
特定技能「自動車運送業」とは?受け入れ企業の要件も解説
特定技能とは、国内産業の人手不足を解消するため、一定の専門性・技能を保有する外国人を受け入れる制度のことです。
特定技能はさまざまな分野にも適用されていますが、今回は「自動車運送業」について紹介します。
有資格者を企業が受け入れるための要件や、外国人ドライバーを採用する流れまでを取り上げています。
自動車運送分野で外国人を受け入れようと検討中の企業さまは、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1. 特定技能「自動車運送業」の概要
- 2.特定技能「自動車運送業」の受け入れ企業に求められる要件
- 3.外国人に求められる要件
- 3.1.タクシー運送業の場合
- 4.特定技能「自動車運送業」の試験概要
- 5.特定技能「自動車運送業」の外国人ドライバーを雇用する流れ
- 5.1.ステップ① 受け入れ要件を確認する
- 5.2.ステップ② 人材募集・面接を実施する
- 5.3.ステップ③ 雇用契約を締結する
- 5.4.ステップ④ 外国人人材に試験に合格してもらう
- 5.5.ステップ⑤ 在留資格を「特定活動」に変更する
- 5.6.ステップ⑥ 新任運転者研修を実施する
- 5.7.ステップ⑦ 特定技能を申請する
- 5.8.ステップ⑧ 入社前準備をする
- 6.特定技能「自動車運送業」を取得するための特定活動とは
- 7.特定技能「自動車運送業」の外国人を雇用する場合の注意点
- 7.1.日本人と同様の待遇にする
- 7.2.外国人の日本語レベルに合わせる
- 8.まとめ
特定技能「自動車運送業」の概要
特定技能「自動車運送業」とは、2024年3月に自動車運送業界の人手不足解消に向けて追加された特定技能制度の領域の一つです。
特定技能は計16分野、1号・2号と分かれており、1号に認定された人材は日本語力と技術を磨いて2号を目指すのが一般的です。
しかし、特定技能「自動車運送業」では、まだ1号しか認められておらず、通算で最大5年しか雇えません。
自動車運送業界の人手不足は、令和6年度からの5年間で28万8,000人だと予測されています。
そのうち外国人の受け入れ見込み数は、2万4,500人を上限としています。
この制度を利用すれば、タクシー、バス、トラックと3つの分野において外国人ドライバーを雇用可能です。
外国人ドライバーにどのような業務を任せられるかは「出入国在留管理庁の運用要領」に記載されています。
参照元:法務省「自動車運送業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」
タクシー運送業
タクシー運送業の外国人ドライバーは、運行管理者の指導・監督のもと、以下の業務を担当できます。
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新任運転者研修を受講後、日本の交通ルール・サービスマナーの知識を習得してから、業務をスタートします。
バス運送業
バス運送業も外国人ドライバーの受け入れが可能です。
運行管理者の指導・監督のもと、以下の業務を任せられます。
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バス運送業の人手不足が解消すれば、公共交通の利便性が高まることが期待されています。
トラック運送業
運行管理者の指導・監督のもと、以下の業務に対応します。
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2024年現在もトラック運送業は人手不足だといわれています。
外国人ドライバーを受け入れることで、業務効率化を期待できるでしょう。
特定技能「自動車運送業」の受け入れ企業に求められる要件
特定技能「自動車運送業」で外国人ドライバーを受け入れる場合、企業は以下3つの要件を満たす必要があります。
【特定技能「自動車運送業」の受け入れ企業に求められる要件】
受け入れ企業に求められる要件 |
詳細 |
1.運転者職場環境良好度認証制度の認証を受ける |
労働条件・労働環境を見える化するための制度。 |
2.新任運転者研修を実施する |
「旅客自動車運送事業運輸規則 第38条第1項、第2項及び第5項並びに第39条に規定する事項」についての指導・監督・特別な指導を実施する必要がある。 |
3.自動車運送業分野特定技能協議会に参加する |
所管省庁・受け入れ企業・業界団体・関係省庁で構成されている、外国人を保護する機関。 |
参照元:法務省「自動車運送業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」
特定技能「自動車運送業」を受け入れる企業は「43.道路旅客運送業」「44.道路貨物運送業」のいずれかの事業に該当しなければいけません。
