特定技能における二国間協定とは ?目的や各国の手続きも解説
2019年4月に、新しい在留資格「特定技能」が設けられました。
特定技能外国人の採用を検討する際、「二国間協定」という言葉を耳にしたことがあるものの、内容までは知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、二国間協定の概要や目的、特徴的な手続きについて解説します。
「特定技能外国人の採用を検討しているけれど、まずは情報収集から始めたい」という方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次[非表示]
- 1.特定技能の二国間協定とは?目的についても解説
- 1.1.特定技能外国人の円滑かつ適正な送り出し・受け入れの確保
- 1.2.特定技能外国人の保護
- 1.3.両国の相互利益の強化
- 2.日本と二国間協定を結んでいる国
- 2.1.各国との手続きについて
- 2.2.ベトナム
- 2.3.タイ
- 2.4.カンボジア
- 2.5.フィリピン
- 2.6.インドネシア
- 2.7.ネパール
- 2.8.ミャンマー
- 2.9.バングラディッシュ
- 2.10.パキスタン
- 2.11.モンゴル
- 3.特定技能外国人の雇用は、各国で異なる二国間協定を確認しよう・確認しよう
特定技能の二国間協定とは?目的についても解説
特定技能制度における二国間協定とは、外国人労働者が日本でスムーズに働けるように、労働者を受け入れる日本と送り出す国で決めたルールのことです。
二国間協定は、協力覚書(MOC:Memorandum of Cooperation)ともよばれます 。
日本と各国が二国間協定を結ぶ目的は、下記の3つです。
それぞれ詳しく解説します。
特定技能外国人の円滑かつ適正な送り出し・受け入れの確保
二国間協定は、特定技能を持つ 外国人労働者が、無事に出入国することを目的として締結されています。
各国では、海外で働く自国の労働者を管理、保護するために手続きを設けていますが、国によって手続きの内容や様式、必要事項が異なります。
特定技能外国人を雇う日本の手続きも、独自のものです。
そこで、日本と各国が双方必要な条件を満たしたうえで、順調に手続きを行えるようにルールを定めているわけです。
特定技能外国人の保護
外国人労働者が日本で安心して働ける環境を整備することも、二国間協定の目的です。
日本では、特定技能制度が導入される前から、技能実習制度などを利用して外国人労働者を受け入れています。
しかしながら、雇用された外国人の労働環境に対して規則がなく、悪質な仲介業者による搾取や過剰労働、賃金未払いなどのトラブルが発生しました。
このような不当な労働環境の規制を強化するために 、二国間協定が設けられています。
両国の相互利益の強化
二国間協定を結んだ双方の利益を上げることも、忘れてはならない 目的の一つです 。
前述してきた「特定技能外国人の円滑かつ適正な送り出し・受け入れの確保」「特定技能外国人の保護」により、日本で外国人労働者が働きやすくなります。
労働環境が整えられたことで、日本で継続して働く特定技能外国人が増えれば、日本では人手不足を解消できますし、二国間協定を結んだ国では労働環境が提供されます。
特定技能制度の適正な運用のための協力を通じて、お互いの利益が促進できるようになるわけです 。
日本と二国間協定を結んでいる国
2024年4月現在、特定技能の二国間協定を結んでいるのは、以下で紹介する16か国です。
【日本と二国間協定を締結している16か国】
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特定技能制度では、国籍が締結国以外の外国人も 雇用することができます。
雇用する場合は、事前に在日本大使館もしくは領事館に確認する必要があること、送出国で技能検定を行えない点に注意してください。
各国との手続きについて
特定技能外国人を雇用する手続きは、各国の事情によって異なるため、雇用する方の出身国との協定内容を確認したうえで、進めましょう。
各国の協定内容をまとめた協力覚書は、出入国管理庁のHPで確認できます。
送出国によっては、雇用手続きのなかで「認定送出機関」の経由を義務づけていますが、在日外国人を雇用する場合は、認証送出機関を通す必要はありません。
送出機関とは、海外で求人を募集し、日本に労働者を送り出す現地の企業や団体のことです。
各国の政府が認定した送出機関は、OTIT外国人技能実習機構のHPで閲覧できます。
今回は、日本に就業目的で初めて入国する特定技能外国人を雇用する手続きについて、二国
間協定の締結国のなかでも、特徴的な項目がある10か国を紹介します。
