外国人採用のメリット・デメリットと外国人労働者を採用する方法
「外国人採用のメリットを教えて」「デメリットや注意点も知っておきたい」と考えていませんか。
多くの企業が採用を始めているため、気になっている方は多いでしょう。
外国人労働者の採用には、優秀な若手人材を確保できる、人手不足を解消しやすくなるなどのメリットがあります。
ただし、デメリットや注意点がないわけではありません。
ここでは、外国人採用のメリット、デメリットに加え、外国人採用の問題点、外国人採用の方法などを解説しています。
目次[非表示]
- 1.日本における外国人労働者の受け入れ状況
- 2.外国人労働者を採用するメリット
- 2.1.メリット① 優秀な若手人材を確保できる
- 2.2.メリット② グローバル化に対する多言語対応が叶う
- 2.3.メリット③ 海外進出へのきっかけになる
- 2.4.メリット④社内の活性化につながる
- 2.5.メリット⑤助成金を利用できる
- 2.6.メリット⑥人手不足を解消できる
- 3.外国人労働者を採用するデメリット
- 3.1.デメリット① 習慣や文化の違いがある
- 3.2.デメリット② 円滑にコミュニケーションできない恐れがある
- 3.3.デメリット③ 雇用手続きが煩雑である
- 3.4.デメリット④ 受け入れまでに時間がかかる
- 4.外国人労働者の採用に関する問題点
- 4.1.外国人労働者に対する誤解
- 4.2.労働環境の未整備
- 4.3.差別的な言動
- 4.4.日本国内の賃金上昇の停滞
- 5.外国人労働者を受け入れる方法
- 6.外国人労働者を採用するまでの流れ
- 7.特定技能とは
- 8.外国人労働者の採用はメリットの多い取り組み
日本における外国人労働者の受け入れ状況
日本国内における外国人労働者数は、ほぼ右肩上がりで増加しています。
厚生労働省が発表している資料によると、外国人労働者数の推移は以下のとおりです。
年 |
外国人労働者数 |
2008年 |
48.6万人 |
2010年 |
65.0万人 |
2012年 |
68.2万人 |
2014年 |
78.8万人 |
2016年 |
108.4万人 |
2018年 |
146.0万人 |
2020年 |
172.4万人 |
2022年 |
182.3万人 |
2023年 |
204.9千人 |
2023年10月末時点の外国人労働者数は2,048,675人です。
2022年から225,950人増加しています。
この数は、届け出が義務化された2007年以降で最多です。
外国人労働者数は、なぜ増加を続けているのでしょうか。
出典:厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和5年 10 月末時点)」
外国人労働者の受け入れが増加している背景
外国人労働者数が増加している理由として、高齢化に起因する人手不足があげられます。
内閣府が発表している「令和5年高齢社会白書」によると、2022年における生産年齢人口は7,421万人です。
2000年(8,622万人)から、1,201万人、減少しています。
出典:内閣府「令和5年高齢社会白書」
以前よりも人材を確保しにくくなっていることがうかがえます。
このことは、大阪府やあしぎん総合研究所が実施した調査でも明らかになっています。
両調査で外国人を雇用する理由で最も多かった回答は次のとおりです。
【最も多かった回答】
|
また、大阪府の調査では「専門的知識・技能を有する人材の確保(35.7%)」、あしぎん総合研究所の調査では「外国人ならではの能力が必要だから(18.9%)」と回答した企業の割合も高くなっています。
出典:大阪府「外国人雇用事業者等アンケート調査結果」
出典:あしぎん総合研究所「「2023 年度外国人雇用に関する調査」の結果について」
ここまでをまとめると、人手不足を解消するため、あるいは優秀な人材を確保するため、外国人労働者を採用している企業が多いといえるでしょう。
外国人労働者を採用するメリット
外国人労働者の採用にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここからは、期待できる主なメリットを紹介します。
メリット① 優秀な若手人材を確保できる
前述の通り、日本では生産年齢人口が減少しています。
ポイントは、10代、20代の人口が40代、50代に比べて少ないことです。
以前に比べて、若手人材の確保が難しくなっています。
外国人労働者を採用すれば、少子高齢化が進展している日本でも、若手人材を確保しやすくなります。
外国人労働者に門戸を開くことで、求職者の母数を増やせるためです。
優秀な人材を確保しやすくなる点も見逃せません。
日本で働きたい外国人労働者は、仕事や学習に対する意欲が高い傾向があります。
仕事で求められるスキルを短期間で身につける外国人労働者は少なくありません。
優秀な若手人材を確保しやすくなる点は、外国人労働者を採用する大きなメリットといえるでしょう。
メリット② グローバル化に対する多言語対応が叶う
