
外国人労働者の賃金は日本人より低くてもいい?最低賃金・違法にならない基準を解説
人手不足解消のために外国人労働者を雇いたいと考えているものの、どのくらいの給与水準にすればいいのか分からず、困っている方もいるのではないでしょうか。
中には、外国人の給与は日本人より低水準でも問題ないと思っている方もいるかもしれませんが、実はむやみに低い給与体系にすると、法令違反を指摘される可能性が高いです。
そこで今回は、外国人労働者の賃金について知っておくべきポイントを紹介します。

外国人労働者の賃金は日本人より低く設定してもいい?
外国人を採用するメリットとして、日本人よりも賃金を抑えられることをイメージする方も珍しくはありません。
しかし、本当に外国人労働者の賃金は、日本人より低く設定しても問題がないのでしょうか?
国籍による賃金差別は禁止されている
実は国籍による賃金差別は、1947年に制定された労働基準法で禁止されています。
労働基準法第3条では「均等待遇」が定められており、労働者の国籍・信条・社会的身分を理由に、賃金や労働時間、その他の労働条件で差別的な取り扱いをすることは許されません。
つまり外国人を雇用する場合も、日本人と同じ賃金体系を適用しなければならず、最低賃金や残業代の扱いについても差をつけることはできないのです。
なお、働き方改革関連法では「同一労働同一賃金」とすることが企業に義務付けられていますが、これは外国人を雇う際にも適用されます。
つまり日本人でも外国人でも、同じ仕事に従事する場合は、同じ賃金を支払うのが原則です。
ただし、必ずしも日本人と外国人の賃金を、まったく同じにしなければならないわけではありません。
日本人従業員同士の給与に差があるとおり、国籍以外の理由で給与に差がつくケースはあります。
賃金に差があっても違法にならないケース
日本人と外国人の賃金に差があっても違法にならない例としては、そもそも仕事内容が異なるケースが挙げられます。
たとえば、サービス業の会社が、AさんとBさんを雇用しているとして考えてみましょう。
Aさんは日本語でのやり取りが可能で、接客業務の経験もあるため、フロント業務で活躍しています。
一方、Bさんは日本語での業務指示は理解できるものの、顧客対応は難しく、裏方での仕事が多いとしましょう。
この場合、国籍に関係なく、能力・業務内容に応じてAさんの賃金のほうが高くなるのは、合理的な取り扱いです。
ただし、AさんとBさんの日本語能力に差があるものの、もし同じ業務にあたっているとしたら、賃金に差をつけることはできません。
「日本語が話せるかどうか」だけを理由に給料を変えることはできないため、注意してください。
外国人労働者における最低賃金とは

そもそも「最低賃金」とは、雇用者が支払わなければならない賃金の最低額のことです。
人を雇うとすれば、賃金を支払う必要があります。
しかし、賃金は、雇用者が自由に決定できるものではありません。
上限については雇用者が自由に設定できますが、最低賃金に関しては法令で定められており、必ず遵守しなければなりません。
平成 22 年 7 月 1 日に施行された改正「出入国及び難民認定法(以下「入管法」という。)」では、入国 1 年目から適用される新たな在留資格「技能実習」が創設されました。(中略)労働基準関係法令の適用がある場合は、最低賃金法が適用されるため、最低賃金額以上の賃金を支払う必要があります。
出典: 厚生労働省:外国人技能実習生の最低賃金について(PDF)
労働者の最低賃金は都道府県ごとに決められており、最低賃金を下回る給与の設定は法律上認められていません。
外国人労働者であっても、最低賃金以上の賃金を支給することが法令で義務付けられています。
雇用の際には最低賃金を下回らないように注意しましょう。
外国人労働者の最低賃金の決め方
外国人労働者の最低賃金の決定方法は、日本人労働者と同様です。
都道府県ごとの最低賃金の基準を守って、給与を与えなければならないとされています。
地域ごとの最低賃金については、2025年3月時点における地域別最低賃金は、以下のとおりです。
該当都道府県 | 最低賃金 |
東京都 | 1,226円 |
神奈川県 | 1,225円 |
大阪府 | 1,177円 |
埼玉県 | 1,141円 |
愛知県 | 1,140円 |
千葉県 | 1,140円 |
京都府 | 1,122円 |
兵庫県 | 1,116円 |
静岡県 | 1,097円 |