参照元:出入国管理庁HP
参照元:OTIT外国人技能実習機構
ベトナム
真面目で勤勉な国民性や宗教的な制約がないことから、2023年12月末時点で、日本で働く特定技能外国人の半数以上を占めているのが、ベトナム国籍の方です。
手続きの特徴は、認定送出機関の経由が義務づけられており、ベトナム政府から「推薦者表」を受けて承認されたベトナム人のみ雇用できる点です。
推薦者表は、在留資格を申請する前に、認定送出機関が駐日ベトナム大使または「DOLAB
(労働傷病兵・社会問題省海外労働管理局)」で申請します。
雇用までの流れは、下記の通りです。
【ベトナム国籍の特定技能外国人を雇用する流れ】
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推薦者表の申請は、送出機関が行うものの、申請から取得まで3~4週間ほどかかりますので、余裕をもって手続きしましょう。
タイ
タイ国籍の方は、学歴社会のなかで学習意欲が高いといわれています。
また、日本と同様に主要宗教が仏教であることから、互いを尊重する、人助けする精神が根付いており、日本企業になじみやすいとされています。
タイ国籍の方を雇用する方法は、認定送出機関を経由するか、直接雇用するかの2種類です。
直接雇用においては、現地での求人活動は行えません。
また、日本に就業を目的として初めて入国するタイ人を雇用する場合、MOL(タイ王国労働省)に出国許可申請する必要があります。
雇用方法別に就業開始までの手順を、以下の表にまとめましたのでご参照ください。
【タイ国籍の特定技能外国人を雇用する流れ】
認定送出機関経由 |
直接雇用 |
認定送出機関を通して求人を募集 |
雇用先企業で求人を募集 |
雇用契約書を作成し、 駐日タイ王国大使館労働担当官事務所から認証 |
雇用する方と雇用契約締 |
送出機関から紹介を受け、タイ人と雇用 契約締結 |
駐日タイ王国大使館労働担当官事務所に 雇用契約書、在留資格証明書を提出 |
在留資格認定証明書の交付申請を出し、雇用する方に送付 | |
雇用する方が、在タイ日本国大使館で、ビザを申請 | |
雇用する方が、タイ王国労働省に海外労働・出国許可 | |
来日・就業開始 | |
雇用する方が来日後15日以内に |
認定送出機関を経由して雇用した場合と、直接雇用した場合で在留資格認定証明書を交付申請する前の手順が異なります。
カンボジア
カンボジアは、タイ同様に主要宗教が仏教です。
くわえて、観光業が盛んであることから、英語を話せる、コミュニケーション能力の高い人材を採用できるかもしれません。
カンボジア国籍の方を雇用する際の手続きの特徴は、認証送出機関を通じた雇用、そして在留資格申請時に「登録証明書」の発行の2つです 。
登録証明書は、雇用する方がカンボジアの認定送出機関に依頼し、MoLVT(カンボジア労働職業訓練省)に申請すると交付されます。
在日カンボジア人を雇用する場合でも、登録証明書の発行は必要事項です。
フィリピン
フィリピンには 、ホスピタリティに溢れ、フレンドリーでコミュニティーを重視している人が多い傾向があります。
また、公用語が英語であることから、海外の来客対応などでも重宝されるでしょう。
フィリピン国籍の方を雇用する際は、認定送出機関の経由が必須です。
DMW(移民労働者省、旧POEA)、MWO(フィリピン共和国大使館移住労働者事務所、旧POLO)への手続きも設けられています 。
DMWは、海外で働くフィリピン人の権利を守るための行政機関です。
MWOはDMNの支部機関として、在東京フィリピン共和国大使館と在大阪フィリピン共和国総領事館に設置されています。
DMWに自社が登録済みか否かによって、MWOへ提出する書類が異なります。
MWOへの提出書類についてはMWOのHPをご参照ください。
雇用までの流れについては、下記の通りです。
【フィリピン国籍の特定技能外国人を採用する流れ】
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OECについては、有効期限が60日までと設けられています。
万が一、一時帰国中にOECの有効期限が切れると、日本に入国することができません。
一時帰国させる際は、認定送出機関を通じて、OECを忘れずに再取得しましょう。
インドネシア
国内に日系企業が進出しており、日本語学習がキャリア構築につながる可能性のあるインドネシアでは、日本語学習に意欲的な労働者を採用できるかもしれません。
また、多様な民族や宗教、言語が並存していて、多様性を尊重し受け入れる文化があります。
インドネシア人の雇用方法は直接雇用か、P3MI(職業紹介事業者)を経由するかの2種類です。