多言語対応を実現できる点も、外国人労働者を採用するメリットです。
程度の差はあれ、外国人労働者の多くは母国語と日本語を話せます。
外国人労働者の中には、プラス1言語を操れるトリリンガル、プラス2言語を操れるクァドリンガルもいます。
このような人材が社内に一人でもいれば、グローバル化に対応しやすくなるでしょう。
たとえば、訪日外国人に対応しやすくなるなどが考えられます。
ちなみに、2022年の訪日外国人旅行者数は383万人、2023年の訪日外国人旅行者数は2,507万人です。
新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着いたことで急速に回復しています。
それでも、コロナ前の水準(2019年3,188万人、2018年3,119万人、2017年2,869万人)には戻っていません。
今後も、訪日外国人旅行者数は増加すると予想されます。
関連する業界は、多言語対応を実現することでビジネスを拡大できる可能性があります。
出典:国土交通省観光庁「訪日外国人旅行者数・出国日本人数」
メリット③ 海外進出へのきっかけになる
外国人労働者の採用が、海外進出のきっかけになることも考えられます。
海外進出にあたり問題になりやすいのが、言語、商習慣、法律などです。
言語だけであれば日本人労働者でも対応できる可能性はありますが、商習慣などはその国で暮らしていないとわからないことがあります。
文化の違いなどで、日本の常識が通じないケースは少なくありません。
その国で生まれ育った外国人労働者であれば、日本との違いを理解しつつ現地の情報を集めたり現地の担当者とコミュニケーションを図ったりできるでしょう。
母国と日本の架け橋になれる点も外国人労働者の魅力です。
メリット④社内の活性化につながる
社内の活性化につながる点も、外国人労働者を採用するメリットとしてあげられます。
慣れない環境で努力する姿、仕事に積極的に取り組む姿は、一緒に働く日本人労働者によい影響を与えます。
異なる文化で育った外国人労働者の視点が社内を活性化することもあります。
たとえば、これまで気づいていなかった業務の問題点を指摘したり、独創的なアイデアで新たなビジネスチャンスを創造したりすることが考えられます。
もちろん、すべての外国人労働者がこのような役割を果たすわけではありませんが、社内に新たな視点を加えられる可能性がある点は採用するメリットといえるでしょう。
メリット⑤助成金を利用できる
外国人労働者の採用にともない、さまざまな助成金を活用できる可能性があります。
一例としてあげられるのが、厚生労働省が実施している「人材確保等支援助成金の外国人労働者就労環境整備助成コース」です。
参考に、制度の概要を紹介します。
概要 |
外国人労働者の職場定着を目指し、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行う事業主に対して経費の一部を助成。 |
主な受給要件 |
|
受給額 |
|
支給対象経費 |
通訳費、翻訳機器導入費、翻訳料、弁護士委託料など |
出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」
このほか、自治体が実施している助成金制度などもあります。
興味がある方は、自治体の窓口などで確認するとよいでしょう。
メリット⑥人手不足を解消できる
外国人労働者の採用は、人手不足の対策にもなりえます。
このことは、大阪府が実施した「外国人雇用事業者等アンケート調査結果」やあしぎん総合研究所が実施した「2023 年度外国人雇用に関する調査」の結果を見ればわかります。
出典:大阪府「外国人雇用事業者等アンケート調査結果」
出典:あしぎん総合研究所「「2023 年度外国人雇用に関する調査」の結果について」
外国人労働者まで採用の枠を広げれば、日本国内で採用が難しい専門スキルをもった人材を確保しやすくなったり、応募者を集められない業界、地域でも人材を確保しやすくなったりします。
人手不足に悩む事業者が、積極的に検討したい対策といえるでしょう。
外国人労働者を採用するデメリット
外国人労働者の採用には、注意したいデメリットもあります。
主なデメリットは次の4点です。
デメリット① 習慣や文化の違いがある
日本人労働者と外国人労働者は、常識が異なる可能性があります。
育ってきた環境などが異なるためです。
たとえば、あたり前と思っていた行動が非常識な行動だったなどが考えられます。
どちらがよい、悪いではなく、習慣や文化の違いです。
しかし、行き違いによりトラブルに発展する恐れがあります。
外国人労働者を採用するときは、社内全体で相手国の習慣や文化について理解を深めておくことが大切です。
お互いに違いを理解しておけば、無用なトラブルを防ぎやすくなります。
デメリット② 円滑にコミュニケーションできない恐れがある
外国人労働者の日本語能力によっては、コミュニケーションを円滑に図れないことも考えられます。
母国語並みに日本語を操れる外国人労働者は多くありません。
職場で起こりやすい問題といえるでしょう。
