ミャンマー人の特徴とは?ともに働く際のポイントも解説
近年、人材不足を補う目的で、外国人採用を検討している企業は増加傾向にあります。
そんな中、注目したいのはミャンマー人です。
日本で働くミャンマー人の数は年々増え続けており、2023年10月末のデータでは71,188人が就労しています。
対前年増加率は49.9%増で、1位のインドネシアに次ぐ2位の数値です。
本記事では律儀でまじめ、日本人との相性がよいと言われるミャンマー人の特徴や、ともに働く際のポイントを解説します。
これからミャンマー人を雇用しようとお考えの企業さまは、ぜひ参考になさってください。
目次[非表示]
- 1.ミャンマーの基本情報
- 1.1.国内情勢
- 2.ミャンマー人の特徴
- 2.1.温和で思いやりがある
- 2.2.家族を大切にする
- 2.3.目上の人を敬う
- 2.4.叱られることには慣れていない
- 2.5.挨拶の習慣がない
- 2.6.意見するときはストレートに発言する
- 3.ミャンマーと日本の関わり
- 3.1.ミャンマーから日本へ来る人は増えている
- 3.2.ミャンマー人は日本語の習得が得意
- 4.ミャンマーの教育制度
- 5.ミャンマー人と働く際のポイント
- 5.1.人前で強く叱らない
- 5.2.無理し過ぎていないか定期的に様子をうかがう
- 5.3.宗教や価値観について理解する
- 6.ミャンマー人を採用する際には特定技能制度の活用がおすすめ
- 7.まとめ
ミャンマーの基本情報
ミャンマーは、正式名称をミャンマー連邦共和国といい、東南アジアの北西部に位置しています。
タイ、中国、インド、ラオス、バングラデシュと国境を接しており、面積は日本の約1.8倍です。
人口は2019年推計で約5,114万人となっています。
特筆すべきは、18歳〜65歳の生産年齢人口が全体の約68%と若い働き手が多く、更に15歳以下の少年人口が約24%を超えている点です。
日本とは真逆の理想的な人口ピラミッドを形成しており今後、人口ボーナスが大いに期待できる状況です。
参照元:ミャンマーの年代別・男女別人口ピラミッドグラフ(2019年最新版)
現在の首都は「ネーピードー」ですが、ミャンマー最大の都市は、旧首都である「ヤンゴン」です。
「ヤンゴン」は、現在もミャンマー最大の経済都市として賑わいを見せています。
ミャンマー人には農業従事者が多く、生産年齢人口の70%が従事しており、米、豆類、胡麻などの栽培と輸出が盛んです。
ルビーや翡翠などの鉱石をあつかう鉱業や、繊維産業も盛んで日本へも輸出されています。
多民族国家で数種類の言語がありますが、ミャンマー語は135民族の公用語です。
構文の並びが日本語と同じSOV型(主語ー目的語ー動詞)のため、ミャンマー人はその他の外国人に比べて、日本語の習得が早い傾向があります。
また、ミャンマー人の多くは敬虔な仏教徒です。
生活の中に祈りを伴う仏教思想が浸透しており、仏教徒の割合は人口の90%に達し、そのうち13%を僧侶が占めています。
項 目 |
内 容 |
地理条件 |
・東南アジアに位置し、面積は日本の約1.8倍(68万平方キロメートル) |
人 口 |
・約5,114万人(2019年推計) |
首 都 |
・ネーピードー(2006年度まではヤンゴン) |
主要産業 |
・農業(米、豆類、ゴマ、トウモロコシなど)労働力の約70%が従事 |
言 語 |
・ミャンマー語(公用語)、シャン語、カレン語など |
民 族 |
・ビルマ族(約70%)、その他135の少数民族 |
宗 教 |
・仏教(約90%)、キリスト教、イスラム教など |
国内情勢
ミャンマーは、2021年2月1日に国軍によるクーデターが発生し、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問、ウィン・ミン大統領ら政権幹部を拘束、全権を掌握しました。
以降、各地で抗議デモが活発化しており、国軍や警察の弾圧による一般市民の死亡や負傷事案が発生するなど不安定な情勢が続いています。
このような状況から、日本政府は日本への在留を希望するミャンマー人についての緊急避難措置として、在留や就労を認めています。
一方で誤用、濫用的に緊急避難措置を利用していることを受け、2024年10月1日から取り扱いを変更しました。
参照元:【重要】在留ミャンマー人への緊急避難措置の内容が変わりました/JITCO
クーデター以降出国者が増え続けているミャンマーですが、それに拍車をかけたのが2024年に施行された徴兵制度です。
この制度から逃れる目的で出国する若者が急増した為、現在23歳〜31歳の男性に対して出国が禁止されています。
また、ミャンマーの労働省は2024年9月6日以降、海外で働くミャンマー人に賃金の25%を母国に送金することを義務付けました。
これはミャンマー政府にとって貴重な外貨収入でもあります。
ミャンマー人の特徴
ミャンマー人は協調性が高いため、日本人との相性がよいと言われています。