そのうえで「運転者職場環境良好度認証制度」、トラック運送業の場合は「安全性優良事業所」の認証を取得する必要があります。
これらの認証を取得することで、事業用自動車の運行管理とスタッフの労務管理が適切だと証明できます。
また特定技能1号の在留資格を保有する外国人ドライバーに対して、新任運転者研修を実施しなければいけません。
外国人ドライバーに日本の交通ルールなどを身につけてから、業務をスタートさせます。
さらに国土交通省が設置する「特定技能協議会」の構成員になれば、外国人人材の受け入れ企業要件を満たせます。
外国人に求められる要件
特定技能「自動車運送業」として申請するためには、外国人人材が以下3つの要件を満たさなければいけません。
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タクシー、バス、トラック運送業によって求められるレベルは異なります。
トラックドライバーの場合は例外規約が用意されているので、ご確認ください。
タクシー運送業の場合
外国人人材がタクシードライバーになるために必要な要件は、以下のとおりです。
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バス運送業の場合
外国人人材がバスドライバーになるために必要な要件は、以下のとおりです。
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トラック運送業の場合
外国人人材がトラックドライバーになるために必要な要件は、以下のとおりです。
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トラックドライバーの場合は「国外から特定技能外国人を受け入れる場合、運転免許の取得以外の要件を満たしていれば、雇用条件が成立していることを条件に特定活動(6か月)として入国を認める」という例外規約があります。
また技能実習2号を良好に終了し、生活に支障がない程度の日本語能力を保有していれば、日本語試験は免除されます。
特定技能「自動車運送業」の試験概要
この章では、特定技能「自動車運送業」の試験概要について解説します。
【特定技能「自動車運送業」の試験概要】
特定技能「自動車運送業」の分類 |
タクシー |
バス |
トラック |
試験の名称 |
自動車運送業分野特定技能1号評価試験(タクシー) |
自動車運送業分野特定技能1号評価試験(バス) |
自動車運送業分野特定技能1号評価試験(トラック) |
試験言語 |
日本語(第二種運転免許の学科試験に準拠した内容については現地語を併記) |
日本語 |
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実施主体 |
一般財団法人日本海事協会 |
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実施方法 |
学科・実技試験:コンピューター・ベースド・テスティング |
引用元:法務省「自動車運送業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」
また福岡県では、タクシー・バス運転手に必要な第二種運転免許を英語、中国語、ベトナム語、ネパール語で受験可能です。
福岡県内の4つの試験場で対応しています。
特定技能「自動車運送業」の外国人ドライバーを雇用する流れ
外国人ドライバーを雇用するためにはさまざまな手順が必要です。
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なお採用後も、在留資格の申請・書類作成といった手続きが必要になるため、外国人人材が就労できるまでには4〜6か月かかります。
外国人人材が運転免許証を取得していない場合は、さらに時間がかかります。
では、それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。
ステップ① 受け入れ要件を確認する
特定技能「自動車運送業」の外国人人材を受け入れるためには、前述した運転者職場環境良好度認証制度の認証を受けるなどの要件を満たす必要があります。
それ以外にも給与や支払うタイミング、各種手当・福利厚生、昇給や賞与の条件など、受け入れ要件を明確にしなければいけません。
外国人人材と条件面でのミスマッチが起きないように、漢字にはひらがなをふる、イラストを活用するなどの工夫が必要です。
ステップ② 人材募集・面接を実施する
受け入れ要件の詳細が確定したら、登録支援機関の役割も兼ねている人材紹介会社や現地の機関で人材募集をします。
初めて外国人人材を採用する場合は、人材紹介会社の利用がおすすめです。