三重県 | 1,087円 |
広島県 | 1,085円 |
滋賀県 | 1,080円 |
北海道 | 1,075円 |
茨城県 | 1,074円 |
栃木県 | 1,068円 |
岐阜県 | 1,065円 |
富山県 | 1,062円 |
長野県 | 1,061円 |
福岡県 | 1,057円 |
山梨県 | 1,052円 |
奈良県 | 1,051円 |
群馬県 | 1,063円 |
新潟県 | 1,050円 |
石川県 | 1,054円 |
福井県 | 1,053円 |
岡山県 | 1,047円 |
和歌山県 | 1,045円 |
徳島県 | 1,046円 |
山口県 | 1,043円 |
香川県 | 1,036円 |
島根県 | 1,033円 |
鳥取県 | 1,030円 |
愛媛県 | 1,033円 |
佐賀県 | 1,030円 |
山形県 | 1,032円 |
福島県 | 1,033円 |
大分県 | 1,035円 |
青森県 | 1,029円 |
長崎県 | 1,031円 |
鹿児島県 | 1,026円 |
宮城県 | 1,038円 |
高知県 | 1,023円 |
熊本県 | 1,034円 |
宮崎県 | 1,023円 |
沖縄県 | 1,023円 |
秋田県 | 1,031円 |
出典:厚生労働省: 地域別最低賃金の全国一覧
最低賃金は都道府県ごとに差があります。
また定期的に更新されるため、更新後の最低賃金を遵守したうえで外国人労働者の給与を決定する必要があります。
たとえば2025年度時点の東京都においては、最低賃金が時給1,226円と定められています。
外国人労働者の給与を決める際には、上記の地域ごとの最低賃金を参考のうえ、最低賃金より高い賃金を設定しなければなりません。
最低賃金の計算方法
外国人労働者の最低賃金の決め方は、時給制・日給制・月給制のいずれかによって変わります。
そのため、賃金の計算方法を把握しておく必要があります。
下記を参考にして、正しく計算してください。
時給制の場合
まず外国人労働者の給与が時給制の場合、地域ごとに定められている金額を最低賃金としましょう。
例として東京都の産業別最低賃金と地域別最低賃金がある場合、地域別最低賃金(東京都:時給1,226円)が適用されます。
最低賃金は地域別最低賃金を優先して適用してください。
出典:厚生労働省: 地域別の最低賃金の全国一覧、厚生労働省: 特定(産業別)最低賃金全国一覧
日給制の場合
日給制の場合でも、最低賃金は時給換算となります。
日給制の場合、日給を所定労働時間で割った金額が時給換算となります。
例えば、1日8時間勤務で日給が10,000円の場合の時給換算は以下の通りです。
10,000(円)÷8(時間)=1,250(円)
この場合、時給換算額は1,250円となります。
1,250円の時給が、地域・産業ごとの最低賃金を上回っているようにしましょう。
月給制の場合
月給制で外国人労働者への給与を支払う場合も、最低賃金は時給換算となります。
1ヶ月分の月給を、1ヶ月分の労働時間で割れば時給を算出可能です。
1ヶ月の労働時間が176時間で、月給が200,000円だった場合で時給を計算してみましょう。
200,000(円)÷176(時間)=1,136.3(円)
上記の条件であれば時給は1,136.3円となります。
計算してもし定められた最低賃金を下回っているようであれば、月給額の見直しが必要となります。
地域別または産業別最低賃金を上回っていれば、適正な賃金と判断されます。
最低賃金に含まれない手当
給与に含まれる「時間外手当」「通勤手当」「賞与」は、最低賃金の計算対象に含まれないとされています。
最低賃金を算出するときは、基本給と職務手当のみが計算の対象となります。
最低賃金の計算方法については、前項にて説明しました。
基本給と職務手当の合計を労働時間で除した金額が、最低賃金の対象額となります。
もし外国人労働者の給与に時間外手当や賞与などが含まれている場合は、該当する手当を除外したうえで、最低賃金を算出する必要があります。

在留資格別に見る外国人労働者の賃金水準
さて、実際の賃金水準については、外国人労働者がどの在留資格で働いているかによって差があります。
これは外国人の能力や来日目的によって、在留資格が異なるためです。
在留資格別にどのくらい賃金水準が異なるのか、詳しく見ていきましょう。
外国人労働者全体の平均賃金
