験を有する業務に従事する人が該当する1号と、特定産業分野に関して熟練した技能を要する業務に従事する人が該当する2号があります。
 
「技術・人文知識・国際業務」では行えない飲食物調理、接客、店舗管理などの外食業全般が可能です。

関連記事:特定技能「外食業」の概要と受け入れ企業側の要件・取得要件を解説

技能

専門的・技術的分野に該当する在留資格です。
熟練した技能を要する業務に従事する活動をする方に認められるものであり、取得のためには同様の職種で10年以上の調理経験が求められます。

技術力や知識量などを重視して採用したい場合に向いているでしょう。

技術・人文知識・国際業務

専門性の高い業務に就く場合に認められる資格で、人的要件として学歴要件も定められています。
 
飲食店でこの在留資格を活かして働くケースとしては、例えば他店舗経営を行っている会社の本社部門で通訳・翻訳に関連した店舗管理の業務に従事するなどです。

特定活動46号

日本の大学や大学院を卒業した留学生が正社員として働ける在留資格です。
留学生の就職支援を目的として設立されました。
 
ただし、取得のためにはビジネスレベルの日本語能力が必要になります。
単純労働のみに従事させることは認められていません。

定住者・永住者・日本人の配偶者、永住者の配偶者など

定住者とは第三国定住難民、日系3世、中国残留邦人などのことであり、永住者とは法務大臣によって永住の許可を受けた者のことです。
 
これらは雇用形態に制限がない在留資格です。
そのため、正社員だけではなく、アルバイトとしての雇用もできます。

アルバイトとして働くことができる在留資格

以下に該当する方は正社員としては働けませんが、アルバイトは可能です。

留学

留学は、日本の教育機関で留学生として学ぶ外国人のための在留資格のことをいいます。
留学生は「資格外活動許可」を取得することにより、1週間に28時間以内(長期休暇時は1日に8時間以内)までならばアルバイトが可能です。

複数のアルバイトを掛け持ちする場合は、その合計を上記時間内に抑えなければなりません。

家族滞在

在留外国人によって扶養されている配偶者と子供である家族滞在は、留学と同様に「資格外活動許可」を取得することで1週間に28時間以内のアルバイトが可能です。

従事可能な業種・報酬は日本人のアルバイトと同様です。

特定活動(就職活動)

特定活動とは、大学卒業後の就職活動のため、留学の在留期間満了後も日本に在留して就職活動を行いたい場合などに活用できる在留資格です。

可能な活動内容は法務大臣が個々に判断する形となり、パスポートに添付されている指定書で就労ができると認められている場合に限りアルバイト可能です。

外国人雇用前の在留カードのチェックポイント

外国人を雇用する際は、日本で就労が認められている在留資格を所持しているのか、その在留資格は飲食店で働くことが認められているのか確認しなければなりません。

在留資格のほか、就労制限の有無、資格外活動許可欄を確認しましょう。

偽造在留カードに注意

在留カードに記載されている内容は問題がなかったとしても、その在留カード自体が偽造されたものである可能性はゼロではありません。
実際に偽造在留カードで働こうとする外国人の数は多く、注意が必要です。
 
もしも偽造されていることに気づかず採用・雇用してしまった場合、企業側も罰せられてしまう可能性があります。
 
偽造在留カードを所持している外国人は、日本での在留が認められていない方である可能性が非常に高いです。
そういった人物を採用してしまえば、不法滞在を支援する形となってしまいます。
「知らなかった」では済まされないので、外国人を雇用する際は在留カードを見るだけではなく、偽造されたものではないか確認しなければなりません。

在留カードのチェック方法

在留カードが偽造されたものではないか確認する際のポイントは、以下の3つです。

【チェックポイント】

  • 数字が全角か、半角か
  • 交付者の角印が正しく押されているか
  • 傾けた時に不備・異常がないか

まず、在留カードに使われている数字は、すべて全角なのが正しい表記です。
これが偽造されたものだと、半角と全角の両方が使われていたり、半角のみが使われていたりすることもあります。
偽造カードの中でも特に見分けやすいポイントといえるでしょう。
 