候補者から応募があれば、面接を実施します。
初めて外国人人材とやり取りする場合、何を質問すれば良いかわからない方もいるでしょう。
そのような場合は、特定技能外国人の人材紹介サービスを利用するのがおすすめです。
スタッフ満足では、人材募集から面接、ビザ申請、採用後の定着支援までを提供しています。
特定技能外国人の採用をご検討の企業さまは、お気軽にお問い合わせください。
ステップ③ 雇用契約を締結する
採用したい人材が見つかれば、次は特定技能雇用契約を締結します。
特定技能外国人を雇用する場合、雇用契約書・雇用条件書の作成が必要です。
雇用契約書・雇用条件書には日本語と母国語を併記します。
雇用契約書の形式は出入国在留管理庁の「特定技能関係の申請・届出様式一覧」に掲載してあるため、この様式を活用しましょう。
ステップ④ 外国人人材に試験に合格してもらう
特定技能「自動車運送業」の資格をもらう前に、特定活動の在留資格を取得する必要があります。
そのため、外国人人材には「特定技能1号評価試験」「日本語試験」に合格してもらいましょう。
タクシー、バス、トラックと運転する車両によって必要な日本語レベルは異なります。
詳細は「外国人に求められる要件」をご確認ください。
ステップ⑤ 在留資格を「特定活動」に変更する
特定技能に必要な準備が整ったら、外国人人材には運転免許を取得してもらいましょう。
タクシー、バスの場合は第二種免許、トラックの場合は第一種免許が必要です。
運転免許を取得する際に在留資格が切れてしまう、または長期的に滞在できる在留資格を所持していないなら「特定活動」に変更してください。
在留資格が切れてしまうと、不法滞在になるため気をつけましょう。
特定活動の詳細については後述しています。
ステップ⑥ 新任運転者研修を実施する
外国人人材をタクシーやバスのドライバーとして就業させるなら、新任運転者研修の実施が必須です。
新任運転者研修では、乗客への適切な対応・安全な運転技術・業務用の車両を運転するときの心構えを学びます。
ステップ⑦ 特定技能を申請する
すべての要件を満たせば特定技能に申請可能です。
申請後に審査があり、受領されると「在留カード」が届きます。
特定技能の申請に必要な書類について知りたい方は「特定技能外国人を採用する際の流れとかかる費用を解説」をご覧ください。
ステップ⑧ 入社前準備をする
住居確保、生活環境の整備など、外国人人材が日本での生活をスムーズに始められるよう準備を行いましょう。
特定技能「自動車運送業」を取得するための特定活動とは
外国人人材が特定技能「自動車運送業」を取得するためには、以下の行動が必要です。
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一定期間、日本への滞在になることから在留資格「特定活動」へと切り替える必要があります。
特定活動に切り替えれば、業務に必要な資格を取得し、研修を受講するために必要な期間、合法的に日本に滞在できるようになります。
特定活動の在留可能期間は、タクシー・バスの場合は1年、トラックの場合は6か月です。
特定活動中は「特定技能1号」の通算在留期間にカウントされないため、安心してください。
特定技能「自動車運送業」の外国人を雇用する場合の注意点
特定技能「自動車運送業」の外国人を雇用する場合、以下2点に注意しましょう。
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それぞれ詳しく解説します。
日本人と同様の待遇にする
労働関連法令は、外国人労働者にも適用されます。
給与が低い、労働時間が長いなど不満があれば別の企業に転職してしまう可能性があります。
日本人スタッフと同様に、外国人人材も労働基準法に基づいて雇用しましょう。
外国人の日本語レベルに合わせる
日本語能力試験では、ライティング・スピーキングの能力は測れません。
そのため、外国人人材が働きやすいよう、書類やコミュニケーションにはシンプルな日本語を活用してください。
例えばトラックドライバーとして採用する場合は、積荷・配達先の日本語を理解しているか、日本人とのコミュニケーションが円滑にできるかを確認しましょう。
もし十分な日本語能力が備わっていないと感じたら、ある程度の日本語レベルに達せられるような支援が必要です。
まとめ
特定技能外国人を採用するためには、さまざまな手順が必要です。
特に初めて外国人人材を採用する場合は、必要な書類を不備なく揃えるだけでも大変でしょう。
これらの手続きは、人材紹介サービスや登録支援機関に委託可能です。
スタッフ満足では人材紹介から、手間のかかる手続きや採用後の特定技能外国人への対応まで、採用に関わるすべての業務を一気通貫で引き受けることができます。
特定技能外国人の採用をご検討の企業さまは、お気軽にお問い合わせください。