コミュニケーション方法の違いにも注意が必要です。
日本人は、言語化されていない相手の心情をくみ取ってコミュニケーションを図る傾向があります。
すべての国が、このような方法でコミュニケーションを図っているわけではありません。
「いわなくてもわかるだろう」が通じない国もあるのです。
具体的に指示を伝えるなど、相手国のコミュニケーション方法に配慮した接し方が求められます。
デメリット③ 雇用手続きが煩雑である
日本人労働者に比べて、雇用手続きが難しい点にも注意が必要です。
たとえば、外国人は就労できる職種が限られています。
したがって、採用活動を行う前に、事前調査を行わなければなりません。
また、選考では就労ビザ取得要件についても確認が必要です。
具体的には、学歴、職歴の要件を満たす必要があります。
問題がなければ、内定後に就労ビザを申請することになります。
就労ビザの申請は原則として本人が行いますが、企業のサポートを必要とするケースが少なくありません。
申請手続きについて、事業者も理解を深めておく必要があります。
ここで説明した雇用手続きは、大まかな流れを示したものです。
実際の雇用手続きは、さらに煩雑になるケースが多いでしょう。
デメリット④ 受け入れまでに時間がかかる
受け入れ準備に時間がかかる点も、外国人労働者を採用するデメリットです。
具体的な準備はケースで異なりますが、外国人労働者向けの研修プログラムを用意したり、配属部署の受入態勢を整備したりしなければならないこと多いでしょう。
これらのほか、住居の手配が必要になるケースもあります。
面倒に思うかもしれませんが、準備を怠ると外国人労働者の定着率が低下するなど、トラブルが起こりやすくなります。
入社後に、スムーズに働ける環境を用意しておくことが大切です。
初回の採用でしっかりと準備しておけば、2回目以降の採用から準備の負担を減らせます。
外国人労働者の採用に関する問題点
続いて、外国人労働者の採用で遭遇しやすい問題点を紹介します。
外国人労働者に対する誤解
採用企業の中には「外国人労働者を安価で雇える労働者」「劣悪な環境でも働いてくれる労働者」と捉えているところがあります。
しかし実際は、国籍、雇用形態などに関わらず労働基準法が適用されます。
したがって、最低賃金を下回る賃金は最低賃金法違反です。
第二十八条 賃金の最低基準に関しては、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)の定めるところによる。
引用:e-GOV法令検索「昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法」
また、時間外、休日、深夜の割増賃金も、日本人労働者と同じように発生します。
外国人だからという理由だけで、安価に雇えるわけ、劣悪な労働環境で働いてくれるわけではありません。
労働環境の未整備
外国人労働者を採用している企業の中には、労働環境が整っていないところもあります。
厚生労働省が公表した資料では、9,455事業場のうち6,796事業場(71.9%)で労働基準関係法令違反が認められました。
主な違反事項は次のとおりです。
【違反事項】
|
出典:厚生労働省「外国人技能実習生の実習実施者に対する平成31年・令和元年の監督指導、送検等の状況を公表します」
外国人労働者の定着率を高めるため、あるいは外国人労働者の能力を引き出すため、事業者は労働環境を見直す必要があるといえるでしょう。
差別的な言動
職場における差別的な言動も、外国人労働者の採用に関わる問題点としてあげられます。
職場で身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離しなどの差別にあっている外国人労働者もいます。
特定非営利活動法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」が発表している資料に、次の事例などが記載されています。
国籍 |
業種 |
事例 |
カンボジア |
建設(水道管工事) |
日本人従業員から「国へ帰れ」「バカ、アホ」などの暴 言を浴びせられたうえ激しい暴行も加えられる。うつ病を発症して、労災認定られる。 |
出典:特定非営利活動法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」「外国人労働者が遭遇するパワーハラスメントハラスメント(レイシャルハラスメント)事例」
採用企業が真剣に向き合うべき深刻な問題といえるでしょう。
日本国内の賃金上昇の停滞
日本国内の賃金が伸び悩んでいることも問題点のひとつとしてあげられます。
OECDの発表によると日本の平均賃金(2021年を基準年とする米ドルと購買力平価(PPP))は世界で25番目です。
外国人労働者にとって魅力的な労働市場とはいえなくなりつつあります。
他国との競争で負けるため、高度人材を確保しにくくなっています。
アジア諸国との賃金格差が縮まっている点もポイントです。
今後は、アジア諸国からの採用も難しくなる恐れがあります。
