
外国人労働者に与える有給休暇の基準と与えることのメリットについて
外国人労働者の雇用を検討している企業の方に向けて、有給休暇の与え方について解説していきます。
人材として外国人を雇おうとしたときに、悩みのひとつとなるのが有給休暇の与え方ではないでしょうか。日本人労働者には与えなければならないとされていますが、外国人労働者にも同様に適用されるのか、また、どのように付与すべきか、と迷う方も多いと思います。
そこで外国人労働者の有給休暇について、与える基準や賃金について解説します。
与えなかった場合の罰則や与えるメリットも掲載していますので、外国人労働者を雇う際の参考にしていただけるはずです。
目次[非表示]
有給休暇とは
有給休暇とは、賃金が支払われる休暇のことを指します。
心身の回復や生活の保障のために、一定期間継続して雇用されている労働者に付与されます。
労働基準法によって、労働者が希望したときに与えなければならないと定められています。
有給休暇の際に支払う賃金は、3つのうちのいずれかを選べます[1]。
【有給休暇時の賃金】
- 労働基準法で定められた平均賃金
- 通常の賃金
- 健康保険法で定められた標準報酬月額の1/30に相当する金額
ただし労使協定を締結していなければ、健康保険法による標準報酬月額相当金額での賃金支払いは選択できません[1]。
人材を雇用するなら、有給休暇の条件や賃金、付与日数について把握しておきましょう。
外国人労働者に与える有給休暇の日数
外国人労働者に与える有給休暇の日数は、日本人労働者と変わりません。
基本となる有給休暇付与日数は次のとおりです。
(1)通常の労働者の付与日数
継続勤務年数(年) |
0.5 |
1.5 |
2.5 |
3.5 |
4.5 |
5.5 |
6.5以上 |
付与日数(日) |
10 |
11 |
12 |
14 |
16 |
18 |
20 |
(2)週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数
週所定労働日数 |
1年間の所定労働日数 |
勤続勤務年数(年) |
|||||||
0.5 |
1.5 |
2.5 |
3.5 |
4.5 |
5.5 |
6.5以上 |
|||
付与日数(日) |
4日 |
169日~216日 |
7 |
8 |
9 |
10 |
12 |
13 |
15 |
3日 |
121日~168日 |
5 |
6 |
6 |
8 |
9 |
10 |
11 |
|
2日 |
73日~120日 |
3 |
4 |
4 |
5 |
6 |
6 |
7 |
|
1日 |
48日~72日 |
1 |
2 |
2 |
2 |
3 |
3 |
3 |
出典:厚生労働省:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています
取得日数は、勤続年数の増加に伴い増加するのが原則です。
ただし、正規雇用労働者か、あるいはパートタイム労働者かによって、有給休暇の取得日数は変わります。
パートタイム労働者であれば、年間の所定労働日数や週の労働日数でも変わるため、適切に労働の日数と時間を管理しなければなりません。
ご紹介した有給休暇日数は外国人労働者にも同様に適用されます。
雇用の際には適切に付与しましょう。
外国人労働者に有給を与えなかった場合に受ける罰則
もし外国人労働者に有給を与えなかったとしたら、次のような罰則が科される可能性があります。
条件 |
罰則内容 |
有給休暇を取得させなかった |
300,000円以下の罰金 |
時季指定を行う有給休暇を就業規則に記載しなかった |
300,000円以下の罰金 |
労働者の指定する時季に有給休暇を与えなかった |
6か月以下の懲役もしくは300,000円以下の罰金 |
罰則は、労働者1人ごとに適用される可能性があります。
ただし雇用者は「時季変更権」を持っています。
時季変更権とは外国人労働者から労働者が請求した時季に有給休暇を与えることで事業の運営に支障が生じる場合に、使用者が行使できる制度です[2]。
たとえば繁忙期に多くの労働者から有給休暇請求があった場合、事業が成り立たなくなることもあるでしょう。
その場合、他の時季に有給休暇を変更できます。
もし、全員の有給休暇申請を受け入れては事業の遂行が難しいと考えられるなら、時季変更権を適切に行使することが求められます。
ただし事業に影響がないようであれば、規定通りの有給休暇を与えなければ罰則の対象となることがあります。
外国人労働者に有給休暇を与えるメリット