また、仏教徒であることも理由のひとつです。
しかし、日本人には少し理解しがたいような、ミャンマー人特有の特徴もあります。
それらを理解していないと、不本意な誤解からトラブルになる場合があるので注意が必要です。
ここではミャンマー人の特徴を6つ解説します。
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温和で思いやりがある
ミャンマー人は9割が仏教徒のため、温和で思いやりがある人が多いのが特徴です。
ミャンマーにおける仏教の教えでは、怒りの感情を表に出すことはタブー視されていて、穏やかでいることが美徳とされています。
「人は何度も生まれ変わる」という輪廻転生の思想がベースにあり、困っている人に自ら手を差し伸べることは『徳を積む行為』と考えられ、寄付をする習慣があります。
寄付の多さは、2014年の世界寄付指数で1位になったことでもわかるでしょう。
参照元:世界寄付指数/Wikipedia
家族を大切にする
ミャンマー人にとって、家族は大切な存在として重要視されています。
仏教の思想が影響しているとされますが、親子の絆が強く、親を敬う心を強く持っています。
就職先や結婚相手を決めるような大きな選択をする際も、親の意向を尊重する傾向にあるようです。
したがって、ミャンマー人に接する際の注意点として、家族への悪口などは冗談でも決して口にしてはいけません。
目上の人を敬う
ミャンマー人は、親や学校の先生、僧侶など目上の人を敬い大切にします。
これは職場の上司に対しても同じです。
例えば、仕事で指示を出すと忠実に守ろうとする姿勢を崩しません。
ですから、多くの指示を一度に出してしまうと、処理しきれず、混乱してしまうこともあります。
ミャンマー人に仕事の指示を出す際は、できる範囲を決めてから指示することが大切です。
叱られることには慣れていない
ミャンマー人は、よい意味でプライドが高い国民なので、人前で叱られることを嫌がります。
例えば、仕事中にミスがあった時、大勢の前で叱責すると、こちらが思っている以上にへこんでしまうでしょう。
ミャンマー人に指導をする際には、個別にやさしく指導することが大切です。
伝え方さえ正しければ、前向きに捉えて作業方法を見直してくれるでしょう。
挨拶の習慣がない
ミャンマー人には、挨拶をする習慣がありません。
基本的にミャンマー語には、日本語のように様々なシチュエーションで使われるような挨拶の言葉がないからです。
例えば『ミンガラーバー』は、時間に関係なくつかえる挨拶の言葉で、日常的に使われていて、ハワイの『アロハ』とよく似ています。
このようなフランクな挨拶言葉はいくつかありますが、日本語のようにTPOに合わせて使い分ける細かな挨拶言葉はありません。
そもそも挨拶をする文化はないので、ミャンマーの文化を理解をしてあげるといいでしょう。
意見するときはストレートに発言する
ミャンマー人は、基本的に温厚で自己主張をしない傾向という傾向にあります。
一方で意見を求められた際には、自分の考えや意向をストレートに発言する人が少なくありません。
この特性は、仕事などでコミュニケーションを取る際に、こちらがミャンマー人の本質を理解していないと、不本意な誤解を招くことになりかねないでしょう。
特性を理解する例として、コンビニのレジにおいて、ミャンマー人の店員の対応を挙げます。
「レジ袋はどうされますか?」というミャンマー人の店員に対して、「大丈夫です」や「結構です」などの表現は理解されません。
ミャンマー人とのコミュニケーションは、できるだけ曖昧な表現は避けて「いりません」など、明確な意思表示をすることが重要です。
ミャンマーと日本の関わり
現在、日本では多くのミャンマー人が働いています。
その要因は、不安定な国内情勢による治安の悪化や経済の衰退にあり、国内に留まるよりも、日本をはじめとした海外で働くことを余儀なくされています。
日本の企業で働くミャンマー人と、一緒に仕事をするうえで必要な知識として、以下の3つを知っておくとよいでしょう。
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ミャンマーは親日家が多い
過去の歴史的背景もあり、ミャンマー人には親日家が多いと言われています。
イギリス支配からの独立のため、「アウン・サン・スー・チー氏」の父親で、”ビルマ建国の父”と呼ばれている「アウン・サン将軍」を日本が援助したことをご存じの方は多いでしょう。
また、近年では日本のアニメが人気で、日本に好感を抱いているミャンマー人が増えています。
ミャンマーから日本へ来る人は増えている
軍事クーデター以降の緊迫した国内情勢などにより、ミャンマー国内の経済は貧困化しています。
そのため、治安が良くて安定的に稼げる、日本での就労を希望するミャンマー人は後を絶ちません。
最新のデータによると、対前年増加率は49.9%とインドネシアの56.0%に次いで2番目の増加率です。
その数は、今後も増加することが見込まれています。
