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特定技能「訪問介護」が解禁!受け入れ企業側が押さえておきたいこと

人手不足の業界を支えるための制度である在留資格「特定技能」により、多くの外国人が働いています。
訪問介護の分野は以前から人手不足が問題となっていましたが、特定技能の対象とはなっていませんでした。
 
このたび、訪問介護分野への特定技能の適用が解禁されることとなり、多くの事業者が注目しています。
そこで、本記事では特定技能「訪問介護」の解禁に向けて知っておきたいポイントとして、現状や受け入れ企業側の条件などを紹介します。
 
この記事を読むことでどのような準備を進めていけば良いのかがわかるようになるので、ぜひご覧ください。


目次[非表示]

  1. 1.訪問介護における特定技能制度の現状
  2. 2.訪問介護分野での特定技能の解禁はいつから?
  3. 3.特定技能の訪問介護が解禁されるに至った背景
  4. 4.特定技能外国人が訪問介護をするための受け入れ企業側の条件
  5. 5.訪問介護分野に特定技能外国人を受け入れる際の課題点
    1. 5.1.コミュニケーションや対応スキル
    2. 5.2.自動車の運転業務
    3. 5.3.受け入れ体制の整備
  6. 6.訪問介護分野に特定技能制度が導入されることのメリット
    1. 6.1.メリット①若手人材の活躍が見込める
    2. 6.2.メリット②サービスの品質向上に期待できる
  7. 7.訪問介護分野に特定技能制度が導入されることのデメリット
  8. 8.特定技能「訪問介護」解禁で人手不足問題の緩和が期待される

訪問介護における特定技能制度の現状

日本は少子高齢化が進んでいることもあり、訪問介護に関連した業種は慢性的な人手不足の状態に陥っています。
今後も少子高齢化が進むと予想されています。
在留資格制度の一つである特定技能制度は、人手不足解消を目指すためにつくられた制度ではありますが、これまで、訪問介護の分野では対象に含まれていませんでした
 
現状では介護施設を中心とする形で特定技能制度が活用されています。
一方、訪問介護における慢性的な人手不足を解消するため、2025年4月に特定技能の在留資格で訪問介護に従事できるようになりました。

訪問介護分野での特定技能の解禁はいつから?

2025年3月17日に「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について(報告)」で、これまでは訪問介護への従事が認められていなかった特定技能外国人材(特定技能生を含む)に対して、一定の条件を満たせば従事を認める方針を示しました。
示された方針は以下のとおりです。

解禁時期

2025年4月1日

従事できるようになる主な条件

  • 外国人介護人材に対する訪問介護業務の基本研修の実施
  • 必要な訓練を行うため、責任者が一定期間同行
  • 業務内容について丁寧に説明し、キャリアアップ計画を作成
  • ハラスメント防止のため、相談窓口や対処方法の設置
  • 現場での不測の事態に対応するため、ICTを活用した環境整備

(※介護事業所等での実務経験が1年以上あることを原則とする)


新たに受入対象となるサービス

  • 訪問介護
  • 訪問入浴介護
  • 夜間対応型訪問介護
  • 介護予防訪問入浴介護
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
  • 訪問型サービス(総合事業)

そのほかにも詳細な条件が定められているため、外国人を訪問介護分野に従事させたいと考えている事業者は、詳細を確認しておきましょう。
 
参考:外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会:外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会中間まとめ

特定技能の訪問介護が解禁されるに至った背景

特定技能は、日本人だけでは十分な労働者を確保できない業種において、人手不足の問題を解消するためにつくられた在留資格です。
訪問介護の分野でも人手不足が問題となっているため、特定技能の訪問介護が解禁されることになりました。
 
厚生労働省の資料によると、令和5年度における訪問介護員の有効求人倍率は14.14倍です。
つまり、求職者1人に対して14件もの求人があることを示しているため、極端な人手不足状態だといえます。
 
平成25年時点では3.29倍でしたが、年々上昇し、令和4年時点では15.53倍となっています。
介護職員の有効求人倍率は令和5年時点で3.24倍であり、訪問介護員の方がはるかに不足している状況です。
同資料によると、訪問介護事業所の廃止理由で最も多かったのは人手不足と職員の高齢化です。(※)
 
ヘルパー不足の状況は今後も継続すると見込まれており、その対策の一つが訪問介護分野における特定技能の解禁です。
 
(※)参考:厚生労働省 老健局:訪問介護事業への支援について(報告)