直接採用する場合は、インドネシア政府が管理する求人システム「IPKOL(労働市場情報システム)」に登録して、求人することが進められています。
システムはWebサイトで、無料で登録できますが、入力言語は英語とインドネシア語のみです。
P3MIを経由した雇用までの流れは、以下の通りです。
【インドネシア国籍の特定技能外国人を採用する流れ(P3MI経由)】
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インドネシア在外労働者保護庁が発行するID番号は、日本でトラブルに巻き込まれた際に保護できるよう、インドネシア政府が登録を求めているものです。
受け入れ企業からも、雇用する方にID番号を取得するよう説明しましょう。
ネパール
出稼ぎが盛んなネパールですが、日本での労働人口は少なく、採用において未開拓市場です。
また、ネパール語の文法が日本語と言語的性質が近く、日本語を比較的覚えやすい とされています。
ネパール国籍の方を雇用する場合、直接採用活動するほか、有料で駐日ネパール大使館に求人申込を提出することも可能です。
求人情報は、駐日ネパール大使館からネパール労働・雇用・社会保障省海外雇用局日本担当部門に送られ、求人者に開示されます。
また、ネパール側でビザが発行されてからネパールを出国する前までに、海外労働保険への加入、海外労働者社会福祉基金への一定額の支払い、海外労働許可証の取得が必要です。
海外労働許可証は、オンライン上でネパール労働・雇用・社会保障省海外雇用局日本担当部門に申請します。
一時帰国の際も、海外労働許可証が必要なので、忘れずに持参させましょう。
ミャンマー
ミャンマーは、目上の人に反抗しないなど、仏教の教えが根強く浸透している国民性です。
ほかにも、揉め事を好まず穏やか、面倒見が良い、単純作業もコツコツと続けられるなどの特徴があります。
ミャンマー国籍の方を雇用する際は、ミャンマー政府から認定を受けた送出機関を経由してください。
また、来日前に雇用する方が、MORIP(ミャンマー労働・入国官営・人口省)にOWIC(海外労働身分証明カード)を申請することが求められます。
バングラディッシュ
バングラディッシュでは、国家予算にIT関連の試験の導入や教育費が組み込まれているなど、IT人材教育、インフラに対して政府が積極的に投資しているIT大国です。
ほかにも懐に飛び込んでいく、ハングリー精神が強い国民性といった特徴があります。
バングラディッシュ国籍の方を雇用する際、送出機関の経由は任意です。
直接雇用のほかにも、MEWOEから認定を受けた現地の送出機関、BOESLを通じて求人・各種手続きができます。
MEWOEはバングラディッシュ海外移住者福利厚生・海外雇用省、BOESLはバングラディッシュ海外雇用サービス公社の略称です。
パキスタン
パキスタンの国民性は日本人以上によく働く、おもてなし精神があるといわれています。
一方で、国民のほとんどがイスラム教徒であるため、雇用する際は毎日の礼拝回数や飲食の制限、断食期間などを把握しておきましょう。
パキスタンでは認定送出機関を通しての雇用を必須とせず、直接雇用することができます。
なお、特定技能外国人として、日本に初めて入国するパキスタン人を雇用する場合は、求人と雇用先企業情報を駐日パキスタン大使館に提出し、承認を受けなければなりません。
情報は、BE&OE(パキスタン移住・海外雇用局)が管理するポータル内で、求職者に公表されます。
また、特定技能外国人として日本で働くパキスタンの方は、来日前にBE&OEの移民保護事務所で必要書類を提出して、海外で働くための登録が必須です。
モンゴル
モンゴルの国民性としては、負けず嫌いな反面人当たりが良いという特徴があります。
時間厳守という概念がないなど、かなり日本とは文化が異なります。
モンゴル国籍の方を雇用する際の特徴的な手続きは、人材募集に関してGOLWS(モンゴル労働・社会保障省労働福祉サービス庁)と双務契約の締結が求められることです。
双務契約を締結すると、GOLWSのアクセス権が付与され、「特定技能モンゴル人候補者表」の情報を閲覧できるようになります。
双務契約する際には、GOLWSのHPから連絡窓口に連絡してください。
特定技能外国人の雇用は、各国で異なる二国間協定を確認しよう・確認しよう
本記事では、二国間協定の概要や目的、海外から特定技能外国人を受け入れる際の特徴的な手続きについて解説しました。
手続きの内容は各国によって異なるため、送出国との相互利益を得るために、二国間協定を通して入念に情報収集しましょう 。
しかし、異文化間で、安定して活躍する人材を見つけるのは骨が折れます。
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