家族滞在ビザとは?要件や企業にもたらされる恩恵を紹介
近年、深刻化する人手不足を背景に、特定技能外国人材の採用を検討する企業が増加しています。
しかし、採用を進める中で「優秀な人材の定着のために、家族の帯同は認められないのか」「家族を呼ぶめには、どのような条件を満たす必要があるのか」といった疑問をお持ちの企業さまも多いのではないでしょうか。
本記事では、特定技能外国人の家族滞在ビザについて、申請要件から具体的な手続き方法まで解説します。
これから家族滞在ビザの申請をお考えの企業さまは、ぜひ参考になさってください。
目次[非表示]
- 1.家族滞在ビザとは?
- 2.家族滞在ビザの要件
- 2.1.① 配偶者もしくは子であること
- 2.2.② 日本で生活するに足る経済力を有していること
- 2.3.③ 家族関係を証明できること
- 3.家族滞在ビザの申請方法
- 3.1.方法①:本人申請の場合
- 3.2.方法②:代理人申請の場合
- 4.家族滞在ビザの申請に必要な書類
- 5.家族滞在ビザが企業にもたらすメリット
- 6.家族滞在ビザで就労する際に覚えておきたいこと
- 7.家族滞在ビザの資格取得者を雇用する際の注意点
- 8.家族滞在ビザに関するよくある質問
- 8.1.Q. 家族ビザは内縁でも取得できるの?
- 8.2.Q. 成人の子供でも問題ない?
- 8.3.Q.大学入学は可能?
- 9.まとめ
家族滞在ビザとは?
家族滞在ビザは、日本に在留する外国人の扶養を受ける配偶者や子供を対象とした在留資格です。
在留期間は扶養者の期間を超過できず、3か月、6か月、1年、3年、5年のいずれかに設定されます。
また就労が制限されているため、働く場合は「資格外活動許可」を取得しなけばなりません。
特に特定技能外国人の場合、在留資格の種類によって家族の受け入れ条件が異なるので注意しましょう。
家族滞在ビザの要件
家族滞在ビザの取得には、以下3つの基本要件があります。
- 配偶者もしくは子であること
- 日本で生活するに足る経済力を有していること
- 家族関係を証明できること
申請者の生活基盤と、正しい家族関係を確認しなくてはなりません。それぞれ詳しく解説します。
① 配偶者もしくは子であること
家族滞在ビザの対象は、在留外国人の配偶者および子に限定されます。
ここでの「配偶者」とは、法的に婚姻関係が成立している者を指し、事実婚や婚約者は対象外です。
子供は、未成年(18歳未満)であることが条件です。養子の場合、法的な養子縁組が完了していなければなりません。
特定技能外国人の場合は、在留資格によって家族の受け入れ条件が異なります。
在留資格「特定技能1号」では原則として家族の呼び寄せは認められていません。
一方、「特定技能2号」では家族と共に日本での生活が可能です。
ただし、2024年4月現在、特定技能2号への移行が認められているのは「建設」と「造船・舶用工業」の2分野のみです。
また、特定技能2号への移行には相当な実務経験と高度な技能が求められます。
② 日本で生活するに足る経済力を有していること
家族滞在ビザの申請には、扶養者が日本で生活するに足る経済力を有しており、家族全員の生活を支えられることを証明しなくてはなりません。
入国在留管理庁が定める、具体的な基準は以下の通りです。
【扶養者の年間収入基準表】
扶養する家族の人数 |
必要な年収目安 |
月収の目安 |
1人の場合 |
300万円以上 |
25万円以上 |
2人の場合 |
350万円以上 |
29万円以上 |
3人の場合 |
400万円以上 |
33万円以上 |
4人の場合 |
450万円以上 |
37万円以上 |
また、以下の条件も重要な審査項目です。
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③ 家族関係を証明できること
家族滞在ビザの取得には、家族であることの証明が欠かせません。
証明には、以下の書類の提出が必要となり、配偶者と子供では書類が異なります。
【配偶者の場合】
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【子供の場合】
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すべての証明書は、発行から3か月以内でなければいけません。
外国語で作成された書類には、必ず日本語訳を添付する必要があり、翻訳は公的機関や翻訳会社による正式なものにしましょう。
家族滞在ビザの申請方法
家族滞在ビザの申請には、「本人申請」と「代理人申請」の方法があります。