それから、在留カードの右下部分には交付者の角印が押されています。
これは交付者によって刻印されるものなので、少しかすれることが多いのですが、偽造カードは印刷されていることから非常にキレイに押印されている可能性が高いです。
角印がはっきりしすぎている場合は注意しましょう。
 
次に、在留カードを手に取り、上下左右に傾けてみてください。
カードを持って表面の写真左下にある「MOJ」の文字の周囲の絵柄は、傾けると緑からピンク色に変化します。
これが変化しない場合は偽造カードです。
 
また、顔写真下にあるホログラムは、角度を変えると文字の白黒が反転します。
こちらも確認しておきましょう。
 
他にも表面左側部分の背景はカードを持って上下方向に傾けると緑色からピンクに変化するのが正しいです。
 
最後に、カード裏面も確認しましょう。
カードの裏面には暗い場所でカードの表面側から強い光を当てて透かしたときに「MOJ」の文字が見えるようになっています。
こちらもきちんと見えるか確認してみてください。
 
なお、出入国在留管理庁ホームページでは在留行動の番号が失効していないか確認可能です。
実在している在留カードの番号を使用した偽造カードもあるので番号の確認だけで判断はできませんが、こちらの情報も役立ててみると良いでしょう。
 
参考:出入国在留管理庁:在留カード等番号失効情報照会
 
それから、出入国在留管理庁では無料の在留カード等読取アプリケーションを配布しています。
これは、在留カードのICチップに保存されている身分事項や顔写真などの情報を読み取るためのものです。
 
読み取った情報と在留カードに記載された情報を見比べれば、偽変造の可能性を判断できるようになります。
こちらも役立ててみてください。
 
参考:出入国在留管理庁:在留カード等読取アプリケーション サポートページ

飲食店(外食産業)が外国人を雇用する流れ

外食産業を営む飲食店が外国人を雇用する場合は、どのような流れになるのでしょうか。
具体的な流れは該当する在留資格によって変わってきます。
 
ここでは、在留資格「特定技能」で外国人を採用する場合の一般的な採用・雇用までの流れを解説します。
 
【国外から採用する場合の流れ】

  1. 受け入れ要件を確認する
  2. 募集・選考を行い、雇用契約を締結する
  3. 支援計画の策定
  4. 在留資格を申請する
  5. 査証(ビザ)を申請する
  6. 渡航・入国
  7. 就労開始

【国内から採用する場合の流れ】

  1. 受け入れ要件を確認する
  2. 募集・選考を行い、雇用契約を締結する
  3. 支援計画の策定
  4. 在留資格を変更する
  5. 就労開始

 まずは企業が受け入れ要件を満たしているのか確認が必要です。
次に人材の募集を行うことになるのですが、海外在住の方を呼び寄せるのか、日本ですでに別の資格で在留している方を採用するのかによって行わなければならないことが異なります。
 
海外から呼び寄せる場合、自社ですべて行うのは難しいので特定技能の場合は送り出し機関と呼ばれる外国人を日本に送り出している機関や、人材紹介サービスを活用すると良いでしょう。
 
一般的には国内で現在は他の在留資格にて在留している方を採用したほうが短い期間で採用可能です。
海外から呼び寄せる場合は長くて半年程度かかってしまうこともあるので、余裕をもって採用・雇用の準備を進めていきましょう。

外国人を雇用する際の注意点


外国人を雇用する際は、受け入れ時に「外国人雇用状況届出」を提出しなければならないと定められています。
これは、雇い入れる際だけではなく、離職の際もすべての事業主が届け出なければなりません。
届け出は義務となっているため、届け出を怠ったり、虚偽の届出を行ったりした場合は30万円以下の罰金の対象となるので注意しましょう。
 
期限と提出法は以下の通りです。


提出期限

提出先

雇用保険被保険者となる外国人

雇入れ:翌月10日まで
離職:翌日から起算して10日以内

ハローワークまたはe-Gov(電子申請)

雇用保険被保険者とならない外国人

雇入れ・離職の場合ともに翌月末日まで

ハローワークまたは外国人雇用状況届出システム(電子申請)

提出は雇用主が行います。
また、派遣アルバイトや派遣社員となる場合は派遣元が届け出る形です。

不法就労助長罪のリスクがある

日本で就労する在留資格を所持していない方を雇用したり、所持している在留資格で認められる範囲と異なる就労を任せたりしてしまうと、不法就労助長罪の対象となるリスクがあります。
 