ここでは、外国人労働者に有給休暇を付与することによるメリットを解説します。
メリット1:従業員のパフォーマンス向上が期待できる
まずは従業員のパフォーマンスの向上が見込まれる点が挙げられます。
休暇によって心身の疲労が軽減され、業務への意欲が高まりやすくなります。
有給休暇によって心身が回復されれば、仕事への集中力の向上も期待されます。
パフォーマンスの向上によって業務効率化も期待でき、ひいては業績にもプラスに働くかもしれません。
メリット2:離職抑止につながる
外国人労働者に有給休暇を与えると、離職防止につながる点もメリットとして挙げられます。
有給休暇を取得しやすい環境を整備している企業は、労働者にとって魅力的に映る傾向があります。
特に外国人労働者の場合は、働くために来日しています。
一時帰国して家族に会いたいと思うこともあるでしょう。
有給休暇によって一時帰国が可能であることや、有事の際に帰国できる体制が整っていることは、企業選びのポイントのひとつであるはずです。
快適に働ける環境を整備するには、有給休暇を取得しやすい仕組みの構築が不可欠です。
離職抑止のため、有給休暇取得を促しましょう。
メリット3:企業のイメージが良くなる
最後に、企業のイメージ向上も、有給休暇を付与することによる利点の一つです。
日本で働く外国人はコミュニティを作っていることが多く、企業の情報はコミュニティ内で共有されることも珍しくありません。
すると、外国人労働者の間で企業の評価が高まる可能性があります。
もちろんインターネットでの口コミにて、企業の情報が伝わることもあるでしょう。
企業のイメージが良くなると、求人応募数が多くなったり、優秀な人材が集まりやすくなったりする可能性が高まります。
人材を確保しやすくなることで、将来的な業績の向上にもつながる可能性があります。
外国人労働者が一時帰国を行うシーズン
外国人労働者に有給休暇を付与することには多くの利点があります。
今後、外国人労働者の雇用を検討している場合は、外国人労働者が有給休暇を希望することの多いシーズンについても把握しておきましょう。
出身国や信仰によって異なりますが、一般的に次のシーズンでの一時帰国が多く見られます。
1.クリスマスから年末年始にかけての時期
クリスマスから年末年始にかけては、キリスト教徒の多い国の出身者が一時帰国を希望する時期にあたります。
キリスト教徒が多く暮らす地域としては、以下が挙げられます。
【キリスト教徒の多いエリア[3]】
- ヨーロッパ
- 北米
- 南米
- 東オーストラリア
- フィリピン
- ロシア西部から南部にかけて
- マダガスカル東部
キリスト教徒の多いエリア出身の外国人労働者であれば、12月末から1月初旬にかけて一時帰国することが多いでしょう。
年末ごろの有給休暇取得を予想しておくと、事業遂行への支障が少なくなります。
2.旧正月
旧正月の時期は、中国や東南アジア出身の外国人労働者が有給休暇を取得しやすい傾向があります。
旧正月は旧暦の新年にあたり、概ね1月下旬から2月中旬に該当します。
一時帰国が考えられるのは、次のようなエリア出身の外国人労働者です。
【旧正月があるエリア[4][5][6]】
- 中国
- マレーシア
- ベトナム
- 韓国
- シンガポール
中華系の文化が混じっている国は旧暦を採用しているため、旧正月を祝う風習があります。
主に中国や東南アジア諸国で行われる行事です。
しかしラオス・ミャンマー・タイ・カンボジアでは4月の中旬に正月を迎えるため、一時帰国シーズンがずれるかもしれません[7]。
それぞれの国の正月についてあらかじめ聞いておくことにより、一時帰国のシーズンを把握できるでしょう。
3.ラマダンの時期
ラマダンの時期には、イスラム教徒の一時帰国が増える傾向があります。
イスラム教徒が多い国は次のとおりです。
【イスラム教徒の多い国[3]】
- 中東
- インド西部から中東にかけて
- 中国東部から中東にかけて
- アフリカ北部
- シンガポール
イスラム教は、主にアフリカ北部から中国西部にかけての中東地域を中心に広く信仰されています。
ラマダンのある国では、ラマダン明けのシーズンに一時帰国が希望されることが多いでしょう。
外国人労働者の有給休暇取得は積極的に
いかがでしたでしょうか?
この記事を読んでいただくことで、外国人労働者の有給取得についてご理解いただけたと思います。有給休暇は、日本人労働者と同じ基準で付与する必要があり、企業側にとっても多くの利点があります。
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