申請場所は原則として、扶養者の居住地を管轄する地方出入国在留管理局です。
申請から許可までは通常1〜3か月程度かかりますので、余裕を持った申請を行いましょう。
それぞれの申請方法について詳しく解説していきます。
方法①:本人申請の場合
本人申請とは、扶養者本人が日本国内の地方出入国在留管理局で申請を行う方法です。
申請の流れは以下の通りです。
【必要書類の準備】
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【申請書類の提出】
|
本人申請のメリットは、申請者本人が直接手続きを行えるため、追加で代理人費用がかからない点です。
一方、手続きや必要書類の準備に不安がある場合は、代理人申請を検討しましょう。
方法②:代理人申請の場合
代理人申請とは、行政書士などの資格を持つ専門家に申請を依頼する方法です。
初めての申請や、複雑なケースの場合におすすめです。
手続きの流れは以下の通りです。
【代理人の選定】
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【申請手続き】
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代理人申請は専門家のサポートで、申請の不備を防げるのがメリットです。
また、追加資料の要請にも適切に対応できるため、スムーズな申請が期待できるでしょう。
ただし、代理人費用が別途必要となりますので、事前に費用の確認をしておくと安心です。
家族滞在ビザの申請に必要な書類
家族滞在ビザの申請には、以下の書類が必要です。
- 申請者本人の身分事項に関する書類
- 扶養者の在留資格・経済力を証明する書類
- 家族関係を証明する書類
申請時から3か月以内に発行されたものが有効とされ、外国語で作成された書類には日本語訳の添付が求められます。
【必要書類一覧】
申請者(家族)に関する書類
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扶養者に関する書類
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家族関係を証明する書類
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その他必要に応じて提出を求められる書類
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家族滞在ビザが企業にもたらすメリット
特定技能外国人材の家族の在留のサポートは、企業に大きなメリットをもたらします。
一番のメリットは、家族が近くにいることで安心して仕事に専念でき、離職率の低下につながることでしょう。
出入国在留管理庁が発表した令和6年6月末の在留外国人数は、358万8,956人(前年末比17万7,964人、5.2%増)で、過去最高を更新しました。
以下の在留資格別の在留外国人の構成比によると、家族滞在は28,3204人で全体の7.9%です。
この増加傾向は、企業による家族の受け入れ支援の重要性を示す一つの指標となります。
参照元:出入国在留管理庁|令和6年6月末現在における在留外国人数について【第3図】 在留資格別 在留外国人の構成比
実際に家族滞在ビザが企業にもたらすメリットは、以下を参考にしてください。
メリット |
主な効果 |
期待される成果 |
離職リスクの低減 |
家族との生活基盤確立 |
長期就労の実現 |
業務効率の向上 |
生活基盤の安定 |
業務への集中 |
採用競争力の強化 |
充実した支援体制 |
優秀人材の確保 |
離れて暮らす母国の家族を心配する必要がなくなると、離職率が低下し、業務効率は自然と向上します。
さらに安定した生活環境は、長期的なキャリア形成への意欲向上につながり、企業も大きなメリットを得られるでしょう。
家族滞在ビザで就労する際に覚えておきたいこと
家族滞在ビザは、就労活動が原則として禁止されており、働くことはできません。
家族滞在ビザで就労する場合、資格外活動許可の取得が必須であり、以下の2種類があります。
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近年、家族滞在者の就労ニーズは高まっており、この許可制度を正しく理解することが重要となるでしょう。
以下で詳しく解説します。
包括許可
包括許可とは、一定の条件内であれば、就労内容を問わずに働ける制度です。
【包括許可の主な条件】
就労時間 |
1週間あたり28時間以内 |
申請場所 |
地方出入国在留管理局 |