参照元:出入国在留管理庁|「外国人雇用状況」の届出状況【概要版】(令和5年10月末時点)
ミャンマー人は日本語の習得が得意
ミャンマー人は、日本に来る外国人のなかで、日本語の習得スピードが早いと言われます。
ミャンマー語と日本語は、主語と述語の並びが同じで、日本語の単語を入れ替えるだけで、簡単な会話が成立できるからです。
2023年7月に実施された日本語能力試験の国・地域別の受験者数を見ると、日本以外の国ではミャンマーは中国に次いで2位と受験者数が増加しています。
なかでも、ミャンマーはN3・N4の受験者数が世界で最も多く、N4の受験者数は6万人を超え、2番目にN4の受験者数が多い中国の7,417人の約8倍となっています。
参照元:【2023年7月】日本語能力試験(JLPT)|国・地域別受験者数ランキング
ミャンマーの教育制度
ミャンマーの教育制度は「初等教育」「中等教育」「高等教育」の3段階です。
中等教育まで13年間教育機関に通学し、その後は高等教育として大学や大学院などに進みます。
5歳~ |
幼稚園 |
初等教育2011年~無償化 |
義務教育 |
6歳~10歳 |
小学校課程 |
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11歳~14歳 |
中学校課程 |
中等教育2016年~無償化 |
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15歳~17歳 |
高校課程 |
しかし、ミャンマーの大学進学率は13%とかなり低い数字です。
理由として不安定な情勢の影響があり、大学に進学したくても学校に通えない状況にあります。
上記の表のように、中等教育までは順次無償化されており、初等学校の就学率は84.6%と、貧富の差に関係なく教育を受けられるよう整備されています。
しかし、クーデター以降は地域間で格差が大きくなっているのが現状です。
ミャンマー人と働く際のポイント
ミャンマー人は、日本人に近い感覚を持っていて、律儀でまじめに働く人が多いです。
日本人との相性がとても良いミャンマー人ですが、一緒に働く際に知っておくべきポイントが3つあります。
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それぞれ解説します。
人前で強く叱らない
ミャンマーで人を叱ることがあるのは、親か学校の先生くらいです。
もしも仕事で大きなミスを犯したとしても、その人を否定するような言動や、大勢の前で叱責することは絶対に避けましょう。
指導が必要な事案があれば、必ず個別で対応し、優しく指導する必要があります。
無理し過ぎていないか定期的に様子をうかがう
ミャンマー人は律儀でまじめな人が多く、目上の人を敬う習慣があります。
それは職場の上司に対しても同じことが言えるでしょう。
したがって、上司に頼まれたら「NO」と言えずに引き受けてしまうので、定期的に様子をうかがいながら、適宜声をかけてあげることを意識してください。
宗教や価値観について理解する
ミャンマーの仏教は、日本の「大乗仏教」ではなく「上座部仏教」であり、戒律を厳格に守ることを重んじるとされています。
同じ仏教徒とはいえ、価値観や考え方には隔たりがあるので、理解し尊重することが大切です。
また、ミャンマーには仏教の教えを反映した「水かけ祭り」(ティンジャン)があります。
毎年4月13日〜16日まで水をかけ合い、17日に新年を迎える、神聖な水で身を清める儀式です。
ミャンマー最大のお祭りであり、新年を祝う意味もあるので、この時期に休暇を取ることも頭に入れておくとよいでしょう。
ミャンマー人を採用する際には特定技能制度の活用がおすすめ
ミャンマー人を採用する際には、特定技能制度の活用をおすすめします。
特定技能制度は、国内人材の確保が困難な状況下の産業分野で、一定の専門性や技能を持った外国人の受け入れが目的です。
特定技能外国人を受け入れる分野は、特定産業分野として『介護』『ビルクリーニング』『工業製品製造業』のほか、全部で16分野あります。
特定技能には『特定技能1号』『特定技能2号』の2種類があり、外国人が日本に在留するために、地方出入国在留管理官署に認定された在留資格です。
それぞれの資格によって、特定産業分野ごとに受け入れ可否の違いがありますので、必ず確認しましょう。
まとめ
ミャンマーの国内情勢は依然不透明で、現在も治安の悪化や高い失業率などから、今後も海外へ出稼ぎに行く人は増加傾向になるでしょう。
ミャンマー近隣の諸外国のなかでも、日本は治安が良くて母国よりも稼げるとして、日本で長く働きたいと考えるミャンマー人は多くいます。
日本に来るミャンマー人は、働くモチベーションが高く、また母国で待っている大切な家族を養わなければならないという、強い覚悟を持っています。
日本人とも非常に相性がよいので、これから外国人の採用を検討されている企業さまにとっても、ミャンマー人の採用はおすすめです。