令和6年の調査における、外国人労働者の在留資格区分別の賃金、および対前年増減率は次のとおりです。(参考: 厚生労働省)
在留資格区分 | 賃金 (万円) | 対前年増減率 (%) | 年齢 (歳) | 勤続年数 (年) |
専門的・技術的分野 (特定技能を除く) | 29.20 | -1.6 | 32.4 | 3.3 |
特定技能 | 21.12 | 6.7 | 28.8 | 2.2 |
身分に基づく在留資格 | 30.03 | 13.4 | 45.3 | 6.5 |
技能実習 | 18.27 | 0.6 | 27.0 | 1.7 |
その他 (特定活動・留学以外の資格外活動) | 22.65 | -2.1 | 30.0 | 1.7 |
外国人労働者計 | 24.27 | 4.3 | 32.8 | 3.3 |
外国人労働者全体の平均賃金は24.27万円と、日本人と比べて著しく低いわけではないことが分かります。
在留資格ごとに賃金水準は大きく異なる
先述した表から分かるとおり、在留資格ごとに賃金水準は大きく異なります。
これは在留資格によって、就労の自由度や職務内容、責任の重さが異なるためです。
たとえば身分に基づく在留資格(永住者や日本人の配偶者など)を持つ外国人は、就労制限がなく、より責任の重い職務に就くことが可能で、さらに勤続年数も長期にわたりやすいため、平均賃金は30万円を超えています。
日本人の平均賃金が33.04万円(参考: 令和6年賃金構造基本統計調査)であることをふまえると、責任や勤続年数が同じなら、日本人・外国人で賃金の差がほとんどないといえるでしょう。
一方、前年比の伸び率についても差があり、「身分に基づく在留資格」と「特定技能」の平均賃金が大きく上昇しています。
平均賃金が上昇傾向にある在留資格については、人材獲得競争が生じていると考えられ、とくに特定技能外国人は受け入れ企業が増加しており、今後も上昇傾向が続く可能性を考慮しておくべきでしょう。
技能実習・特定技能は低水準だが注意点がある
在留資格別の平均賃金を比べると、技能実習・特定技能が低水準になっていますが、その理由としては次のような例が挙げられます。
若年層が多い(技能実習は平均年齢27.0歳、特定技能は28.8歳)
勤続年数が短い(技能実習は1.7年、特定技能は2.2年)
担当業務の責任が重くない(未経験でも可能な業務・補助的業務が中心)
地方・中小企業での就労が多い
このように、技能実習・特定技能の平均賃金が低水準なのは、国籍以外の理由に起因します。
技能実習生・特定技能外国人であることのみを理由に、賃金を安くすることはできません。
とくに特定技能については、2号へ移行すると就労期間の上限がなくなります。
そして2号特定技能外国人は、他のスタッフを管理するような業務にも就くため、「専門的・技術的分野」や「身分に基づく在留資格」の外国人よりも賃金水準が高くなる可能性があることを知っておきましょう。
外国人労働者のボーナスや控除の考え方
外国人労働者を雇用するにあたって、ボーナスを支給すべきか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
結論としては、法律上、ボーナスの支給義務はありません。
賞与については、労働基準法で支給を義務付けられていないためです。
ただし「就業規則・雇用契約」に賞与支給について記載している場合は、支給義務が生じます。
くわえて、日本人にボーナスを支給する場合は、同じ業務に就く外国人にも支給しましょう。(能力や勤続年数など合理的理由で差をつけることは可能です)
また、外国人の給与から各種控除をする必要があるのか分からず、困っている方もいるでしょう。
外国人の給与から控除できるのは、法令で定められた項目(所得税や社会保険料など)と、労使協定で定められた項目のみです。
とくに欠勤控除などをする場合は、控除後の支給額が最低賃金を下回らないように注意してください。
外国人労働者の賃金を決める手順
外国人労働者の賃金を適切な水準に設定するためには、法令を遵守することはもちろん、市場相場も考慮しなければなりません。
ここからは賃金を決める手順を5つのステップで紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
ステップ1:業種・職種・在留資格ごとの相場を確認する
まず、採用したい業種・職種や、在留資格別の賃金相場を確認しましょう。
在留資格別の賃金相場については、先述したとおり厚生労働省が定期的に公表しています。