特定技能外国人が訪問介護をするための受け入れ企業側の条件

介護職員初任者研修を修了し、介護事業所で実務経験を有する技能実習生や特定技能外国人が訪問介護などの業務に従事できるようになります。
その際、受け入れ企業は、事前に利用者や家族に説明し、以下の点を遵守する必要があります。(※)介護事業所等での実務経験が1年以上あることを原則とします。

  1. 外国人介護人材に対し、訪問介護等の業務の基本事項等に関する研修を行うこと
  2. 外国人介護人材が訪問介護等の業務に従事する際、一定期間、責任者等が同行する等により必要な訓練を行うこと
  3. 外国人介護人材に対し、訪問介護等における業務の内容等について丁寧に説明を行いその意向等を確認しつつ、キャリアアップ計画を作成すること
  4. ハラスメント防止のために相談窓口の設置等の必要な措置を講ずること
  5. 外国人介護人材が訪問介護等の業務に従事する現場において不測の事態が発生した場合等に適切な対応を行うことができるよう、情報通信技術の活用を含めた必要な環境整備を行うこと

参照:厚生労働省:外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について(報告)

また、原則、介護事業所等での実務経験が1年以上というルールがありますが、実務経験が1年未満の場合でも、以下の点に留意すれば雇用が可能です。

  1. 日本語能力試験N2相当など在留資格に応じて求められている日本語能力よりも高いレベルの能力を有する場合
  2. 同行訪問を、利用者ごとに以下のとおり実施する
  • 週1回のサービス提供の場合(※)には同行訪問を半年行う
  • ただし、利用者・家族の同意が得られる場合には、同行訪問を3ヶ月行った上で、サービス提供時に見守りカメラを活用するなどICTを用いて常に事業所とやりとりができるようにすることで対応することも可能とする 

※同行訪問について、利用者に対して、週2回のサービス提供の場合は3ヶ月、週3回以上の場合は、2ヶ月行うこととする。利用者・家族との信頼醸成や利用者特性に応じたサービス提供を行うために、2ヶ月以上の同行訪問を求めることとし、それ以上の同行訪問期間の短縮は認めない。

受け入れ企業は、これらの要件をしっかりと整備し、適切な管理体制を構築することが重要です。


訪問介護分野に特定技能外国人を受け入れる際の課題点

訪問介護の分野において特定技能外国人を受け入れる際には、さまざまな課題があると考えられます。
特に確認しておきたいのは以下の3点です。

コミュニケーションや対応スキル

訪問介護では、利用者一人ひとりに向き合いながら必要な介護を提供する必要があります。
そのためには利用者と適切にコミュニケーションを取らなければなりません。
これは、日本人にとっても難しい対応といえます。
 
厚生労働省の資料によれば、一人で利用者宅に訪問してケアを提供することに対する不安が大きいことが、訪問介護分野で就業希望者が少ない理由として挙げられていました。(※)
そのため、母国語が日本語でない外国人にとっては、さらに大きな不安を感じやすいと考えられます。
 
コミュニケーションや対応スキルに関しては、以下のような課題が挙げられます。
 
【主な課題】

  • 若い人とは異なる高齢者特有の話し方が理解できない
  • 求められる介護や対応を判断するためには日本文化に対する深い理解が必要
  • 文化の違いにより認識に齟齬が生じてしまう
  • 対応スキル不足

 
訪問介護を受けるのは、訪問介護が必要と医師に判断された人です。
場合によっては体調の急変などがあり、迅速に対応しなければならないことも考えられます。
 
まだ訪問介護に慣れていない特定技能外国人だと、こうした場面に適切に対応するスキルが十分に習得されていないことが課題です。
このあたりの対応も特定技能外国人を受け入れる際の課題といえるでしょう。
 
また、中には外国人に対して偏見を持っている利用者がいることも考えられます。
企業や介護事業者は、利用者に受け入れてもらえるような対策を講じる必要があるでしょう。
 
(※)参考:厚生労働省 老健局:訪問介護事業への支援について(報告)

自動車の運転業務

訪問介護では、利用者の自宅へ赴いて介護を提供するため、自動車の運転業務も必要となります。
国際運転免許証を取得している特定技能外国人は、日本でも運転が可能です。
ただ、実際には、日本で有効な運転免許証を所持していない特定技能外国人が多いため、以下のような対応を検討しなければなりません。
 
【求められる対応】

  • 運転免許取得のサポート
  • 公共交通機関や自転車など代替移動手段の検討
  • 免許を所持しているスタッフとの連携

 
本人が運転免許を取得することにより、代替手段を利用することで生じやすくなる移動時間のロスを抑えられます。
ただし、多言語に対応している自動車教習所が多くないことや、取得に費用がかかることには注意が必要です。
 