関連記事:特定技能の賃金・給与の相場と決め方・賃金に関する注意点
出典:OECD「平均賃金 (Average wage)」
外国人労働者を受け入れる方法
外国人労働者は、さまざまな方法で採用できます。
主な採用方法として以下のものがあげられます。
【採用方法の例】
|
自社サイトのメリットは、採用コストを抑えやすいことです。
一方で、応募者は集めにくいといえるでしょう。
基本的には、何かしらのきっかけで自社の存在を知った外国人労働者が対象になります。
SNSのメリットは、情報の拡散力が高いことと双方向のコミュニケーションを行えることです。
ただし、応募者の絞り込みは難しい傾向があります。
外国人労働者が利用しているSNSでアピールすることが大切です。
人材派遣・紹介会社のメリットは、求めている人材にアプローチしやすいことです。
採用にかかる手間を省きやすい点も魅力です。
ただし、結果は人材派遣・紹介会社のクオリティから影響を受けます。
信頼できる事業者を選ぶことが大切です。
リファラル採用は、外国人労働者などから友人などを紹介してもらう採用手法です。
他の採用手法に比べて、コストを抑えやすい傾向があります。
ただし、紹介者の認識が不足しているとミスマッチが発生しやすくなります。
外国人労働者を採用するまでの流れ
ここからは、外国人労働者を採用する基本的な流れを紹介します。
【採用の流れ】
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ポイントは、内定後に雇用契約を締結することです。
就労ビザの申請で、一定の要件を満たす雇用契約書が必要になります(内定通知書などでも可)。
就労ビザの発行には、1~3カ月程度かかることが一般的です。
この間に社内の受入態勢を整えて入社準備を進めます。
実際の流れはケースで異なるため、ひとつずつ確認しながら手続きを進めて行くことが大切です。
特定技能とは
日本国内で働く外国人労働者数は、ほぼ右肩上がりで増加しています。
要因のひとつとしてあげられるのが特定技能外国人の増加です。
特定技能は、人材を確保することが難しい産業分野で、一定の専門性、技能を有する外国人労働者を受け入れる制度といえるでしょう。
制度開始(2019年)からの5年間で、その数は20万人を突破しています。
ここでは、特定技能について詳しく解説します。
出典:出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況(令和5年12月末)」
1号と2号の違い
特定技能の在留資格は「1号」と「2号」に分かれます。
主な違いは次のとおりです。
項目 |
1号 |
2号 |
在留期間 |
1年を超えない範囲で法務大臣が指定する期間ごとに更新(通算で5年が上限) |
3年、1年、6カ月ごとに更新(更新の上限はなし) |
技能水準 |
試験などで確認(技能実習2号を修了した方は免除) |
試験などで確認 |
日本語能力 |
生活、業務に必要な日本語能力を試験などで確認(技能実習2号を修了した方は免除) |
試験などでの確認はなし |
出典:外務省「制度の概要」
また、1号は登録支援機関などの支援の対象です。
対応業種
受け入れ分野も1号と2号で異なります。
それぞれの受け入れ分野は次のとおりです。
1号の受け入れ分野 |
2号の受け入れ分野 |
介護、ビルクリーニング、建設、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、造船・船工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業 |
ビルクリーニング、建設、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、造船・船工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業 |
1号は、介護も受け入れ分野です。
在留資格「介護」があるため、2号は受け入れ分野から介護が外れていると考えられます。
新たに「自動車運送業」、「鉄道」、「林業」、「木材産業」の4分野が特定技能制度の受け入れ対象に追加されることが決定しました。 |
外国人労働者の採用はメリットの多い取り組み
ここでは、外国人労働者を採用するメリット、デメリットなどを解説しました。
外国人労働者の採用には、優秀な人材を確保しやすくなる、人手不足を解消しやすくなるなどのメリットと受け入れに時間がかかる、雇用手続きが複雑などのデメリットがあります。
採用にあたり多少の負担はかかりますが、企業が抱えている課題を解決できる可能性がある取り組みと考えられます。
メリットのほうが大きいと感じる方は、外国人労働者の採用を積極的に検討してみてはいかがでしょうか。
外国人労働者を採用・雇用するにあたり、わからないことや難しいと感じることがある場合は、人材紹介サービス「スタッフ満足」までご相談ください。
外国人採用に関するプロとして、各企業のニーズに合った人材の採用をサポートしています。