また、業種・職種ごとの賃金相場については、ハローワークの求人情報や、民間の求人サイトで確認してみてください。
なお、相場をチェックするときは、地域差も考慮しなければなりません。
一般的に、賃金は都市部ほど高く、地方ほど低くなります。
たとえば東京都で人材を募集する場合は、在留資格別の平均賃金よりも高水準で募集しなければ人手は集まらないでしょう。
ステップ2:職務内容・役割に応じた賃金水準を整理する
相場を把握したら、外国人労働者に任せたい職務内容と役割を明確にし、すでにその業務に就いている日本人スタッフの賃金水準を整理しましょう。
同一労働同一賃金の原則に基づき、同じ業務に就くスタッフには、国籍を問わず同水準の賃金を支払う必要があるためです。
このステップで洗い出すべき情報としては、次のような例が挙げられます。
業務の難易度
必要なスキル
責任の範囲
たとえば、一口に接客業務といっても、顧客対応・予約管理・クレーム対応など、その担当範囲は多岐に分けられます。
もし外国人労働者がクレーム対応にはあたらないとしたら、責任に明確な違いがあるため、給与水準に差をつけるのも合理的判断です。
ステップ3:法令遵守を確認する
任せる業務に基づいて賃金水準を決めたら、必ず法令を遵守できているかどうかも確認しましょう。
主なチェックポイントは次のとおりです。
最低賃金法 | 都道府県ごとの最低賃金を上回っているか確認 月給の場合は「月給÷月の所定労働時間」で時給換算する |
労働基準法第3条 | 国籍を理由とした差別的取り扱いがないかを最終確認 |
在留資格の要件 | 任せたい業務に対応できる在留資格を確認 身分系の在留資格には制限がないが、就労系の在留資格には それぞれ制限がある |
ステップ4:給与構成を決める
つづいて、外国人に支給する給与の具体的な構成を決めていきます。
給与の主な項目は次のとおりです。
基本給:職務内容・能力に応じた基本部分
各種手当:役職手当、資格手当、地域手当、住宅手当など
残業代:時間外労働に対する割増賃金
法定控除:所得税、社会保険料、雇用保険料など
法定控除以外の控除:社宅・寮費、互助会費、制服代など
とくに控除については、外国人にしっかりと説明できるよう、なぜ給与から差し引くのか理由を整理しておきましょう。
控除の仕組みがない国もあり、説明不足がトラブルにつながる可能性があるためです。
ステップ5:運用・見直しを行う
賃金制度は一度決めて終わりではなく、外国人を雇用したあとも、定期的な運用と見直しが必要です。
たとえば最低賃金が改定されたら、賃金を調整する必要があるでしょう。
また、外国人人材の転職を防ぐためには、在留資格別の市場相場についても確認しておくべきです。
もし他社のほうが外国人人材に高い給与を支払っているとしたら、転職が認められた在留資格の場合、離職されてしまう可能性があります。
外国人労働者の賃金設定で悩んだときの相談先
外国人労働者の採用を進めたいものの、任せたい業務の賃金相場が分からず、困っている方もいるのではないでしょうか。
そのような場合は、ぜひ実績が豊富な外国人人材紹介会社に相談してみてください。
紹介実績が豊富な人材紹介会社は、業種・職種別の賃金相場を細かく把握しているため、適切な賃金水準についてアドバイスしてくれます。
また、優秀な人材とのマッチングを依頼できることはもちろん、外国人労働者とのコミュニケーション方法や、給与明細の説明の仕方など、実務的なサポートを受けられる点もメリットです。
株式会社スタッフ満足は、これまで2,000人以上の外国人採用を支援しており、業種・職種ごとの賃金相場も把握しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ
外国人労働者の賃金を決める際、最も意識しなければならないことは、「国籍を理由とした差別は違法」という点です。
国籍のみを理由に、日本人よりも低賃金で雇うことはできないため注意してください。
ただし、職務内容や能力、経験に違いがあれば、合理的な理由に基づいて、日本人と外国人の賃金に差をつけることは可能です。
もし、どのくらいの賃金水準にすべきか自社だけでは決められないという場合は、ぜひ支援実績が豊富な外国人人材紹介会社へ相談してみてください。
採用後の定着支援や、労働環境の整備についてもサポートしてもらえるため、初めて外国人労働者の採用に臨む企業こそ、外国人人材紹介会社を頼ると安心です。