必要書類 |
資格外活動許可申請書 |
手数料 |
無料 |
有効期限 |
在留期間の満了日まで |
申請から許可までは通常1週間程度かかります。
また、風俗営業等に該当する業務での就労は認められません。
個別許可
個別許可は、特定の就労内容について、包括許可の制限(週28時間以内)を超えて働くことができる制度です。
ただし、審査基準は包括許可より厳格となっています。
【個別許可の主な特徴】
対象となる活動 |
専門的な技術や知識を要する業務 |
審査のポイント |
本来の在留活動に支障がないか |
必要書類 |
資格外活動許可申請書 |
個別許可は、高度な専門性を持つ人や、特別な事情がある場合に認められることが多いです。
申請の際は、具体的な就労の必要性を示す資料の提出が求められます。
家族滞在ビザの資格取得者を雇用する際の注意点
家族滞在ビザ保持者の雇用には、いくつかの重要な注意点があります。
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適切な雇用管理は、企業のコンプライアンス遵守において非常に重要となるでしょう。
以下で注意点を解説します。
在留カードを確認する・活動内容にあった雇用をする
在留カードの確認は、雇用管理の基本となります。
確認すべき項目は以下の通りです。
【在留カード確認のポイント】
確認項目 |
確認内容 |
在留資格 |
「家族滞在」の記載 |
在留期限 |
有効期限の確認 |
資格外活動許可 |
許可シールの有無 |
就労制限 |
週28時間以内等の条件 |
また、活動内容については以下の点に注意が必要です。
- 風俗営業等の制限業務は不可
- 専門的な業務の場合は個別許可が必要
- シフト管理による就労時間の把握
就業時間を増やしたい場合は"技術・人文知識・国際業務"へ変更する
週28時間以上の就労を希望する場合は「技術・人文知識・国際業務」への変更が必要です。
さらに、以下の要件を満たす必要があるので確認しましょう。
【資格変更の要件】
学歴要件 |
大学(短大)卒業以上 |
職務要件 |
専門的な知識 |
給与要件 |
日本人と同等以上の給与水準 |
離婚した場合は在留資格変更が必須
家族滞在ビザは、配偶者との家族関係が前提となっています。
離婚した場合は、以下の対応が必要です。
期 限 |
対応内容 |
14日以内 |
離婚届の提出 |
在留期限まで |
新たな在留資格への変更 |
尚、在留資格変更が認められない場合は、帰国が必要となる可能性があります。
そのため、企業としては従業員の状況を適切に把握し、必要に応じて支援を検討しましょう。
家族滞在ビザに関するよくある質問
家族滞在ビザについて、企業の人事担当者からよく寄せられる質問と回答をまとめました。
参考にしてください。
よくある質問と回答一覧は以下のとおりです。
- 家族ビザは内縁でも取得できるの?
- 成人の子供でも問題ない?
- 大学入学は可能?
Q. 家族ビザは内縁でも取得できるの?
家族滞在ビザにおいて、内縁関係での申請は原則として認められません。
入国管理局では、以下の点を重視しています。
【申請における重要ポイント】
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ただし、以下のような特殊なケースでは、個別の判断となる可能性があります。
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Q. 成人の子供でも問題ない?
成人の子供の場合、原則として家族滞在ビザの対象とはなりませんが、以下の条件を満たす場合は認められる可能性があります。
【考慮される条件】
経済的依存 |
扶養が必要な状態であること |
健康上の理由 |
障がいにより独立した生活が困難 |
教育関連 |
日本での学業継続の必要性 |
Q.大学入学は可能?
家族滞在ビザでの大学入学は可能です。
ただし、以下の手続きが必要となります。
【大学入学時の手続き】
入学前の準備 |
大学の入学許可を取得 |
在留資格 |
「留学」への在留資格変更 |
メリット |
28時間までのアルバイトが可能 |
まとめ
家族滞在ビザは、外国人材と家族が安心して日本で生活するための重要な在留資格です。
申請要件や手続きは複雑ですが、適切なサポートがあれば、外国人材の長期的な定着と活躍が期待できるでしょう。
特定技能外国人の採用でお悩み方は、豊富な実績を持つスタッフ満足にご相談ください。
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