
在留資格があれば外国人は単純労働が可能?雇用に関する注意点
日本は少子高齢化の影響もあり、労働力が不足しています。
新たに人材を募集しても、応募が集まらずに困っている企業も少なくありません。
そこで検討したいのは、外国人労働者の雇用です。
ただし、「単純労働」とされる作業については、事前に十分な理解が必要です。
本記事では外国人労働者の採用を検討している方のため、単純労働とは何か、どういったことに注意すれば良いかなどを解説します。
人手不足対策のために外国人を採用するにあたり、注意点を知りたいと考えている方はぜひご覧ください。
目次[非表示]
そもそも単純労働とは
外国人を採用するにあたり、どういった業務を任せられるのか、何が禁止されているのかを理解しておきましょう。
注意しなければならないのが、比較的簡単である程度決まった作業を繰り返す単純労働です。
外国人労働者を雇用する場合、基本的に単純労働に従事させることは認められていないため、十分な注意が必要です。
具体的には、以下のようなものが該当します。
【例】
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判断の基準としては、未経験者やアルバイトでも対応可能な業務かどうかを目安にするとよいでしょう。
外国人の単純労働が禁止されている理由
外国人に単純労働を任せることが禁止されているのは、労働市場の安定維持や治安の悪化防止を目的としているためです。
まず、外国人が単純労働できる場合、低賃金で外国人を雇う企業が増えることが予想されます。
日本人よりも安く雇えるようになれば、日本人の採用は減り、国内の労働条件が悪化してしまうこともあるでしょう。
また、若い外国人労働者を確保しやすくなると、高齢者や主婦が担っていた仕事が外国人に置き換わり、日本人の働き口が少なくなってしまう恐れもあります。
また、低賃金で雇用された外国人労働者は不満を抱きやすく、その結果より良い職場環境を求めて失踪し、不法滞在につながってしまう可能性もあるでしょう。
不適切な形で外国人の受け入れが増加すると、治安悪化の懸念も生じます。
これらの理由から、単純労働への従事は禁止されています。
在留資格によっては外国人でも単純労働が可能
日本に在留するすべての外国人が単純労働に従事できないわけではなく、在留資格によっては認められています。
ここでは、認められている在留資格について解説します。
特定技能
特定技能は、日本人だけでは十分な労働力を確保できない業界において、外国人労働者を受け入れるための在留資格です。
2019年に創設されました。
詳しくは後述しますが、人手不足が問題となっている16の分野(2025年3月時点)が対象となっており、外国人は在留資格を取得した分野に関する労働が行えるようになります。
注意点として、特定技能の在留資格では、単純労働のみを任せることは認められていません。あくまで、業務に付随する範囲であれば従事が認められます。
この点に注意しておきましょう。
身分系の在留資格
身分系の在留資格とは、以下のようなものです。
【該当する在留資格】
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上記の身分系の在留資格は、一切就労制限がありません。
日本人と同様にすべての業務に従事することが可能であり、単純労働も許容されています。
資格外活動許可
資格外活動許可とは、留学や家族滞在、文化活動といった在留資格を取得して日本にいる外国人がアルバイトをするために得る許可のことをいいます。
入国管理局から資格外活動許可を得ることで1週間に28時間以下まで労働が認められ、この中で単純労働をすることが可能です。
また、夏休みなどの長期休暇中は、1日あたり8時間、週あたり40時間までの労働が認められています。
時間が限られているのでかなりの人手不足状態に陥っている事業者が採用しても根本的な解決にならないことも考えられますが、人手不足の状況がそこまでひどくない場合は選択肢に挙がるでしょう。
在留資格「特定技能」の種類
在留資格のうち、特定技能は1号と2号の2区分に分けられます。
それぞれがどのような在留資格であるかについて解説します。
特定技能1号
特定技能1号とは、業務に必要な基礎的知識・日本語能力・技能を有する外国人に認められる在留資格です。
在留資格を取得するには、各分野で実施される日本語試験および技能試験に合格する必要があります。
家族の帯同は認められておらず、在留期間は最長5年とされています。
国が認めた以下の16の分野で在留資格「特定技能」を取得できます。(2025年3月時点)
【特定技能の16分野】
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自動車運送業・鉄道・林業・木材産業の4分野は、2024年3月に追加が決定され、同年に受け入れが開始されました。
人手不足が深刻な分野が対象となるため、今後は他の業種が追加される可能性もあります。
特定技能2号
特定技能2号は、特定技能1号よりも高度な技能を有する外国人に与えられる在留資格です。
1号とは異なり、家族の帯同が認められることに加え、在留期間の更新ができます。