また、免許を所持しているスタッフが同行したり、送迎によって利用者宅へ向かったりする方法もあります。
こちらは他スタッフと予定を合わせたり、協力したりしなければなりません。
 
どの方法を選択するかは、十分に検討する必要があります。

受け入れ体制の整備

特定技能外国人を受け入れるためには、受け入れ体制の整備が必要です。
日常生活におけるマナーや日本語に関する教育プログラムを丁寧に整備する必要があります。
 
必要に応じてさまざまな研修を行うなどして対応していきましょう。
また、初めのうちは日本人スタッフが丁寧に指導を行うことも重要です。
メンター制度の導入なども検討してみると良いでしょう。
 
利用者の理解を得ることも重要です。
その際、利用者の不安を払拭できるような対策が求められます。
特に利用者が不安を感じやすい主なポイントは、次のとおりです。
 
【利用者の不安につながるポイント】

  • 日本語の理解力が足りないなど言葉の問題
  • 文化の違いによるトラブル
  • 介護の質
  • 信頼感が不足していることによる不安
  • 緊急時の適切な対応に対する懸念

とりわけ言語の壁は、多くの方が不安を感じやすい要因です。
どのような研修を実施しているか、困った場合の対応方法などを、あらかじめ利用者に伝えておくことが大切です。

訪問介護分野に特定技能制度が導入されることのメリット

新たに訪問介護の分野に特定技能制度が導入されることになりましたが、企業や事業者側から見てどのようなメリットがあるのでしょうか。
主なメリットは、以下の2つです。

メリット①若手人材の活躍が見込める

日本人は若手の労働力が不足しており、多くの訪問介護事業所がヘルパーの高齢化を大きな課題としています。
訪問介護では力を必要とする場面も多く、力や体力のある若手人材は、特に求められています。
パワフルな若手人材が加わることで組織が活性化することも期待できます。
 
訪問介護に限ったことではなく、介護業界全体が人手不足の状態です。
日本で働きたいと考えている外国人は多いため、訪問介護分野で労働力をしっかり確保できるようになれば、業界全体の人手不足解消にも寄与すると考えられます。

メリット②サービスの品質向上に期待できる

人手が確保できることにより、これまで以上にサービスの質を高められるようになります。
 
また、特定技能外国人との異文化交流を通じて、新たな視点から既存サービスの改善点が見つかり、より良いサービス開発につながる可能性もあります。
各国の介護事情は異なるため、外国人労働者が持つ自身の国の介護に関する知識を学び、取り入れていくのもおすすめです。

訪問介護分野に特定技能制度が導入されることのデメリット

訪問介護の分野に特定技能制度が導入されることで、どういったデメリットがあるのかも考えておきましょう。
 
やはり特に大きなデメリットとして押さえておかなければならないのが、特定技能外国人の日本語能力には個人差がある点が挙げられます。
訪問介護では利用者との間でしっかりとコミュニケーションを取り、信頼関係を築いていかなければなりません。
ですが、言語の壁があるとうまくコミュニケーションが取れず、意思疎通がうまくいかず、誤解が生じる可能性もあります。
そのため、訪問介護の分野で働く特定技能外国人は、高いレベルの日本語能力が求められるといえるでしょう。
 
日本人にとって当たり前のことが外国人にとってはそうではないこともありますし、その逆もまた当てはまります。
文化的な違いにより、特定技能外国人の対応に違和感を覚えてしまう利用者もいるでしょう。
 
訪問介護サービスを提供する企業や事業者としては細かい部分までしっかりサポートしなければなりません。
ただ、多くの事業者は人手不足の状態に悩んでいるため、なかなかサポートのために人員を割くことが難しいケースもあるはずです。
その結果、目の届かないところができてしまい、トラブルが発生するおそれもあります。
 
特に、特定技能外国人を受け入れてからしばらくの間は必要なサポートや対応が把握できず、戸惑う場面もあるかもしれません。
特定技能外国人が業務に慣れることで、職場にとって大きな戦力となるので、しっかりと支えるための環境づくりが求められます。

特定技能「訪問介護」解禁で人手不足問題の緩和が期待される

本記事では、特定技能「訪問介護」が解禁されることを受け、訪問介護サービスを提供する事業者が押さえておきたいポイントを紹介しました。
事業者が満たしておかなければならない条件や、どういった形で受け入れ体制を強化していけば良いかなどについてご理解いただけたかと思います。
 
解禁により訪問介護分野の人手不足緩和が期待できるので、特定技能外国人の採用を、選択肢の一つとして前向きに検討してみてください。
 
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