不法就労の対象となるのは、以下の3つのパターンです。
 
【不法就労となるケース】

  • 不法滞在者や被退去強制者が働く
  • 出入国在留管理庁から許可を得ていない外国人が就労できる在留資格を所持することなく働く
  • 出入国在留管理庁から認められている範囲を超えて働く

 密入国をした人や在留期限が切れている人が働く場合はもちろんのこと、許可を得れば働ける在留資格を所持している方が許可を得ることなく働く場合は不法就労です。
在留資格ごとに行える業務範囲が細かく定められており、この範囲外の仕事を任せてしまった場合も不法就労助長罪の対象になります。
 
不法就労助長罪として処罰される場合は、3年以下の懲役・300万円の罰金が科せられる可能性があるので、十分注意しましょう。
在留カードをよく確認しなかったために不法就労者であることに気づけなかった場合も採用する側の過失が認められるので、処罰を免れません。

雇用手続きの流れが通常とは異なる

外国人の雇用手続きは、日本人と異なります。
例えば、海外に住んでいる方を雇用のために招く場合は渡航関連の手続きが必要です。
 
雇い入れた際には外国人雇用状況届出の提出も行わなければなりません。
一方で、日本人と同様に労災や雇用のほか、健康保険、厚生年金に加入するための手続きも必要です。
 
他にも、在留期間が満了する前に在留資格の更新が必要になることなども日本人とは異なるポイントといえます。
各在留資格で行わなければならないことが異なるので、雇用手続きの流れをよく確認しておきましょう。

日本語能力や接客マナーが不十分な場合がある

外国人ということもあり、日本人であれば軽く説明すれば分かるようなことも単語の意味から教えなければならないことがあります。
日本語能力や接客マナーは外国人によって大きく異なるポイントです。
 
あまりにも日本語能力が低かったり接客マナーがなっていなかったりする場合は、せっかく外国人を採用しても指導に時間がかかってしまい、人手不足の問題が解消されない可能性があります。
 
外国人労働者はある程度日本語が理解できる方が来ることになるので、全くコミュニケーションが取れないことはありません。
ですが、難しい作業を伴うものや、専門的な用語の理解が必要になるものなどはコミュニケーションが難しいケースもあるでしょう。
接客マナーに問題があったためにクレームが入り、お店の評判が落ちてしまう可能性も考えられます。
 
即戦力を期待するのではなく、しっかりと支援する体制を整えましょう。
接客マナーに関しては日本特有のマナーもあるので、当該外国人にとってわかりやすい形で指導していくことが大切です。
わからないことがあっても聞きづらいと感じる方もいるので、一緒に働く日本人が積極的に声をかけることも大切になります。

文化や風習などの違いを理解する

日本にも独自の文化や風習があるように、外国人とは文化や風習が異なります。
これは、仕事している最中だけではなく、日常生活においても同様です。
 
例えば、宗教上食べられないものがある外国人に対し、食べるのを強要するのはよくありません。
ハラスメント行為となってしまいます。
また、同じく宗教上の理由でお祈りの時間が必要になる外国人もいるため、そのための時間を確保する工夫も必要です。
 
外国人ならではの文化や風習によって、日本人が不満を感じることもあります。
例えば、日本人は早く仕事が終わった人がいれば忙しい人を手伝う風習がありますが、外国の中には自分の仕事だけをすれば良い、早く終わればその分早く帰れるといった風習の国も少なくありません。
 
日本の助け合いの風習を知らない外国人が冷たく見えてしまうこともあるでしょう。
こういったすれ違いを防ぐためにも、普段から積極的にコミュニケーションを取り、お互いを理解することが重要です。

外国人雇用では複雑な手続きも必要

いかがだったでしょうか。
飲食店で外国人を雇用したいと考えた際におさえておきたいポイントを解説しました。
 
雇用するメリットや注意点などがご理解いただけたかと思います。
日本人を雇用するのとは異なる部分もいろいろあるので、しっかり準備をして迎えましょう。
 
始めての外国人雇用では、手続きの複雑さに悩んでしまうケースも少なくありません。
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