在留資格が更新され続ければ、その他の条件を満たすことで永住申請も可能になります。
2024年から追加された自動車運送業、鉄道、林業、木材産業については、まだ特定技能1号までしか認められていません。
今後、2号までの拡充が検討される可能性もあります。
また、もともとあった分野についても、介護に関しては現行の専門的・技術的分野の在留資格として「介護」があるため、特定技能2号の対象分野ではありません。
特定技能外国人を雇用する際に必要な支援
特定技能外国人を雇用する際には、企業側に支援体制の整備が求められます。
具体的には以下のような支援が必要です。
事前ガイダンス |
労働条件や活動内容などに関して対面またはテレビ電話での説明 |
出入国する際の送迎 |
入国時に空港や事業所・住居への送迎、帰国時に空港や保安検査場までの送迎・同行 |
住居の確保や生活に必要な各種契約支援 |
連帯保証人になる、社宅を提供するほか、銀行口座や携帯電話など各手続きの補助 |
生活オリエンテーション |
日本のルールやマナーなどの説明 |
公的手続き等への同行 |
公的手続きをする際の同行、書類作成の補助 |
日本語学習の機会の提供 |
日本語教室等の入学案内・情報提供など |
相談・苦情への対応 |
相談や苦情への対応や助言、指導 |
日本人との交流促進 |
地域住民との交流や地域の行事参加時の補助 |
定期的な面談・行政機関への通報 |
定期的な面談、労働基準法違反等があれば通報 |
受け入れ企業側の都合によって契約を解除する場合には、転職支援が必要となります。
受け入れ側の都合での契約解除とは、事業者都合での解雇や事業所の廃止、倒産などのことをいいます。
外国人側の都合による退職の場合には、転職支援の実施は義務付けられていません。
特定技能外国人を単純労働に従事させる際の注意点
特定技能外国人を雇おうと考えている場合は、注意点も確認しておきましょう。
以下の3つに注意が必要です。
注意点①給与は日本人と同等またはそれ以上とする
単純労働は特別な訓練を必要としない業務ですが、だからといって給与を低く設定することは認められていません。
同様の業務を担当する日本人と同等以上の給与を設定する必要があります。
日本人よりも安い給与を設定してしまうと、雇用が認められないことになります。
日本人に適用される最低賃金は外国人労働者にも適用されることを押さえておきましょう。
注意点②在留資格の範囲内で働いてもらう
特定技能外国人には、特定技能の在留資格でできる範囲の業務を行ってもらうことになります。
前述のとおり、単純労働のみを行わせることは認められていません。
また、特定技能の在留資格を取得すればすべての分野で業務が可能になるわけではない点にも注意が必要です。
たとえば「農業」の特定技能による在留資格を取得した場合は、特定技能「農業」の範囲内で認められている業務のみ行えることになります。
注意点③外国人の文化を理解する
外国人の間で何かトラブルが発生する際、文化の違いによるものであるケースが多く見られます。
日本で働くのだからといって日本の文化を押し付けるのではなく、それぞれの文化の違いを理解することが重要です。
これは、外国人にとって働きやすい環境を整えていくことにもつながります。
特定技能外国人を雇用するメリット
特定技能外国人雇用のメリットとして、以下の4つを確認しておきましょう。
メリット①安定的な人材供給ができる
日本人だけでは十分な人材を確保できない場合も、外国人を含めて検討することで人材を確保しやすくなります。
日本での就労を希望する外国人が多く、定着率も比較的高いため、安定的な人材の確保が期待できます。
メリット②雇用人数の制限がない
一部分野を除き、特定技能外国人の雇用人数には制限がありません。
人手不足に悩む現場において、貴重な戦力となる可能性があります。
メリット③労働意欲の高い人材の採用ができる
在留資格である特定技能を取得して日本で働こうとする外国人の多くは、高い労働意欲を持ちます。
人手不足解消のために雇用したものの、労働意欲の低さによるミスマッチが生じにくいと考えられます。
労働意欲の高い人材を採用できれば、現場全体の士気も高まります。
メリット④長期間の雇用を実現できる可能性がある
特定技能1号として採用した場合でも、2号へ移行すれば在留資格の継続が可能となります。
そのため、終身雇用できる人材を確保したいと思った場合も特定技能外国人の採用が選択肢に上がります。
長期的に勤務可能な人材を確保する手段として、特定技能外国人の採用を検討することが有効です。
以下では特定技能外国人を受け入れることについてさらに詳しいメリットやデメリットを紹介しているので、こちらもご覧ください。
関連記事:特定技能のメリットとは?注意すべきデメリットや採用方法も確認
特定技能なら単純労働も任せられる
いかがだったでしょうか。
在留資格があれば単純労働が可能なのかについて解説しました。
採用・雇用時の注意点についてもご理解いただけたことでしょう。
特定技能では、付随的な業務であれば従事が認められています。人材確保の手段として、特定技能外国人の採用を検討することも選択肢の一つです。
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